9 / 103
第9話 元勇者 王女様とホテル探し
しおりを挟む
(俺が何とかしなきゃ──)
日も暮れ始め夕焼け空になる。
2人で街を歩く事30分ほど、にぎやかな繁華街を抜け官庁街にたどり着く。
王国の行政機能がこのエリアに集中している地区、その中に目的の場所はあった。
「ここみたいね」
この街でも広くて大きい建物、大きくて歴史を感じさせる印象があるホテルだ。
そしてフロントに行き受け付けの人に部屋が空いているか聞いたのだが……。
「満員??」
何でも地方の治安が悪化し難民達が王都に流入し、その影響でどのホテルも混雑が続いているとのこと。
「そうですか、すいません。」
「いえいえ、こちらこそ……」
ルシフェルが両手を合わせて軽く頭を下げる。フロントの人も申し訳なさそうな表情をして頭を下げると俺達はこの場を後にしした。
「しかし弱ったな、まさかこんなことになっているなんてな──」
頭の上で腕を組みながら俺はどうすればいいかを考える。さて、ホテル、しらみつぶしに探すしかないか──。
とぼとぼと歩いていると誰かが俺の肩をツンツンと触れてくる。その感触に気付いた俺はすぐに後ろを振り向く。
「何でしょう、ってさっきの女の子!」
「先ほどはありがとうございます」
ピンク色での髪色、俺の肩小柄な身長。髪と同じピンクの服にミニスカート。さっきキーロフに追い出された少女。そしてもう一人いる。
まずはローザが話しかけてくる。
「あの、ホテルを探しているんですか?」
「まあ、そうだけど何でわかるの?」
「先ほど、ホテルから2人が出ていく姿を見かけてもしかしたらと思ったんです。私たちもホテルを探していましたから。でも空きがあるホテルがなかなか無くて……」
そうなのか、じゃあ俺達と一緒だな。
「じゃあいっしょに探そうか?」
「あ、ありがとうございます。いいホテルが見つかるといいですね!!」
ローザは嬉しそうに舞い上がった後、先頭を歩き始める。
するともう一人の少女が申し訳なさそうな表情で俺にむかってお辞儀をして頭を下げた。
「申し訳ありません、私が席をはずしていた時にこのような事になってしまっていて」
黒髪でショートヘア、すらっとした体型の少女。
「はじめまして、私ローザお嬢様のボディーガードをしておりますセフィラと申します。こんな私ですがよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、後藤陽平って言います。よろしくお願いします」
俺も軽く頭を下げて挨拶。ボディーガードというだけあって礼儀正しい印象。なんとなくだけれど打ち解けられそうだ──。するとローザが俺の右手をギュッとつかんで前に引っ張り始める。
「ホテル、探そう──。きっとあるはずだよ!!」
「……そうだね」
ローザはポジティブなのか屈託ない笑顔を見せる。まあ、それしかないか──。
そして俺達のホテル探しが再び始まる。
歩いて5分ほどすると看板に「HOTEL」の文字。その文字を見て俺達は期待の表情を浮かべ始める。
やや早足になりホテルへ向かって歩き中に入る。
そしてさっきのように同じ質問をする。
「しばらく滞在したいのですが、空いている部屋はありませんですか?」
俺は心の中で手を合わせて祈る。しかし答えは残酷だった。
「申し訳ありません、こちらはここ一週間ほど満室が続いておりまして──」
「そ、そうですか、分かりました。他を当たってみます」
「本当に申し訳ありません。力になれなくて……」
「いえいえ──」
ため息をつきながら俺はホテルの外へ出る。
「ハァ──。まあ、次を当たりましょう──」
ため息交じりのルシフェルの一言、どこか声のトーンが低い。
3軒目、4軒目へ行っても返ってくる答えは一緒だった。
「あいている部屋はありません」
と──。
そして再び道を歩き始める。正直俺とルシフェルは疲れているせいかどこか足取りが重い。
そんな中軽い足取りで先頭を歩くのがローザだった。
歩いているそぶりを見ていても落ち込んでいたり暗い気持ちになっているような雰囲気はない。
根は明るい子なんだな──、と思う。
「みんな──、早く探そうよ。日が暮れちゃうよ!!」
まるで俺達を引っ張るような掛け声。前を歩きすぎて人混みではぐれそうだったからとまったみたいだ。
その言葉に俺は少し掛け足になってついていく。
「ローザ様ならこのくらいのことではめげませんよ」
後ろからセフィラが話しかける。
そう言えば俺はローザの事を知らない。どういう子なんだ?
「王様から見捨てられたんです。元王女候補だったんですよ」
元王女候補様?? そんな身分の高い女の子だったのか?
ってことは裕福な家系に生まれたってことなんだろ
じゃあ何でギルドでクエスト探しなんてしているんだ? 何か問題でもあったのか?
そんな事をセフィラに聞いてみると彼女は眼を横に伏せ始め、うっすらと涙を浮かべながら答え始める。まずい過去でもあるみたいだな──。
「ええ、事情があって追放令が出されてしまいました。そしてそのせいで周りからも支持を失い行き場所を失ってしまいました。申し訳ありません。ここで話すのもなんなんでホテルに着いたら話しましょう」
「わ、わかった……、今は聞かないでおくよ」
まあ、深刻な事ならこんな人ゴミで話す事でもないしな──。また今度で聞く事にしよう。
「セフィラちゃ──ん、陽平さん、ルシフェルさん。ホテルあったよ、いってみようよ!!」
その言葉に「どうせ」とか、「無理」なんてネガティブな感情は存在しない。どんな時も前を向ける子なんだろう。
そしてローザが指を差した先──。
日も暮れ始め夕焼け空になる。
2人で街を歩く事30分ほど、にぎやかな繁華街を抜け官庁街にたどり着く。
王国の行政機能がこのエリアに集中している地区、その中に目的の場所はあった。
「ここみたいね」
この街でも広くて大きい建物、大きくて歴史を感じさせる印象があるホテルだ。
そしてフロントに行き受け付けの人に部屋が空いているか聞いたのだが……。
「満員??」
何でも地方の治安が悪化し難民達が王都に流入し、その影響でどのホテルも混雑が続いているとのこと。
「そうですか、すいません。」
「いえいえ、こちらこそ……」
ルシフェルが両手を合わせて軽く頭を下げる。フロントの人も申し訳なさそうな表情をして頭を下げると俺達はこの場を後にしした。
「しかし弱ったな、まさかこんなことになっているなんてな──」
頭の上で腕を組みながら俺はどうすればいいかを考える。さて、ホテル、しらみつぶしに探すしかないか──。
とぼとぼと歩いていると誰かが俺の肩をツンツンと触れてくる。その感触に気付いた俺はすぐに後ろを振り向く。
「何でしょう、ってさっきの女の子!」
「先ほどはありがとうございます」
ピンク色での髪色、俺の肩小柄な身長。髪と同じピンクの服にミニスカート。さっきキーロフに追い出された少女。そしてもう一人いる。
まずはローザが話しかけてくる。
「あの、ホテルを探しているんですか?」
「まあ、そうだけど何でわかるの?」
「先ほど、ホテルから2人が出ていく姿を見かけてもしかしたらと思ったんです。私たちもホテルを探していましたから。でも空きがあるホテルがなかなか無くて……」
そうなのか、じゃあ俺達と一緒だな。
「じゃあいっしょに探そうか?」
「あ、ありがとうございます。いいホテルが見つかるといいですね!!」
ローザは嬉しそうに舞い上がった後、先頭を歩き始める。
するともう一人の少女が申し訳なさそうな表情で俺にむかってお辞儀をして頭を下げた。
「申し訳ありません、私が席をはずしていた時にこのような事になってしまっていて」
黒髪でショートヘア、すらっとした体型の少女。
「はじめまして、私ローザお嬢様のボディーガードをしておりますセフィラと申します。こんな私ですがよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、後藤陽平って言います。よろしくお願いします」
俺も軽く頭を下げて挨拶。ボディーガードというだけあって礼儀正しい印象。なんとなくだけれど打ち解けられそうだ──。するとローザが俺の右手をギュッとつかんで前に引っ張り始める。
「ホテル、探そう──。きっとあるはずだよ!!」
「……そうだね」
ローザはポジティブなのか屈託ない笑顔を見せる。まあ、それしかないか──。
そして俺達のホテル探しが再び始まる。
歩いて5分ほどすると看板に「HOTEL」の文字。その文字を見て俺達は期待の表情を浮かべ始める。
やや早足になりホテルへ向かって歩き中に入る。
そしてさっきのように同じ質問をする。
「しばらく滞在したいのですが、空いている部屋はありませんですか?」
俺は心の中で手を合わせて祈る。しかし答えは残酷だった。
「申し訳ありません、こちらはここ一週間ほど満室が続いておりまして──」
「そ、そうですか、分かりました。他を当たってみます」
「本当に申し訳ありません。力になれなくて……」
「いえいえ──」
ため息をつきながら俺はホテルの外へ出る。
「ハァ──。まあ、次を当たりましょう──」
ため息交じりのルシフェルの一言、どこか声のトーンが低い。
3軒目、4軒目へ行っても返ってくる答えは一緒だった。
「あいている部屋はありません」
と──。
そして再び道を歩き始める。正直俺とルシフェルは疲れているせいかどこか足取りが重い。
そんな中軽い足取りで先頭を歩くのがローザだった。
歩いているそぶりを見ていても落ち込んでいたり暗い気持ちになっているような雰囲気はない。
根は明るい子なんだな──、と思う。
「みんな──、早く探そうよ。日が暮れちゃうよ!!」
まるで俺達を引っ張るような掛け声。前を歩きすぎて人混みではぐれそうだったからとまったみたいだ。
その言葉に俺は少し掛け足になってついていく。
「ローザ様ならこのくらいのことではめげませんよ」
後ろからセフィラが話しかける。
そう言えば俺はローザの事を知らない。どういう子なんだ?
「王様から見捨てられたんです。元王女候補だったんですよ」
元王女候補様?? そんな身分の高い女の子だったのか?
ってことは裕福な家系に生まれたってことなんだろ
じゃあ何でギルドでクエスト探しなんてしているんだ? 何か問題でもあったのか?
そんな事をセフィラに聞いてみると彼女は眼を横に伏せ始め、うっすらと涙を浮かべながら答え始める。まずい過去でもあるみたいだな──。
「ええ、事情があって追放令が出されてしまいました。そしてそのせいで周りからも支持を失い行き場所を失ってしまいました。申し訳ありません。ここで話すのもなんなんでホテルに着いたら話しましょう」
「わ、わかった……、今は聞かないでおくよ」
まあ、深刻な事ならこんな人ゴミで話す事でもないしな──。また今度で聞く事にしよう。
「セフィラちゃ──ん、陽平さん、ルシフェルさん。ホテルあったよ、いってみようよ!!」
その言葉に「どうせ」とか、「無理」なんてネガティブな感情は存在しない。どんな時も前を向ける子なんだろう。
そしてローザが指を差した先──。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる