~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

文字の大きさ
上 下
82 / 99

第82話 休息の時間

しおりを挟む

「澄人君がそう言ってくれて、私は嬉しいよ」

 こっちも、加奈が喜んでくれて本当にうれしい。そう考えて、加奈の頭を優しく撫でた。
 加奈は、俺に体を寄せてくる。今日くらいは──加奈に優しく接そう。

 それから、ハイハイのような歩き方で璃緒がやってきた。

「ラブラブそうですね、彼氏さん」

「あー、いや……加奈が求めてるからさ」

「まあ、今日くらいは大切にしてあげてください。彼女さんなんですから」

 からかうような言葉を言う璃緒。でも立ち上がれなくらい消耗していて、いるのがわかる。それでもこの場を和ませようとしてくれているんだな……。周囲を見れて、自分がどうすればいいか理解している。

「ありがとう。でも、璃緒もすごかったよ。前線で、最後まで戦ってくれて。本当にありがとう」

「いえいえ。でも、一番戦っていたのはからすみさんです。私は、ついていくので精一杯でした。からすみさん、さすがです」


「そう言ってくれて、とっても嬉しいよ」

 俺が立ち上がるのもきついくらい消耗していたように、璃緒も同じだったようで、そのままへたりこんで座り込んでしまった。璃緒もまた、限界だったみたいだ。苦笑いをしながら、女の子すわりで言う。

「ちょっと、立てそうにないです。」

「まあ、無理しないでいいよ。ちょっと休もう」

「ありがとうございます。ちょっと、敵を倒したという事もあって気が抜けちゃって」

「まあ、さっきまで極限な状況だったからね」

 璃緒は後ろにある気に身体を預けた。まあ、ゆっくり休んだほうがいいな。そして、もう一度加奈に視線を向ける。

「加奈だって、怖かったでしょう。ゆっくり休んで」

「あ、ありがとう。う、うん……怖かった。怖かった」

 そして加奈が泣き出して、再び俺の胸に顔をうずめる。

 やっぱり、相当怖かったようだ。まだ、加奈も動けなさそう。もうちょっとここにいたほうがいいかな。俺は抱き着いてきた加奈の背中を撫でた後優しく、髪を研ぎほぐした。
 少しでも、加奈の恐怖を和らげられるように。

「加奈、ありがとうね」

 加奈の髪──黒くて、ストレートでしっとりしている。触っていて気持ちいい。きっと俺が知らないところでしっかりと手入れされているのだろう。

 加奈──怖かっただろう。そんな気持ちを磨ぎほぐすように優しく撫でる。
 加奈は、優しい笑みを浮かべてとても嬉しそう。


 そして加奈は、一旦俺の胸から顔を離し、女の子座りでにヘラと笑う。

「こっちこそ助けてくれてありがとう。私もギリギリまで戦っていて、もう動けないや」

「うちもそれわかるわ。うちもダメージがひどくてちょっとフラフラや」


もう動けないのか──それくらい極限状態だったと言う事か。

しかし、ここは仮にもダンジョンの中。このままい続けて大丈夫なのだろうか。普通なら問題ないとは思うが、ここはいわくつきのクソダンジョン。理不尽に敵が来たりする可能性だって、考えられる。

「まあ、わらわなら何とか戦えそうじゃ。立てるようになるまで、ゆっくり休むがよいぞい」

「ありがとう」

ネフィリムは──他と比べて戦闘に加われなかったためか比較的ダメージが少ない。
ゆっくり立ち上がって、周囲に目を光らせていた。

こういう時は、頼りになるな。人の上に立つものとして、周囲をよく見て自分に何ができるかを理解している。

そして、4人で疲れを取りながら、色々と話す。これからの事とか、互いに配信をしていた面白かったこととか。

璃緒からは、面白いトークの仕方や再生数がどうすれば延びるかなどを教えてくれた。
そのたびに、俺も加奈とろこもコクリコクリとうなづいた。

「流石璃緒はんや、参考になるなぁ」

「そんなことないですよ。独自の強みがあって、周囲に埋もれないのってすごいと思いますよ」

「ありがとな。誉め言葉として受け取っておくわぁ」

やっぱり、2人は視聴者数となると真剣になるんだな。まあ、配信数がそのまま収入になるんだから当然だよな。


そして、俺は大分動けるようになってきた。
でも、加奈はまだ、つらそうな表情をしている。

ろこと璃緒は──立てはする感じか。まだ疲弊しているなら、こんな地面より、ベッドで横になったほうが体力も回復するだろうし。気が休まると思う。

「どうする? 誰かの家に帰ってそこで休む?」

「いいかもしれないのじゃ」

「でも、加奈がまだ──」



ろこの言葉に、加奈が困った表情でコクリとうなづく。
まだ歩けなさそうなのは、加奈だけ。それなら──。

「おんぶしようか?」

「え?」

加奈の顔が真っ赤になる。ちょっと、恥ずかしいかな?

「ほら、ここより自分の部屋にいたほうが休めるでしょ? また魔物が来るかもしれないし」

「まあ、そうだけど……」

俺から目をそらして、やっぱり恥ずかしいのか煮え切らない言葉を取っている。けど、出口まで距離はあるから歩く体力があるのか──そう考えていると、璃緒が耳打ちして来た。

「からすみさん、これはどうでしょうか?」

「何?」

そして、周囲に聞こえないようにひそひそと話始める。その内容に、ぎょっとした。

「本気かよ……」

「いいじゃないですか。加奈さん、絶対に喜びますよ」

「ちょっと、恥ずかしいな……」

璃緒から教わったそれは、確かにいいかもしれないが、みんなの前だとさすがに気が引ける。
しかし、加奈はこっちを物欲しそうに見ている。

そして俺は加奈の前に座り込んで──加奈の膝裏と首の裏において、加奈を持ち上げた。
そう、璃緒が提案したのはお姫様抱っこというやつだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu
ファンタジー
 迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

処理中です...