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第22話 元勇者 仕方なく人助けをする
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「そういえば聞きたいことがあるんだけれどいいかな?」
「何ダ? 言ッテミロ」
「貴様たちって消滅したらどうなるんだ?」
死ぬということであればどうしてこいつは冷静なんだ? もっともがき苦しんで死にたくないとわめいてもおかしくはないというだが。
達観したような態度になっていることの説明がつかない。
「ソレハ禁則事項ダ。言ッタ瞬間本当ニ私ハ消滅シ、二度トココニ来る事ハナイダロウ」
今の言葉だと、ここで消滅することとこいつが死ぬことは違うということか? また復活するのか。
「貴様ガ頭ガマ悪イコトハ認めル。ダガ喋ヌモノハ喋れヌ」
ま、敵とはいえ俺のせいで消滅するなんて嫌だし、これ以上の詮索はする必要はないか。
まあ、それは今後調べることにしよう。
そしてジアーガの姿は消滅。なんかまた会いたいな、今度は敵ではなく味方としてな……。
俺は後方に視線を向ける。そこにはいまだに触手に拘束されているギルドの支配人キーロフの姿があった。
ルシフェルが彼に視線を向けながら話しかける。
「しかし本当に助けるつもり? あれだけ冒険者の事をひどく扱っていたのに?」
「まあ仕方がない」
多分勇者のなったばかりの俺ならば、助けなかったかもしれない。あの時は周りのことなど考えずがむしゃらに突っ込んでいったから。
しかし勇者として旅をして、いろいろな人達と出会ったりして考えが変わった。
もしここでキーロフを見殺しにしてしまえば、いくら彼がひどい人間だろうとここで助けなかったという事実だけが残る。その事実は冒険者の中で噂となり俺達が遠征などで俺達が信用を得たい時に足かせになってしまう。
(勇者は自分が気にいらない人物は助けない)
そんなうわさに変わり独り歩きし、あの時勇者たちをよく思っていなかった俺達も見殺しにされてしまうのではないか、捨て石にされてしまうのではないかそんな疑念が付きまとってしまうことだってあるのだ。
まあ、こっちもあれだけの事をされてただで返すわけではない。ちゃんと考えはある。
「キーロフ様、今助けます」
「おい勇者、早く助けろ。頼む!!」
触手に縛られながら必死に叫ぶキーロフ、叫びを聞きながら俺はポケットから封筒を取り出す。封筒から1枚の紙を取り出しゆっくりとキーロフの所へ向かう。
彼のそばによると俺は冷たい視線を送りながら話しかける。
「ただ……、あんた、今まで冒険者に対してどんな扱いをした? 聞いたぞ、無能などと冒険者達に罵声を浴びせたり低い報奨金で冒険者を過酷な任務につかせていた。聞いたぞ??」
「うう……、それはすまなかった。だから助けてくれ……」
さっきとは違いどこか罪悪感を感じているのが顔つきから見て取れる。冒険者たちの苦労、大変さ、理解してくれたのか──。
「助けてくれ? あんた今まで冒険者に対しての仕打ち、それを考えたら調子が良すぎると自分で思わないのか?」
俺はキーロフを突き放すように叫ぶ。以前勇者だった時も、ピンチの時だけ調子のいい事だけいって、自分の身が安全になったとたん手首が複雑骨折しそうなくらいの手のひら返しをされたことだってあった。
こいつも今だけすまなそうな顔をして、ギルドに戻ったら手のひらを返してまた冒険者達を奴隷のように扱う可能性だってある。
まあ、そんなの予想通りだ。こっちだって対策を考えている。
そして俺は1枚の紙をキーロフの眼前に差し出す。
以前あった最低報奨金制度、俺が冒険者達の苦労が報われるようにと作った制度。それを執行させるように書いた契約書。
そしてそれを認めるよう書類を彼の前に差し出す。
「こういう事も想定して用意しておいておいたんだ。助かりたかったら分かるよな、サインしてもらいますからね──」
こういうことも想定しておいた俺は、ここに来る前に密かに書類を用意していたのだった。
ギルドに以前のように、不当に低い報奨金で働かせたり無理矢理冒険者の特性に合わない仕事をさせたりしないようにする制度、この機会にそれを復活させる。
「指紋でも契約は成立するはずだ。ギルドの登録証と一緒でそのサインの場所に指を強く当てれば契約は成立することになっている」
キーロフが観念したのか、がっくりとうなだれながら指を契約のサインをするところに強く触れる。そして契約書の指紋を押した場所が光り出す。これで契約は完了。
「ありがとな、今助けるから──」
ため息をついた後、俺は剣を振り上げる。彼の肉体を傷つけないように触手達を切り刻んでいく。
そして彼を縛りつけていた触手も消え、キーロフは自由な身になった。
「ハァ──、ハァ──」
触手で拘束されていたせいで体力を消耗している。自力で歩くのは無理かもしれないな。
「しょうがない奴だ、肩貸してやるよ──」
そして俺たちは元来た道を戻っていく。
けっこう負傷した冒険者も多い
とりあえずクエストは終了。もっと実践経験を積む必要が分かったってことも収穫だな。
そして帰路。疲労もあったが、何とか無事に王都にたどり着いた。
「何ダ? 言ッテミロ」
「貴様たちって消滅したらどうなるんだ?」
死ぬということであればどうしてこいつは冷静なんだ? もっともがき苦しんで死にたくないとわめいてもおかしくはないというだが。
達観したような態度になっていることの説明がつかない。
「ソレハ禁則事項ダ。言ッタ瞬間本当ニ私ハ消滅シ、二度トココニ来る事ハナイダロウ」
今の言葉だと、ここで消滅することとこいつが死ぬことは違うということか? また復活するのか。
「貴様ガ頭ガマ悪イコトハ認めル。ダガ喋ヌモノハ喋れヌ」
ま、敵とはいえ俺のせいで消滅するなんて嫌だし、これ以上の詮索はする必要はないか。
まあ、それは今後調べることにしよう。
そしてジアーガの姿は消滅。なんかまた会いたいな、今度は敵ではなく味方としてな……。
俺は後方に視線を向ける。そこにはいまだに触手に拘束されているギルドの支配人キーロフの姿があった。
ルシフェルが彼に視線を向けながら話しかける。
「しかし本当に助けるつもり? あれだけ冒険者の事をひどく扱っていたのに?」
「まあ仕方がない」
多分勇者のなったばかりの俺ならば、助けなかったかもしれない。あの時は周りのことなど考えずがむしゃらに突っ込んでいったから。
しかし勇者として旅をして、いろいろな人達と出会ったりして考えが変わった。
もしここでキーロフを見殺しにしてしまえば、いくら彼がひどい人間だろうとここで助けなかったという事実だけが残る。その事実は冒険者の中で噂となり俺達が遠征などで俺達が信用を得たい時に足かせになってしまう。
(勇者は自分が気にいらない人物は助けない)
そんなうわさに変わり独り歩きし、あの時勇者たちをよく思っていなかった俺達も見殺しにされてしまうのではないか、捨て石にされてしまうのではないかそんな疑念が付きまとってしまうことだってあるのだ。
まあ、こっちもあれだけの事をされてただで返すわけではない。ちゃんと考えはある。
「キーロフ様、今助けます」
「おい勇者、早く助けろ。頼む!!」
触手に縛られながら必死に叫ぶキーロフ、叫びを聞きながら俺はポケットから封筒を取り出す。封筒から1枚の紙を取り出しゆっくりとキーロフの所へ向かう。
彼のそばによると俺は冷たい視線を送りながら話しかける。
「ただ……、あんた、今まで冒険者に対してどんな扱いをした? 聞いたぞ、無能などと冒険者達に罵声を浴びせたり低い報奨金で冒険者を過酷な任務につかせていた。聞いたぞ??」
「うう……、それはすまなかった。だから助けてくれ……」
さっきとは違いどこか罪悪感を感じているのが顔つきから見て取れる。冒険者たちの苦労、大変さ、理解してくれたのか──。
「助けてくれ? あんた今まで冒険者に対しての仕打ち、それを考えたら調子が良すぎると自分で思わないのか?」
俺はキーロフを突き放すように叫ぶ。以前勇者だった時も、ピンチの時だけ調子のいい事だけいって、自分の身が安全になったとたん手首が複雑骨折しそうなくらいの手のひら返しをされたことだってあった。
こいつも今だけすまなそうな顔をして、ギルドに戻ったら手のひらを返してまた冒険者達を奴隷のように扱う可能性だってある。
まあ、そんなの予想通りだ。こっちだって対策を考えている。
そして俺は1枚の紙をキーロフの眼前に差し出す。
以前あった最低報奨金制度、俺が冒険者達の苦労が報われるようにと作った制度。それを執行させるように書いた契約書。
そしてそれを認めるよう書類を彼の前に差し出す。
「こういう事も想定して用意しておいておいたんだ。助かりたかったら分かるよな、サインしてもらいますからね──」
こういうことも想定しておいた俺は、ここに来る前に密かに書類を用意していたのだった。
ギルドに以前のように、不当に低い報奨金で働かせたり無理矢理冒険者の特性に合わない仕事をさせたりしないようにする制度、この機会にそれを復活させる。
「指紋でも契約は成立するはずだ。ギルドの登録証と一緒でそのサインの場所に指を強く当てれば契約は成立することになっている」
キーロフが観念したのか、がっくりとうなだれながら指を契約のサインをするところに強く触れる。そして契約書の指紋を押した場所が光り出す。これで契約は完了。
「ありがとな、今助けるから──」
ため息をついた後、俺は剣を振り上げる。彼の肉体を傷つけないように触手達を切り刻んでいく。
そして彼を縛りつけていた触手も消え、キーロフは自由な身になった。
「ハァ──、ハァ──」
触手で拘束されていたせいで体力を消耗している。自力で歩くのは無理かもしれないな。
「しょうがない奴だ、肩貸してやるよ──」
そして俺たちは元来た道を戻っていく。
けっこう負傷した冒険者も多い
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そして帰路。疲労もあったが、何とか無事に王都にたどり着いた。
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