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最終回 これからは、2人で
しおりを挟む現実世界に戻った俺達。
時間はすでに夕暮れの家の前。璃緒とネフィリムの2人と一緒。すぐに加奈から連絡がきた。もうすぐここに来るそうだ。
すぐに家の中に入って、自分の部屋で横になる。色々あって疲れちゃったな。休もうか。
「疲れましたね」
「そうなのじゃ」
寝っ転がりながら、今日のことを色々と話す。こうやって、3人で楽しく会話できるのも最後なのか──俺たち、戦い終わた後はいつもこんな会話をして余韻を楽しんでたから、それがなくなるのも物悲しい。
「やっぱり、みんなで力を合わせると強いですね」
「そうなのじゃ。結束して戦って、勝ったのじゃ。力を合わせて勝った時の喜びは何にも代えがたい喜びなのじゃ」
「そうだね。またいつか、こんなコラボとかできたらいいね」
「いいですね、復活コラボとか、面白そうです」
すぐに加奈とろこがやってきて、5人は全員でハイタッチをした後、同じ部屋で輪を描くようにして座り込んだ。
やはり、2人も相当疲れているのが表情からもわかる。2人も、俺達のために応援に駆けつけて来てくれて、一生懸命戦ってくれたんだな。
「勝利、おめでとうございます」
「嬉しいです」
「こっちこそ。助けてくれてありがとう。本当に、2人がいなかったら勝てなかったよ。感謝してるよ」
「おめでとなー」
笑みを浮かべ、握手をして互いを健闘しあう。誰か1人でもかけていたら、この勝利はなかった。まずは、この喜びを周囲に伝えよう。
まずは、窓をカーテンで閉めてから、視聴者たちに挨拶をした。
「何とか、勝利したでー」
「はい。力を合わせて、勝てました」
カナロコの方は、とても評判が良かった模様。そして俺達。
「今日は、からすみさんとネフィリムさんと最後のコラボ動画。大変でしたがクリアできてよかったでーす」
“璃緒ちゃんお疲れさま。エンシェント・ロマンに戻っても頑張ってね”
“でも、たまにはコラボとかやってもいいんじゃない? せっかく一緒になったんだし”
「そうかもしれませんね。今度、考えてみますね」
確かに、それもいいかもしれない。どこかで、また一緒にやりたいものだ。それから、俺の方のコメント。
“もう璃緒ちゃんとお別れかよ。デートとかした?”“
“これから璃緒なしか。トークとか大丈夫かな?”
“まあ、おかしい所とか、もっとこうしたらいい所とかがあったら教えるから”
「まあ、これからは何とか2人でがんばってみるよ」
相変わらずだな。
一応、ネフィリムはこれからも俺と一緒に配信をするということになってる。これからも、大変な毎日が待っているだろう。璃緒がいなくて余計に。それでも、俺達は戦っていかなければいけない。
不安な気持ちもあるけど、なぜか大丈夫だという感情があった。ネフィリムだって、ついてきてくれたファンだっているし──。
彼らの期待に答えられるような配信者になっていきたい。
俺達は、別れるために部屋の外へ。家の外を出るなり、夕日の光が全身に当たる。
それから5人が玄関に出て、璃緒と向かい合った。
西日が、璃緒を照らしている。優しい笑顔で笑みを向けてくる璃緒。本当にそんな笑顔が似合っていて、とても美しさを感じる。こんな表情を見ているだけで、胸が高まってドキッとしてしまう。
「今まで、ありがとうございました」
そして、璃緒が手を差し出してきてそれをぎゅっと握る。これで、璃緒と一緒にいるのも終わりだ。
「これからは──ライバル同士ですね」
「そうやな。相手が誰だろうと、うちらは負けるつもりはあらへん。今度戦うことになったら、うちらが勝たせてもらうで」
ろこが、自信満々の表情で、両手を腰に当てながら言う。璃緒に堂々と言えるなんて、かなりビックマウスだよな。配信してるときに言ったら、絶対騒がれるよな。
まあ、それくらいの自信をもっていないと配信者なんてできないし。ろこらしい言葉だ。璃緒も、その言葉を聞いてどこか嬉しそう。
「私も一緒です。皆さんには、数えきれない御恩があります。感謝の気持ちも強く持っています。しかし、勝負は別です。今度本気で戦う機会があたら、その時は手加減なしで全力でぶつかり合いましょう」
「大丈夫。最初っからそのつもりだよ。今度会ったら、全力で戦って──俺たちが勝つよ」
笑って、璃緒に言葉を返した。当然だ。そう言葉を返せないのなら、配信者なんてやっていない。そして、別れの時間になる。名残惜しいけど、一旦別の道に分かれるだけ。戦うことになることもあるけど、また一緒に戦うことだってきっとある。
一時的なものだ。
「そうやな。ほな、互いの健闘を祈って、ここでわかれようか。今までありがとな、これからも、達者でな」
「こちらこそ、今までありがとうございました。今までの事は絶対に忘れません。次会った時は──よろしくお願いします」
「澄人君。一緒に戦えてとても幸せだったよ。私は──幼馴染なんだし今度は一緒に遊ぼうね」
「わかったわかった」
そして俺たちは、別れていく。その姿はまるで、今まで一緒だった俺たちが互いに別々の道へと歩んでいくようだ。これで、本当にお別れなんだな。
でも3人とも不安な表情は一切していない。どこか、自身に満ち溢れたような表情をしている。まあ、3人ならこの世界でも十分戦っていけるだろう。周囲を引き付ける力もあるし、実力だってある。
この世界で生き残るのも、大変かもしれない。それは、どんな強敵と戦う事よりもだ。それでも、俺たちは生き残るんだ。
夕日に染まる3人を見ていると、誰かが肩を叩いてきた。振り向くと、そこにネフィリムがいる。ネフィリムも、嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。ネフィリムにとっても、3人との出会いはとても嬉しいものだったのだろう。以前の世界では、そんなことできなかったしな。
「これからは、2人で配信じゃ。がんばるぞ」
「そうだな。これからもよろしく」
俺は、ネフィリムとしばらく配信をすることとなっている。1人だと、まだまだとトークとか、話題造りとかに不安があったからだ。ネフィリムなら、周囲を引き付けるようなうまいトークだってある。
カリスマ性だってある。俺が学ぶべきことが色々とあるのだ。
ネフィリムが俺の腕をぎゅっとつかんでくる。
「澄人殿と、今日から2人っきりなのじゃ。まるで恋人同士なのじゃ」
「まあ、そうだけどさ」
挑発的な笑みでこっちを見てきた。腕に抱きついているせいで、豊満なむねがあたっている。
こういうところ、たまにあるよな。誘っているのだろうか──どうしてもドキッとしてしまう。
「これからは、2人っきりでよろしく頼むぞい。デートみたいな、協力プレイみたいで楽しそうなのじゃ」
「わかったよ。これからは頑張ろうね」
「そうなのじゃ。頑張るのじゃ」
そして、話し合いをするために再び部屋に戻った。
ネフィリムは、どこか嬉しそう。ネフィリムとうまくやっていくためにも、俺ももっと配信者として努力していかないと。
そんな決意を胸に、俺は配信者としてこれからも歩んでいく。
つらいことだってこれからもあるだろう、それでも──素敵な仲間がいる限り、俺を見てくれている人がいる限り歩み続けていくんだ。
人々に、元気と勇気を与えられるような存在になるために。
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