【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

文字の大きさ
上 下
46 / 103

第46話 元勇者 一転攻勢に出る

しおりを挟む
ハイドは自身の剣を薙ぎ払う。そして剣から巨大な球状の魔力を伴った砲撃が襲いかかってくる。

 ドォォォォォォォォォォォン!!

 俺は左、ルシフェルは右に身を投げ何とか攻撃をかわす。
 大きな爆発音とともに周囲は煙に包まれる。
 そして煙に包まれ視界が極端に悪くなった。視界が悪くなる中ハイドがだけ無事。


「では、これでどうだ!」

 ピッ!!

 ハイドが軽く指をはじく。すると──。


 シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。

 爆発の煙は消えて行き、突然彼の周囲に宙に浮いた手のひらサイズの黒い球状の物体が現れた。


 スッ──!!


 そしてその物体は空中に溶け込むようにして視界から消えていく。

「意味は理解しているな──」

「ああ──」

 恐らくこの辺り一帯に魔力を伴った物体を浮遊させているんだろう。触れた瞬間に爆発しダメージを追うようになっている。

 まるで地雷原だ。

(確か魔球っていうんだっけ──)

 以前勇者だった時はこの魔球にどれだけの冒険者がやられていったことか……。だが──。


(俺はすでに種を知っている。以前も攻略した事はある!!)

 まずは一回目を閉じる。そして神経を研ぎ澄ませる。


 スッ──。


 再び目を開けた。目に魔力を込めてハイドの方に視線を向ける。

(よし、これなら確認できる)

 うっすらとだが球状にゆがんでいるように見える。左右に10個程、あれが魔球だな──。
 見えてしまえば問題ない。

 そして俺は地雷原にゆっくりと飛び込む。まずは右、次に左上──。



 虚空の空間を薙ぎ払う。

 スパッ──!


 ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

 俺の攻撃が魔球に直撃し爆発する。そして背後から魔球がくる気配、動かすこともできるのか──。

 振り返りターンをすると剣を魔球に向かって振り上げる。
 魔球は俺に触れることなく爆発。

 さらに左上、右下、正面──。ものの数分で魔球たちはすべて処理していた。

 ハイドまで数メートルの間で迫った俺は自身の剣をハイドの胸のあたりに向ける。


「こんなこけおどしじゃ俺を止めることは出来ない。貴様の罠はすでに敗れた」

「ふん、腕試しというやつだ。この程度の攻略俺でもできる、自慢するには及ばない」

 俺の言葉に何のためらいもなく言い返してくる。



「さあ、かかってこい……」

 ハイドは仁王立ちになり動かない。俺とハイドの種族値を考えると突っ込んで接近戦を行う以外にない。


 だが──。

「どうした。俺が許せないんじゃなかったのか? 俺と相対して怖気づいたのか?」

 見え見えの挑発にも俺は動じない。
 前回も苦戦はしたがこの攻撃を攻略した。ということは今回も攻略は出来る。それは奴だってわかっているはずだ。

(確実に罠を張っているな……)

 つまりこのまますんなり攻撃のは移れないだろうということだ。しかし周囲に気を配っても何か罠を張っているような気配はない。

(仕方ない、行くしかないか)

 だがそうとわかっていてもどうする事も出来ない。
 だったらやることは一つ。罠だと分かっていてもここは一歩踏み込むしかない。
 逃げていても勝負には勝てない、ここは攻撃あるのみ!!

 そして俺は剣を構え体勢を低く。

「流石は勇者、警戒して攻撃を放棄すると期待してはいたが──」


 タッ──!!

 両足に魔力を込めていっきに加速。トップスピードでハイドに向かっていく。

 そして剣を振り上げ、振りかざす。

 ハイドは何一つ動こうともせず仁王立ち。確実に何かを狙っているな。

 振りかざした剣はハイドの胴体に向かっていく、そして彼の肉体を切り裂いていく。




 はずだった──。しかし……。



(これは、幻影か──)



 斬ったという感触が無い。そしてハイドの幻影を切り刻むとその姿はまるで煙が蒸発していくように消えていく。



(後ろか──!!)

 背後にただならぬ気配を感じとっさに体を回転させる。

 そこには剣を振りかざし手の届く範囲まで接近していたハイドの姿があった。

 慌てて俺はその攻撃を剣で防ぐ。

 しかしハイドはそんなことお構いなしにマシンガンのような連続攻撃、強い魔力を込め何度も俺に攻撃を見舞ってくる。

 慌てて攻撃を防いだため良い体制を取れず、攻撃に移れない。結果的に相手に押し込まれてしまう。ここはいったん距離を取って体勢を立て直したいところだが──。

「どうした、引いて体制を立て直したりしないのか?」

「引きたいのは山々なんだけど、そう言うわけにはいかないんだよなぁ……」

 だが、遠距離戦は部が悪い。魔法攻撃の数値は奴の方が上、距離を取ったらそれこそやられる。
 ATも魔法攻撃も高い両刀型、おまけに耐久も高い。どんな戦闘スタイルもこなせるので戦いの戦法が読みにくいのがこいつの長所だ。

 するとハイドは何と地面に剣を突き刺す。突き刺した場所が黒く光り始め──。



 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

 大きな音を上げ大爆発を起こす。

 俺は何とか身を左に投げ直撃を避ける。爆発時の粉塵で周囲への視界が利かなくなる。これはまずいぞ!!

 一気にハイドが距離を詰める。そして再びの接近戦。

 力強くも無駄に前がかりにならずに全くスキが無い剣さばき。
 何とか奴の攻撃に対応しながらつくづく思う。


 本当に強い、そこいらの悪役とは違う──。


 確かにこいつの剣からは感じる、何かを背負っているというものが、信じる者のために戦っている強さが……。


 だがな──。

(負けられない思いがある、背負うものがあるのはお前だけじゃない!!)

 いくら大切な物のためだからといっても関係が無い人の魂を奪って、傷つけていいなんて理由にはならない!!


 そしてハイドが剣を振り上げると俺は大きくバックステップを取る。


(今だ、ルシフェル!!)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...