50 / 103
パトラ編
第50話 元勇者 メンタルをバキバキにへし折られる
しおりを挟む
「まずは先日の依頼書に合った件ですが──」
「はい、大丈夫でしょうか?」
「本当に申し訳ありません。あなたのご気持ちは受け取れません」
するとパトラさんは少し驚いた顔をする。彼女が表情を顔に出すのはとても珍しい、それくらい動揺しているのだろう。
「ご気持ち──」
パッ──!!
俺は間髪を入れずに頭を下げる。俺だって彼女を傷つけたくはない。でもこれしか方法がない。
「パトラさんのこと、確かに人として尊敬しています。パトラさんは身分が高いのに、それを利用して悪い事なんてしないし、貧しい人やいろいろな人種にだって分け隔てなく接して尽くそうとしてくれるし。そういうところは憧れています」
「憧れ──」
パトラさんも俺をじっと見たまま真顔でいる。それを見て俺は、彼女を意識してしまい顔が赤くなる。
「でも、恋人になるということは違うと思うんです。依頼という形ではなく、互いに信頼関係を作ることが大切だと思うんです」
精一杯の気持ちを込めて俺は叫ぶ。大丈夫だ、彼女ならきっとわかってくれる。この世界にきていろいろな人と接してきたけどそれだけはわかる。
そしてこの場が静かになりしばしの時が経つ。
するとパトラさんは、不思議そうな表情をしながら首を傾げささやいた。
「……何か勘違いしていませんか?」
ん? どういうことだ──。すると
「私に頼みは、陽平さんに恋人「役を」演じてほしいという事です」
予想もしなかったパトラさんの言葉に思わずキョトンとなる。
どういう事だかわからず質問をしてみると──。
「発端は先日届いた手紙に記載されていたお見合い話からです」
「お見合いを持ちかけてきましたのは、ラト=ランド家の長男さんのようです」
ラト=ランド家、確か聞いたことがあるな。ここから少し離れた地方に広い領土をもつ存在。
タカ派で有名、よく自分達の力を知らせるためにこの国でも攻撃的な存在です。
「しかし彼らは評判が悪いです。納めている土地では国民たちから重税を取り、酒と女にぼれる一方、軍事作戦も人材を薪にくべるような無茶苦茶な作戦ばかり」
「そんな人物達と交際する気は毛頭ありません。だから断る理由が欲しかった。そこで陽平さんに私の交際相手という設定で、その相手にあってほしいのです」
「つまり、家の都合で見合い話を持ち込まれた。地方からその人物と家の執事がやってくる。
断る理由として今交際相手がいるという口実を作りたい。そう言うことですか?」
「まあ、そんなところです。何か、誤解でもされましたか?」
するよ!! 俺は心の中で叫ぶ。
あんな言い方、誤解するにきまってるじゃん。告白の言い方だよあれ。
誰がどう見たって恋愛関係になりたいっていう意思表示にしか見えないよ。
「虫のいい話しでも期待していたけど当てが外れてがっかりってことよね?」
ルシフェルのからかうような言葉、俺は顔を真っ赤にして黙ってしまった。
まあ、それならいいかもしれない。特に重要なクエストがあるわけでもないしな。
「分かりました、その依頼。引き受けましょう──」
という事で俺はすぐに了承する。しかし隣にいたルシフェルがジト目で話しかけてくる。
「あんた、簡単に引き受けたけど交際経験とかあるの?」
「えっ? いや、無いけど?」
するとパトラは何と俺の腕をぎゅっとつかんできた。そして腕を組んで顔を近づけてきたのである。
その大胆な光景に俺は思わずドキッとし顔を赤面させてしまう。
「ちょ、ちょ、ちょ、いきなり」
「何故ですか? あなたは元勇者なのでしょう? それくらいの地位ならば」
「彼女は作りたい放題──」
ズキッ!!
「交際経験も豊富で──」
ズキッ!!
「キスはもちろんその先の事も経験済みのはずでしょう?」
ズキッ!!
心の中のHPが無慈悲に削られていく。
彼女なんて都市伝説、現実の女性との交際経験なんて当然ない。その先? クリスマスに行う行事かな? 管轄外としか言いようがない。
本当に無意識に人の心にダメージを追わせていく人だなこの人。
「交際経験は──、本当に全くないです。彼女なんてこの世界で言う3大貴族のように特権階級を持つ人だけが持つ権利がある虚数の彼方にある夢幻のような存在。都市伝説としか考えていません。けど、貴族としての作法とかは以前学んだことがありますので、特におかしいようにはならないと思います」
あせあせとしながら俺はパトラさんに言葉を返す。
するとルシフェルが足を組み初め俺に再びジト目の視線を向ける。
「そりゃそうかもしれないけど、恋人としての振る舞いはあんた恋人としての出来るの? それも一般人じゃなく貴族のお姫様の恋人っていう設定なのよ」
「そもそもあなた異性との交際経験ないっていったわよね」
「言っておくけど架空の創作物の登場キャラクターは経験にならないからね!!」
ズキッ!! ズキッ!! ズキッ!!
こいつは俺の精神を複雑骨折させようとしているのか?
