81 / 99
第81話 勝利と喜び
しおりを挟む「わかります。守られっぱなしというのも、気持ちのいいものじゃないですよね」
加奈、声は震えているけど──本心からそう思っているのがわかる。本当に、俺たちと一緒に戦いたいと思っているんだ。
確かに──俺も璃緒と一緒の意見だ。一方的に守られるだけというのは、気持ちがいいものではない。
それもそうだな。
相手が守ってくれるなら、同じだけこっちだって守りたい。それは加奈とろこだって同じという事か。2人は、守られるだけの子供じゃない。俺と対等な立場だという事か。
それに、今までの2人だって勇気を出して戦っていた。心配ない。2人に親指を立てて、言葉を返した。
「わかった。一緒に、八岐大蛇を倒そう」
「澄人君、ありがとう」
「失望はさせへんからな。うちらに任しまかしとき」
強気な表情を見せる2人。不思議とさっきまで感じていた不安は消えていた。
そして、俺たちを援護するように加奈とろこが後方から援護する。
「いいですね。戦いやすいですよ」
「ありがとうな」
2人の援護は──とても正確でこっちが撃ち落としてほしい攻撃やくらったら困るような打撃をすべて撃ち落としてくれている。
まるで、こっちが考えていることをすべて理解しているみたいだ。
そして──。
「これで、しまいやぁぁ」
8本中6本の首を打ち落ちした形となる。残りの首は2本。これならスキだらけだし、十分撃ち落とせる。
「行こう」
「はい、澄人さん」
そして、最後の一撃を与えるために俺と璃緒で突っ込む。突っ込んでいく間も3人が他の首を攻撃しているおかげで首の復活はない。このまま残りの首を打ち落とせば八岐大蛇は復活できなくなる。
」
これは2人では厳しい。ここまでかと考えたその時。
後ろからネフィリムの叫び声が聞こえた。そうか、さっきまでは乱戦気味だったから援護ができなかったが今は違う。
「やらせぬのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「冥府によみがえりし力。黒き波濤を超え、現れよ! ダークネス・フル・バースト」
それこそネフィリム以外に出せる人がいないであろう威力の砲弾。それが八岐大蛇へと突っ込んでいき、大爆発。
ネフィリムの圧倒的な威力。その攻撃に手負いだった八岐大蛇は対抗することができない。
最後の一撃という事だろうか。今までで一番大きい攻撃だ。
それ八岐大蛇が慌てて首を復活させようとしているが、それを加奈とろこ、ネフィリムが的確に攻撃し回復を許さない。
そしてそのまま、難なく最後の首を打ち落とした。
スパッという音とともに、八岐大蛇の頭が地面に落下。
回復することができず、蒸発するように煙を出しながら消滅していく八岐大蛇。
肉体が徐々に崩れていき、そのまま消滅してしまった。
それを確認して、八岐大蛇から視線を外し、加奈とろこの方へとむけた。
何とか終わったか。
「終わったね」
そう呟いたとき加奈とろこ、ネフィリムがこっちに突っ込んできた。予想外の行動に、驚いて一歩引く。
「お、おい。なんだよ」
3人が俺にとびかかって抱き着いてきた。予想外の行動に、俺はそのまま倒れこむ。倒れこんだ俺に、加奈とろこは俺の髪をわしゃわしゃとしながらじゃれついてくる。流石に可愛い女の子2人にそこまでされると、恥ずかしく感じる。でもそんなこと、2人はお構いなしだ。
「澄人君、すごいよ~~」
「澄人はん。めっちゃ尊敬するわぁ~~流石やぁ~~」
「いやいや俺だけじゃないって、みんなのおかげだって」
褒めたたえてくる2人に、冷静に返す。
当然だ。俺一人では、勝つことなんてできなかった。加奈とろこの正確な援護があったから、俺たちは八岐大蛇に近づくことができた。ネフィリムの大砲みたいな1発があったから、八岐大蛇が攻撃できる首が限られるようになった。
璃緒が俺と息を合わせて戦ってくれたから、すべての首を回復される前に切断することができた。
いわば──全員で勝ち取った勝利。しかし、そんなことお構いなしに3人がまだじゃれついてくる。そう、ネフィリムまで。
「水臭いやつじゃ! もっと誇ってよいぞい。一番先頭で戦って、一番傷ついていたのが澄人なのじゃ」
「そうやで。胸張ってええで。うちらだって戦ったけど、一番しんどい思いをしたのは体張って戦ってた澄人はんや。一番うちらをかばってくれて、その代わりに傷ついてもろうて──さすがという感じや」
「私もそう思うよ。いちばん頑張って、痛い思いをしたんだもん。すご過ぎるって思ってるよ」
3人にここまでほめてくれるとは──思わず照れてしまう。そんなことないけどな……。
みんなだって、力を振り絞って、逃げないで頑張ってくれた。それに優劣はつけたくないんだよな。特にかなとろこは、恐怖でいっぱいだっただろう、足震えてたし。それでも最後まで戦ったのは、俺よりもすごいと思う。
「でも、みんな勇気を出してくれて戦ってくれてありがとう。だから、みんなの勝利だこれは。加奈もだよ」
そう言って、加奈の方を向いた。加奈は──優しい笑みを浮かべている。
加奈の優しい笑み。俺、とっても好きなんだよな。加奈の性格が表情に現れてる感じ。
加奈という人物を表現したような表情だと、俺は思ってる。加奈のニッコリとした表情や、強気な表情も好きだけど、優しい笑みを浮かべている加奈が──俺は一番好きだ。
2
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる