【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

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第34話  元勇者 犯行現場を押さえる

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 そして2日ほどたった。時間は深夜、周囲が寝静まったころ。

 家の明かりも消え、真っ暗な道で俺とルシフェル、セリカがその場所へ向かう。


「けどどうするつもり? その人物、私達の姿を見るなりすぐに逃げ出す可能性大よ」

 そりゃそうだ、相手は闇の組織。何も考えずにノコノコ俺達が現れたら警戒され姿を消される。

 そして2人に提案を出す。


「俺とルシフェルがその場にいるのはまずい。だからその場にいないで近くに隠れながら現場を見る。取引しているのを確認出来たらすぐにその場を取り押さえる。どうだ?」

「それでいいわ。そうしましょ」

 ルシフェルが首を縦に振る。そして10分ほど歩くと例の場所の近くにたどり着く。

 セリカが道の先を指でさす。

「あの裏路地でいつもタロットを渡している。もうすぐ時間になるところだ」

「わかった、じゃあ俺達は近くの取引が見える所の壁際で隠れている」


 そう言って俺とルシフェルはセリカと別れ近くの物陰に隠れる。


 セリカはいつも通り周囲を見回して人気が無いのを確認、物陰にいる俺とアイコンタクトをとってから例の路地に入っていった。


「俺がセリカを見る。ルシフェルは周囲に気を配ってくれ」

 ひそひそ声で俺がそう話しかけるとルシフェルは小さく「わかったわ」と返事をして周囲に視線を向ける。

 そして物陰からセリカに視線を集中させる。古びたスラム街の家屋の間にある真っ暗な空間。よく見るとセリカだけではなく他にも数名の人物がいる。

「セリカ一人じゃない。他にも数名くらいいるな」

「やはりそうね、予想はしていたわ。途中の道で鉢合わせにならないように時間をギリギリにしておいてよかったわ」



(しかし人気が無い、まあ、いかがわしいやり取りをするにはうってつけだな──)

 そう考え目を凝らしていると黒いフードをかぶった人物が奥からやってくる。

(背丈は180くらい、でも顔つきまではわからない)

「今回の成果はどうだ?」

 どす黒い声でその人物が話しかける。すると他の人達がポケットからタロットらしきものを一斉に取り出し始めフードの人物に渡し始めた。

「ルシフェル、タロットを渡し始めたぞ」

「これで現場は押えたわ。捕まえましょ!!」

 そしてセリカがこっちに視線を向け手を上げる。フードの人物は周囲への警戒もなく他の人達からタロットカードを受け取っていた、このスキを逃さない手はない。


 サッ──!



 俺とルシフェルは物陰からさっと飛び出す。そして一目散にフードの人物の所に接近。

 フードの人物は異常を察知し逃亡しようとするが時すでに遅し。

 ドゴォォォォォォォォォォォォ!!

 俺はフードの人物に強めに腹パンをする。

 ぐったりと地面に倒れ込む。とりあえず捕らえた。トカゲのしっぽではあるがとりあえず尋問をさせれば何か出てくるだろう。

「おい、何だ貴様!!」

「何すんだよ!!」



 周囲の子供たちが一斉に叫び俺に詰め寄る。

「こいつはやってはいけない事をしている。だから捕らえた。それだけだ」

「こいつがいなかったら俺達生活できないんだぞ!!」

「そうよ、私たちはどうしろっていうのよ!!」

「けどこんなこと許されるはずがないわ」

 必死に食ってかかる少年たち。しかし俺達はひるまない。ルシフェルの言葉にセリカが応戦する。

「そうだ。みんなが苦しんでいるんだ。私からも頼む、もうやめてくれ!!」

「お前たちの行動でどれだけの人が悲しむと思っているんだ?」

 俺も彼らの心に届くよう精一杯叫ぶ。
 しかし彼らの態度は全く変わらない。それどころか真ん中にいる少年はニヤリと邪険な笑みを見せつけてきた、そして──。

「んで? 俺たちがそんな紙切れみたいな言葉で動くと持ってんのかよ!!」

「まあ、そう簡単には動かないだろうな……」

「じゃあ聞いてやるよ、なんで人を殺しちゃいけないんあだよ」

「どうせ法律とかそいつの周りが──、とか言ってくるんだろ。分かっているんだよ」

 自信満々に叫ぶ。確かにそうだ、彼らには守るべきものがない。

 家族もなく、国からも見捨てられた彼らに愛や命の重さを言ったところ何とも思わないだろう。どれだけ思い罰を与えても出所したらまた同じ過ちを繰り返すだろう。

 そしてこれからも平気で人を傷つけていくであろう。仕方ない、戦うしかない──。

 誰かが俺の肩にそっと手を置く。

「わかったわ。私が答えるわ」

 そう相手に聞こえないような声でそっと囁く、ルシフェルだった。彼女は一言そう囁くと俺達の前に出る。その時、俺は彼女から今までに感じたことがない威圧感とオーラを感じた。


 ルシフェルは違った。悲劇も、人々を失う悲しみも全てを知っている。
 俺達勇者側が正義や志を持って戦ったとすれば彼女は虐げられしものや、彼らのような悲惨な育ちをした者を集め戦っていた。

(つまり彼ら事をよく知っているということだ)


 俺達とは比べ物にならないような経験がある。

「わかったわ、私が答えてあげる。あなたたちが納得する内容を──」



 そしてルシフェルは握りこぶしをしながら叫び始める。
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