「それは……、なんとかするよ」
小さな声でうつむきながら俺はルシフェルに言葉を返す。
「大丈夫ですよ、陽君」
「そ、そうですよ。誰だって最初はそうですし──」
するとローザとセフィラが心配そうな表情で2人の間に入り俺をなだめる。
フォローしてくれてありがとな──。
「はい、大丈夫でしょうか?」
「本当に申し訳ありません。あなたのご気持ちは受け取れません」
するとパトラさんは少し驚いた顔をする。彼女が表情を顔に出すのはとても珍しい、それくらい動揺しているのだろう。
「ご気持ち──」
パッ──!!
俺は間髪を入れずに頭を下げる。俺だって彼女を傷つけたくはない。でもこれしか方法がない。
「パトラさんのこと、確かに人として尊敬しています。パトラさんは身分が高いのに、それを利用して悪い事なんてしないし、貧しい人やいろいろな人種にだって分け隔てなく接して尽くそうとしてくれるし。そういうところは憧れています」
「憧れ──」
パトラさんも俺をじっと見たまま真顔でいる。それを見て俺は、彼女を意識してしまい顔が赤くなる。
「でも、恋人になるということは違うと思うんです。依頼という形ではなく、互いに信頼関係を作ることが大切だと思うんです」
精一杯の気持ちを込めて俺は叫ぶ。大丈夫だ、彼女ならきっとわかってくれる。この世界にきていろいろな人と接してきたけどそれだけはわかる。
そしてこの場が静かになりしばしの時が経つ。
するとパトラさんは、不思議そうな表情をしながら首を傾げささやいた。
「……何か勘違いしていませんか?」
ん? どういうことだ──。すると
「私に頼みは、陽平さんに恋人「役を」演じてほしいという事です」
予想もしなかったパトラさんの言葉に思わずキョトンとなる。
どういう事だかわからず質問をしてみると──。
「発端は先日届いた手紙に記載されていたお見合い話からです」
「お見合いを持ちかけてきましたのは、ラト=ランド家の長男さんのようです」
ラト=ランド家、確か聞いたことがあるな。ここから少し離れた地方に広い領土をもつ存在。
タカ派で有名、よく自分達の力を知らせるためにこの国でも攻撃的な存在です。
「しかし彼らは評判が悪いです。納めている土地では国民たちから重税を取り、酒と女にぼれる一方、軍事作戦も人材を薪にくべるような無茶苦茶な作戦ばかり」
「そんな人物達と交際する気は毛頭ありません。だから断る理由が欲しかった。そこで陽平さんに私の交際相手という設定で、その相手にあってほしいのです」
「つまり、家の都合で見合い話を持ち込まれた。地方からその人物と家の執事がやってくる。
断る理由として今交際相手がいるという口実を作りたい。そう言うことですか?」
「まあ、そんなところです。何か、誤解でもされましたか?」
するよ!! 俺は心の中で叫ぶ。
あんな言い方、誤解するにきまってるじゃん。告白の言い方だよあれ。
誰がどう見たって恋愛関係になりたいっていう意思表示にしか見えないよ。
「虫のいい話しでも期待していたけど当てが外れてがっかりってことよね?」
ルシフェルのからかうような言葉、俺は顔を真っ赤にして黙ってしまった。
まあ、それならいいかもしれない。特に重要なクエストがあるわけでもないしな。
「分かりました、その依頼。引き受けましょう──」
という事で俺はすぐに了承する。しかし隣にいたルシフェルがジト目で話しかけてくる。
「あんた、簡単に引き受けたけど交際経験とかあるの?」
「えっ? いや、無いけど?」
するとパトラは何と俺の腕をぎゅっとつかんできた。そして腕を組んで顔を近づけてきたのである。
その大胆な光景に俺は思わずドキッとし顔を赤面させてしまう。
「ちょ、ちょ、ちょ、いきなり」
「何故ですか? あなたは元勇者なのでしょう? それくらいの地位ならば」
「彼女は作りたい放題──」
ズキッ!!
「交際経験も豊富で──」
ズキッ!!
「キスはもちろんその先の事も経験済みのはずでしょう?」
ズキッ!!
心の中のHPが無慈悲に削られていく。
彼女なんて都市伝説、現実の女性との交際経験なんて当然ない。その先? クリスマスに行う行事かな? 管轄外としか言いようがない。
本当に無意識に人の心にダメージを追わせていく人だなこの人。
「交際経験は──、本当に全くないです。彼女なんてこの世界で言う3大貴族のように特権階級を持つ人だけが持つ権利がある虚数の彼方にある夢幻のような存在。都市伝説としか考えていません。けど、貴族としての作法とかは以前学んだことがありますので、特におかしいようにはならないと思います」
あせあせとしながら俺はパトラさんに言葉を返す。
するとルシフェルが足を組み初め俺に再びジト目の視線を向ける。
「そりゃそうかもしれないけど、恋人としての振る舞いはあんた恋人としての出来るの? それも一般人じゃなく貴族のお姫様の恋人っていう設定なのよ」
「そもそもあなた異性との交際経験ないっていったわよね」
「言っておくけど架空の創作物の登場キャラクターは経験にならないからね!!」
ズキッ!! ズキッ!! ズキッ!!
こいつは俺の精神を複雑骨折させようとしているのか?
「それは……、なんとかするよ」
小さな声でうつむきながら俺はルシフェルに言葉を返す。
「大丈夫ですよ、陽君」
「そ、そうですよ。誰だって最初はそうですし──」
するとローザとセフィラが心配そうな表情で2人の間に入り俺をなだめる。
フォローしてくれてありがとな──。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。


俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる