68 / 99
第68話 こんどは、ろこの番
しおりを挟む「そうだね。今日はありがとう」
大きく手を振って別れる。加奈は、にっこりと笑っていた。
そんな加奈の姿が、とても眩しく見える。
「加奈」
「何?」
「これからも、加奈の事応援してるからね。今度は、一緒にダンジョン潜ろ」
「も、潜る? 澄人君と?」
「う、うん。どこかで、一緒にコラボとかできたらいいなって思って」
そういえば、加奈と一緒に戦った経験がなかった。
これまでは璃緒やネフィリムと一緒だったけど、ネフィリムだってどこかで分かれる可能性はあるし、璃緒もパーティーの怪我が治れば戻ってしまうだろう。
一人だと、また再生数が落ちてしまう可能性はある。
そんな時、かわいくて人気のある加奈とろこと一緒に配信すれば、息を吹き返す可能性は十分ある。
「そうだね。その時はよろしくね」
そして、俺たちは別れた。後姿を見ながら、加奈に「がんばれ」とエールを送る。
加奈は──優しくて、本当は芯が強い女の子だ。絶対に、またダンジョンに復帰できると思う。
あとはろこだ。璃緒とネフィリムが励まそうとしているみたいだけど、うまくいくといいな。
ろこは──あまり話したことはないけど、元気そうに見えて周囲のことを気にしてそうな気がするんだよな。気丈にふるまってるけど、自分のせいで加奈を怪我させたことを気に病んでると思う。
でも、璃緒もネフィリムがいる。2人とも、実力はもちろん面倒見もよくて困っている人がいたら助け舟を出すタイプだ。
今すぐには無理かもしれないけど、絶対に復帰できると思う。
璃緒視点。
東京駅の丸の内改札でネフィリムさんとろこさんと集合。目的地へ出発。
「道には迷ったが、何とか集合できたのじゃ。じゃあ、一緒に行くのじゃ」
「やっぱ東京駅はダンジョンやな。電話しながら出ないと会える気がせぇへん」
今日は、ネフィリムさんとろこさんと一緒にお出掛け。楽しい時間を過ごして、ろこさん十一日を過ごすのが目的だ。
からすみさんは、幼馴染である加奈さんとデートをしている。
私達と違って、幼馴染なのを生かして子供のころ行っていた場所で過ごしているという。
からすみさんは、ちょっと異性として物足りないものはあるけど、周囲のことを想いやられる性格。きっと、加奈さんを元気づけられるだろう。
私達は、ろこさんと出かけることとなった。もちろんろこさんとは面識が薄く、まだ距離感がある。
だから、一緒にお出かけして美味しいものを食べて、元気出してもらって──気分転換してもらう。
まずは──私の知り合いの歌手のコンサートへいこう。そのために、中央線で飯田橋で降りて東京ドームへ。
道を歩いているときも、会話を楽しむ。沈黙が続くと、距離が縮まらないから。
「たけのこっていうお菓子。とっても美味しいのよ。食べてみて」
「おおっ、サクッとしたビスケットと濃厚なチョコがよく合っているのじゃ」
「わいはキノコ派やから興味あらへんけど、おいしそうに食べとるのは、見ててわかるでぇ。うちも後で布教せんとなー」
あら、宗教戦争になりそうね。まあ、人間食の好みはあるから、あんなのでも美味しそうにありがたがって食べている人はいるのよね。
東京ドームに近づくにつれ、人混みがすごくなる。道に迷わないように、ネフィリムさん、ろこさんの手をぎゅっと握る。
「ありがとなのじゃ」
「あんがとなー」
強く握っているろこさんの手が、震えているのがわかる。元気そうに振舞っていても、まだ怖いという感情は残っているみたい。
何とか、元気を取り戻してあげたい。
入り口で入場券を見せて、ボディーチェックを受けてから会場へ入る。ドームの中への道で、ネフィリムさんが話しかけてくる。
「ところで、璃緒殿はなぜコンサートに行こうと誘ったのじゃ?」
「ええっとですね、2人に会わせたい人がいるんです」
「──なるほどな。そういえば、璃緒はんにまかせっきりだったが、どんなコンサートなん? アイドルかなんかなん?」
「わらわもきになるのじゃ! コンサートってやつか?」
ネフィリムは目を輝かせ、ろこさんはどこか興味ありげに首をかしげる。
「今日行く場所は──コンサートです。これ、見てください」
そう言って、2人に行く予定だった場所とイベントのパンフレットを見せる。
ネフィリムさんは──何のことなのかぴんとかないのだろう。意味が理解できないのかパンフレットをじーっと凝視していた。
「おおっ! アニソン歌手のHIASOBIはんか。実物を見るのは初めてや」
「この黒髪の女の人か──璃緒殿の知り合いなのか?」
「まあ、ちょっとしたですね」
大人気歌手のHIASOBIさん。
「この黒髪の女の人か──璃緒殿の知り合いなのか?」
「まあ、ちょっとしたって感じですね」
大人気歌手のHIASOBIさん。以前から騒がれていたが、最近になって人気が大爆発。
そんな彼女が歌う主題歌のアニメ──それが大ヒットしたんですよね。
アイドルである母を失った主人公が、殺した人物を追ってロボットのパイロットになり、 ロボットに乗って復讐を遂げるというストーリー。
1
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる