8 / 103
第8話 元勇者 久しぶりのクエストが決まる
しおりを挟む
「性善説なんて都市伝説。罪を憎んで人を憎まずなんてお花畑。肌で実感できるよ」
「ええ、それは同感よ。あんたたちが欲にまみれた人物だってすぐに理解したわ」
ルシフェルも腕を組みながらあきれ顔を見せる。
とりあえずフィーナさんに事情を聞いてみる。なぜこんなことになったのか。
「先日、とあるクエストが王国からギルドに来たんです」
「王国が請負のクエスト?」
たまにある、民間人じゃなくて政府で決定したことで冒険者を募ったクエストが。
「はい、最近になって海底で発見された遺跡がありまして、近づこうにも魔物たちが潜んでいます。そのせいで散策出来ないので冒険者達に募集を募っているんですよ」
なるほど、今の言葉でよく理解した。
国家ぐるみという事は集められなければ国の政策にも影響する。だからギルドに圧力をかけて無理矢理冒険者を集めて何としてもクエストを遂行させようとすることがある。
今回もそう言うことだろう。
「何としても頭数をそろえて欲しい。そんな通達が おまけにですね──」
「キーロフさん、実は王国から落下傘のように突然このギルドに派遣されてきたんです。当然冒険者としての経験もありません」
「突然? そんなことがあるのか?」
普通ギルドを束ねる人は冒険者に人望があったり経験深い人を採用し、彼らの意見をよく聞く。そうしていたはずだ、彼らの協力なしにこの世界は守れないもだから。
「はい、予告も通達もなく本当に突然でした。以前のギルドマスターは冒険者としての経験も深く彼らの事をよく考えてくれた人なのですが、突然解任されてあの人が送られてきたんです」
「多分王国がギルドを支配して、自分たちの命令を何でも聞くような機関にするために送られてきたんでしょうね」
こういつタイプの人ともよく接してきた。どう対応すればいいかもなんとなくわかる
とりあえずこうしてみるか。
そして俺はキーロフさんに接近。優しく肩を叩いて話しかける。
「キーロフさん、私からあなたに一つお願いがあります」
「何だ?」
キーロフはキレ気味に不機嫌な表情で言葉を返した。俺は造り笑顔でとある提案をし始める。
「今回のクエストだけでいいです。クエストに同行してほしいんです」
「ハァ? 何で俺様がそんな事をしなくちゃならんのだ。俺は魔法なんて使えないんだぞ?」
機嫌が悪そうなキーロフ、しかし俺は躊躇することなくさらに言葉を進める。
「だってあなたギルドの責任者なのにクエストを受けた事もないどころか魔法だって使用できないと聞きました。それでは冒険者の事など分かるわけがありません」
「当り前だろ。何で俺様が貴様らの事など考慮しなければならんのだ」
ピクッとキレそうになる感情を抑える俺。
考えてみれば彼は王国の元官僚。落下傘のように王国からこのギルドの責任者としてやってきた。当然冒険者の事など数字でしか理解していない。だから実際に冒険者達がどんな活動を行っているのか見てもらおうという事だ。
当然ただ見てほしいと言って首を縦に振るとは思えない、作戦は用意しておいた。
「それがどうしたというのだ。なぜこの俺様が貴様たちの事を理解しなければならないというのだ」
お前ギルドの責任者だろうが、冒険者達は貴様の言う事を何でも聞く操り人形じゃないんだぞ。
「それとも出来ないというのですか? 冒険者達に過酷な任務などを平気で課しているというのにいざ自分がそうなる事になったら逃げると言うのですか?」
挑発ともいえるような言葉使いでキーロフに問いただす、すると彼は眉をピクリとさせた。少しは乗ってくれるかな?
「ああわかった、行きゃあいいんだろ行きゃあ。行ってやるよ。 フン! どうせ大したことはやって無いんだろう?」
投げやりな態度ではあったが何とか首を縦に振ってくれた。
「じゃあ俺達もこのクエストに参加する事にします」
「承りました。では手続きを開始いたします」
そしてフィーナさんは机の下から書類を取り出す。2人は書類にサインをして日程や集合場所、規約などの説明を受ける。
「日程としては3日後、現地集合で集合時間は日が昇ったころか」
そして俺はフィーナさんから集合場所の地図を受け取りこの場を去った。
空を見ると日がもう傾き始めている。そういえば今日どこで泊るかまだ決めていないな……。
「とりあえず泊まるホテルを探さないか? もう日も暮れ始めてるし」
「──そうね、泊まれそうな所、探してみましょう」
ルシフェルが首を縦に振り俺達は周囲に宿泊施設が無いか探し始めた。
そして探しながら俺はさっきギルドにいたキーロフについて話しかける。すると──。
「本当にひどいマスターね。魔王軍を指揮していた時もああいうタイプの指揮官はいたわ」
「いたのかよ──」
「あの時は規模が大きくなりすぎて隅々まで掌握しきれなかったのよ。けどそういうタイプの結末は大体決まっているのよね」
なるほど、魔王軍は全盛期は何万もの軍勢があったと聞く。確かにいくら魔王のルシフェルでも全てまとめきるのは難しいかもしれない。
「どんなことになるんだ?」
「人心が離れ裸の王様になる。最後は味方をすべて失い消滅していく運命だわ」
まあ、そうなるよな。ため息をつきながら今後のギルドが心配になる。あれでは冒険者達がまとまるはずがない。間違ってもあいつはともかく冒険者やギルドをそんな運命にさせるわけにはいかない。
(俺が何とかしなきゃ──)
「ええ、それは同感よ。あんたたちが欲にまみれた人物だってすぐに理解したわ」
ルシフェルも腕を組みながらあきれ顔を見せる。
とりあえずフィーナさんに事情を聞いてみる。なぜこんなことになったのか。
「先日、とあるクエストが王国からギルドに来たんです」
「王国が請負のクエスト?」
たまにある、民間人じゃなくて政府で決定したことで冒険者を募ったクエストが。
「はい、最近になって海底で発見された遺跡がありまして、近づこうにも魔物たちが潜んでいます。そのせいで散策出来ないので冒険者達に募集を募っているんですよ」
なるほど、今の言葉でよく理解した。
国家ぐるみという事は集められなければ国の政策にも影響する。だからギルドに圧力をかけて無理矢理冒険者を集めて何としてもクエストを遂行させようとすることがある。
今回もそう言うことだろう。
「何としても頭数をそろえて欲しい。そんな通達が おまけにですね──」
「キーロフさん、実は王国から落下傘のように突然このギルドに派遣されてきたんです。当然冒険者としての経験もありません」
「突然? そんなことがあるのか?」
普通ギルドを束ねる人は冒険者に人望があったり経験深い人を採用し、彼らの意見をよく聞く。そうしていたはずだ、彼らの協力なしにこの世界は守れないもだから。
「はい、予告も通達もなく本当に突然でした。以前のギルドマスターは冒険者としての経験も深く彼らの事をよく考えてくれた人なのですが、突然解任されてあの人が送られてきたんです」
「多分王国がギルドを支配して、自分たちの命令を何でも聞くような機関にするために送られてきたんでしょうね」
こういつタイプの人ともよく接してきた。どう対応すればいいかもなんとなくわかる
とりあえずこうしてみるか。
そして俺はキーロフさんに接近。優しく肩を叩いて話しかける。
「キーロフさん、私からあなたに一つお願いがあります」
「何だ?」
キーロフはキレ気味に不機嫌な表情で言葉を返した。俺は造り笑顔でとある提案をし始める。
「今回のクエストだけでいいです。クエストに同行してほしいんです」
「ハァ? 何で俺様がそんな事をしなくちゃならんのだ。俺は魔法なんて使えないんだぞ?」
機嫌が悪そうなキーロフ、しかし俺は躊躇することなくさらに言葉を進める。
「だってあなたギルドの責任者なのにクエストを受けた事もないどころか魔法だって使用できないと聞きました。それでは冒険者の事など分かるわけがありません」
「当り前だろ。何で俺様が貴様らの事など考慮しなければならんのだ」
ピクッとキレそうになる感情を抑える俺。
考えてみれば彼は王国の元官僚。落下傘のように王国からこのギルドの責任者としてやってきた。当然冒険者の事など数字でしか理解していない。だから実際に冒険者達がどんな活動を行っているのか見てもらおうという事だ。
当然ただ見てほしいと言って首を縦に振るとは思えない、作戦は用意しておいた。
「それがどうしたというのだ。なぜこの俺様が貴様たちの事を理解しなければならないというのだ」
お前ギルドの責任者だろうが、冒険者達は貴様の言う事を何でも聞く操り人形じゃないんだぞ。
「それとも出来ないというのですか? 冒険者達に過酷な任務などを平気で課しているというのにいざ自分がそうなる事になったら逃げると言うのですか?」
挑発ともいえるような言葉使いでキーロフに問いただす、すると彼は眉をピクリとさせた。少しは乗ってくれるかな?
「ああわかった、行きゃあいいんだろ行きゃあ。行ってやるよ。 フン! どうせ大したことはやって無いんだろう?」
投げやりな態度ではあったが何とか首を縦に振ってくれた。
「じゃあ俺達もこのクエストに参加する事にします」
「承りました。では手続きを開始いたします」
そしてフィーナさんは机の下から書類を取り出す。2人は書類にサインをして日程や集合場所、規約などの説明を受ける。
「日程としては3日後、現地集合で集合時間は日が昇ったころか」
そして俺はフィーナさんから集合場所の地図を受け取りこの場を去った。
空を見ると日がもう傾き始めている。そういえば今日どこで泊るかまだ決めていないな……。
「とりあえず泊まるホテルを探さないか? もう日も暮れ始めてるし」
「──そうね、泊まれそうな所、探してみましょう」
ルシフェルが首を縦に振り俺達は周囲に宿泊施設が無いか探し始めた。
そして探しながら俺はさっきギルドにいたキーロフについて話しかける。すると──。
「本当にひどいマスターね。魔王軍を指揮していた時もああいうタイプの指揮官はいたわ」
「いたのかよ──」
「あの時は規模が大きくなりすぎて隅々まで掌握しきれなかったのよ。けどそういうタイプの結末は大体決まっているのよね」
なるほど、魔王軍は全盛期は何万もの軍勢があったと聞く。確かにいくら魔王のルシフェルでも全てまとめきるのは難しいかもしれない。
「どんなことになるんだ?」
「人心が離れ裸の王様になる。最後は味方をすべて失い消滅していく運命だわ」
まあ、そうなるよな。ため息をつきながら今後のギルドが心配になる。あれでは冒険者達がまとまるはずがない。間違ってもあいつはともかく冒険者やギルドをそんな運命にさせるわけにはいかない。
(俺が何とかしなきゃ──)
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。


俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる