上 下
93 / 99

第93話 これが、作戦

しおりを挟む

「多分そうなのじゃ」

 そして、魔物たちは次々と逃げようとしていた人たちをわし掴みにして持ち上げた。
 すると、魔物たちの体の中から太い縄のようなものがあらわれ、捕らえた配信者たちを自身の身体に巻き付けるよう接着する。

「人質にしたっていう事か──」

「恐らくそうなのじゃ。こっちが手を出そうものなら、彼らがダメージを受けるとでも言いたげなのじゃ」

 悲鳴を上げもがき苦しんで助けを求めているが、もがいても拘束は全くほどけないし、俺達も容易に近づけない。
 まあ、今回はそんなことしても戦術は変わらないんだけど。
 別に、魔物たちに直接殴り掛かるわけじゃないし。

 人質がいようとやることはそこまで変わらない。自分たちがしようとしていた戦術をとって、倒すだけ。
 まるでプロレスリングみたいに、囲まれてしまった。もう逃げることはできない
 戦うしかないのだ。

 取り合えず、背中合わせになろう。

「はい」

「わかったのじゃ」

 その言葉通り、俺たちは背後から攻撃されないように互いに背中合わせになりながら攻撃に対応していく。

 魔物たちが、俺達に気づいたのかそれぞれこっちに向かってきた。こっちの作戦は、まずこの攻撃を受けることから始まる。強力な攻撃を受け流すようにしてから──反撃のチャンスをうかがっていこう。

 攻撃を受けて、上手くカウンターして、受けて。

 何度も攻撃を受けていくうちに、対面していた『グバゼバ』の攻撃が単調になっていく。
 何度殴り掛かっても、ダメージを与えられず焦りの感情が出てきたのだろう。単調になり、手数が増える。力任せの攻撃が徐々に増えていき──少しずつではあるがスキが出来て言っているのがわかる。

 こっちもそろそろ反撃に出たい気持ちはあるが、まだ我慢。今回の作戦は、決まればこっちが戦いを有利に進めることができるがそれなりに難易度が高い。それに、手口がばれて警戒されると成功しにくくなってしまう。

 警戒されないように、あくまで慎重に攻撃を受け──チャンスを探っていく。


 攻撃が徐々に大降りになっていき、こっちが数メートルほど後方に離れると、それに食いつくように『グバゼバ』がこっちへと向かってきた。

 しかもさっきまでとは違い、飛びつくような形。

 こんな感じの対面をずっと待っていた。こいつがリスクをかけてこっちへ攻め込んでくるところを。

 これなら、十分に行ける。前がかりになって来た。ここまでのチャンスはそうそうない。こっちも仕掛けに行く。

 体制を低くして、殴り掛かってきた攻撃をかわす。前進する『グバゼバ』にたいして、入れ替わるような形になって俺は『グバゼバ』の後方へ。よし、ここまでは順調。こっちの作戦通り、このままいけば──こっちの作戦は成功。
『グバゼバ』もそれに気づいたのかすぐに振り向こうとするが、そうはさせない。というか、これをずっと待っていた。振り向こうとして、足を動かした次の瞬間俺は飛び上がって、膝裏の前へと移動。

 そして、魔力を剣に全力で込めて膝裏めがけて切りかかる。横一線に薙ぎ払う攻撃。しかし、この形なら俺が切り刻む威力だけでなく、こっちに向かってくる威力も合わせられるのでより強い攻撃が通る。


 カウンターのような形。これなら、相手がこっちに向かってくる力を利用する形だ。
 自分の威力だけなら心もとなかったけど、こっちに向かってくる威力を組み合わせれば──狙い通りに行けそう。


 そして、『グバゼバ』のひざの裏を思いっきり切り刻む。体のつくりは人間とそこまで変わってないはず。あまりに硬い皮膚。ミシミシと悲鳴のように音が鳴るが、それを無視して、少しずつ体を切っていき──やがてブツッと何かが引き裂かれたような音が聞こえた。

 良し、これで作戦は成功。いったん飛び上がって距離を取って離れた。そして、体のバランスを失って倒れこむ『グバゼバ』。
 そう、俺が切り刻んだのは──何を隠そう『グバゼバ』のアキレス腱を切ったのだ。これで、『グバゼバ』はもう立ち上がることができない


 何とか抵抗しようともがいて、懸命に手足をばたつかせているのはわかる。どうすることもできない。まあ、腱を切断された以上体の構造の問題だからどうすることもできないのだが。そして、こいつの肉体は地面に向けて落下。しかし、それだけでは終わらせない。ここは俺たちが反撃できる。数少ないチャンスだからだ。頭上に飛び上がって、下に向かって叩きつけるように剣を振る。これで『グバゼバ』の落下速度は倍近くになった。そして、これで最後。
 腕の方に飛び上がって、受け身をとれないよう手足の動きを阻害。これで、肉体が地面に直撃した時のダメージが魔物に行く。これなら、ダメージを与えられるはず。

 魔物が軽減しているのは、あくまで課金していない武器のダメージ。自分自身の肉体の衝撃が軽減されず、そのままダメージとなるからだ。

 そう。確かに俺たちの攻撃はかなり通りにくい。でも、すべての攻撃が通らない訳じゃない。
 そんな中で俺たちが目をつけたのは、自分自分の力で倒れてもらうこと。そして、自分自身の重みで身体を強打させダメージを与える。

 多少賭けだったけど、何とか狙い通りに事を運ぶことができた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。 ※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

処理中です...