【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

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第28話 元勇者 スラム街へ

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 そしてパトラの語調が少しだけ強くなる。

「王都の住民たちが被害をすでに受けています。そして敵対心を持ち始めています。このままでは街中であらそいになり追放されるかもせれません」

「それは私も同感です。彼ら全員が罪を犯しているわけではない。であれば王都から追放などしたら、それこそ反感をくらいますからね」

 紅茶を半分ほど飲みほした後、俺はパトラの言葉に同調する。ただでさえ居場所が無い彼らを追い出したら何をしでかすかわからない。
 魔王軍のような組織に入ってしまうことだってある。

「そうよ、全員が悪い事をしているわけじゃないもの」

「うんうん!!」

 ローザも同調する。彼女なら当然だ。


「そして仕事なのですが、まずは調べてほしいんです。彼らの生活や実態を──」



「仕事の内容、盗聴されてるかもしれないけどいいのかしら?」

 ルシフェルがカップの紅茶を飲み干すと、パトラの方向を向いてそう呟く。パトラは全く表情を変えず、腕を組み始めた。

「健全な国家なら本来当然のことなのですよ。政治に携わる者が国民の実態を知り、声を聞くと言うのは」

 まあ、正論と言えば正論だ。だが正論だけでは世の中回らないんだよなぁ……。


「しかし現実は違います、政治の主導権争いに明け暮れ誰も調べもしないし、手を差し伸べもしません。無関心なのでしょう。」

 俺達はその言葉を聞いて、複雑な表情になる。まあ、そうなるよな。悲しいけれどこれが現実だ。

「まあ、何か言われたら、住民たちからスラム街で怪しい動きがあったので、冒険者を使って何があったのかを捜査していた。と言っておきますよ」

「まあ、それなら大丈夫そうね」

「わかりました。その仕事、請け負いましょう」

 当然俺は首を縦に振る。パトラさんの力になれるし好都合だ。
 さらに話は報酬の話しに入る。パトラさんが後ろにある引き出しに移動し2番目の棚を開けた。
 そして手のひらサイズの1つの箱を取り出し机に持ってくると、ポケットから鍵を取り出す。

 その鍵で箱を開けると、箱いっぱいの金貨がびっしりとそこにあった。その中から10枚ほど金貨を手に取ると、それを俺の手に渡してくる。

「とりあえず金貨を数枚渡しておきます。それでそれ以降はどんな事があったかによって決めます」

 えっ!! こんなにくれるの? まだ何もしてないのに、何も無いかもしれないのに──。

 俺が驚いてその金貨を凝視ていると、ルシフェルが顔を近づけてパトラさんに話しかけてくる。

「まって、私達まだなのもしていないわ。私達が適当に街をふらついて、ろくに調べもせずに大丈夫ですっていうようなやつだったら完全な無駄金よ。もうちょっと警戒したらどうなの?」

「確かに私も同感です。パトラ様はもう少し人を疑うという事を知ったほうがよいかと……」

 心配そうなルシフェルとセフィラの表情、確かに彼女は人を信じすぎだ。

「そんな、お気になさらないでください。陽平さんなら手抜きなんてしないとわかっています。信頼できます、それは受け取ってください」

 ルシフェルの質問に、パトラは冷静に微笑を浮かべながら対応する。まあ、そりゃそうだけどさ……。

「わかりました、信頼してくれてありがとうございます。けど絶対にそんな事はしませんから、安心してください」

 俺は自信満々に宣言する。当然だ、彼女の想いに答えないと。
 そして金貨を受け取る。もらった分、全力で頑張ろう。

 そんな宣言をした後、俺達は部屋を後にし宮殿を出る。そして街を歩き始める。

 街を歩きながらローザが話しかけて来た。




「あの……、1つだけいいですか?」

「ん、何?」

「あの……、パトラさんも、街の人たちも、見捨てたりしないですよね……」

 どことなく震えた声、縮こまりながらローザが話しかけてくる。
 するとセフィラも同調するように話しかけてくる。

「それは、私も少し気になります」

 その言葉を聞いて少し考える俺。当たり前だ、けどどうしてそこまで気になるんだ?

「パトラさんや彼らの強さ、私にはわかるの──」

 その言葉で俺は2人の過去を思い出す。考えてみればローザとセフィラにとっては他人事ではない、2人もパトラさんと同じように故郷を追われてこの地に来たのだ。

「大丈夫、特に罪を犯してない者をむげになんか扱わせないから」

 その言葉を聞いて2人がほっとした表情になる。

「今から行ってみよう。なるべく早く行きたい。」

「特にないわ。じゃあ行きましょ!!」

 そう言ってルシフェルは、俺の腕を引っ張って先頭を歩き始める。
 するとセフィラが俺達に話しかけてくる。

「ちょっと待ってください。ローザ様ですが、ちょっとお腹が空いたようです。昼ご飯にしませんか?」

「──そうだな」


 ローザがお腹に手を当て、恥ずかしそうな表情でうつむいている。

(まあ、昼ごろだし。その後からでもいいか──)


 そして近くの軽くレストランで食事を取った後、俺達は目的の場所へと向かった。

 歩いて1時間ほどで俺達は目的の場所に到着。










(想像どおりね──)

 額に手を当て呆れた表情をするルシフェル。だが俺もルシフェルと同じだ。

 さっきの宮殿があった場所はもちろん、俺達が今まで見てきた街とは全く雰囲気が違う。
 古びた家屋、すれ違う人々の服はボロボロで顔つきも痩せこけていたり貧しそうだったりしている。

 文字通りスラム街というやつだ。
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