64 / 99
第64話 トラウマ
しおりを挟む
流石は、世界の半分を束ねた元魔王なだけはある。色々な人を見てきて、直感で理解しているのだろう。
「2人は、相当トラウマを抱えておる。澄人やわらわたちだけでは限界があるかもしれぬ。最初はよくても徐々にトラウマが戻ってしまうかもしれぬ。じゃから、わらわが手助けをする」
「あ、ありがとう」
ネフィリムはネフィリムで、ちゃんと考えてくれるんだな。まあ、そういう意味での面倒見がよくないと人が付いて行かないのだろう。
「じゃが催眠だって決して万能ではない。例えばじゃ──そちが考えているであろう、わらわと璃緒、この2人でエッチな4対1プレイをしたいとしよう」
「んなこと言った覚えはねーぞ」
「本人が本能的にしたくないと思ったことは決してできないのじゃ。あくまで、本人たちがこうしたいという気持ちがなければ、催眠はうまくいかぬ」
「へ~~。催眠術ショーとかしか知らないんで、参考になります」
「あと、一定の魔力を持った存在に催眠はかけられないのじゃ。例えば璃緒とか──。澄人も抵抗されるとムリなのじゃ。抵抗しようと思うとされてしまう」
つまり、強い魔力を持った人だと抵抗されるってことか。まあ、2人ともトラウマを克服したいという意思はあるから大丈夫だろう。
「ちょっと、時間をかけるぞい」
「わかった」
「2人とも」
「「は、はい」」
加奈とろこは催眠にかかった特有の、光を失ったとろんとした目でネフィリムに言葉を返す。
「ラポール(架け橋)というやつじゃ。まずは、警戒心を解いてから」
ネフィリムの表情、相当真剣モードに入ってるのがわかる。
「大丈夫じゃ──気にすることはない……嫌な命令だったら、拒絶してもよい」
「……はい」
「わかり、ました」
「そち達の怖がっている心を研ぎほぐしたいのじゃ。安心してほしい」
それから優しく、加奈の背中をさする。
「怖いか?」
「……はい」
そう答える加奈。体が震えていて、目からうっすらと涙がこぼれは始めているのがわかる。それだけじゃない。
話しかけてないはずのろこまで、動悸が激しくなり額から汗をにじませている。
ネフィリムは、それに気付いたのだろう。2人の間に入って、2人を自分の身体に寄せる形になる。
「怖い、その感情を少しずつ溶かしていくぞ」
「……はい」
「想像するのじゃ、自分を包んでいる氷のような、冷たいものを」
「冷たい、もの」
「それは、戦いによって刻み付けられた恐怖そのもの」
「あ、あ、あ……っ」
「うっ……うあっ」
それを聞くだけで、2人の表情が引きつった。もう、見ているだけで心が痛くなってくる。俺たちが来る前までに、つらい思いをしたんだな。ネフィリムはその姿にしばし思考をしてからさらに暗示を毛kて行く。
「そんな冷たい氷が、少しづつ溶けていく」
「溶けていく」
「ゆっくりと、溶けていく。体がぽかぽかと暖かくなって──」
加奈の表情が変わっていく。さっきまでのような怯えや恐怖をにじませていた表情から、ほっとしたような、安堵したようなものになっている。そう考えていると、ネフィリムが耳打ちしてくる。
「澄人、加奈殿の手を握ってくれ。ろこ殿は私が握る」
「わ、わかった」
そして、俺は加奈の両手を、ネフィリムはろこの両手を優しく握った。女の子特有の、冷たくて滑らかな手。
「手が暖かいじゃろう?」
「「はい」」
「それは、そちの心を現している物じゃ。じゃから、2人の手が暖かくなっていくごとに、冷え切っていた心も温かくなっていく……」
「「温かく、なっていく」」
「怖さが、なくなっていく」
「「なくなっていく」」
「そうじゃ。心が落ち着いていく。冷たい、自分の心を縛り付けていたものが溶けていって、少しずつ、温かいもので心が癒されていく」
ほんの少しだけ、2人の表情が柔らかくなった。
その後も、冷たくなった2人の心を和らげるかのように暗示をかけていく。20分ほどたった。
「あ、あ──」
加奈の呼吸が、落ち着いてくる。表情も、少しずつではあるが柔らかくなっていっているのがわかる。
ろこも、安堵したかのように大きく危機を吐いて肩を下ろす。
「これでかなりトラウマは和らいだじゃろう。あとはわらわたちと澄人の頑張り次第じゃ」
「わかった」
そして、ネフィリムは2人の催眠を解く。
「3つ数えるとそち達は目を覚ます。すっきりとした、陽気な目覚め。1.2.3」
パンと手を叩くと、2人は目を開けた。
ゆっくりと開けて、ぽかんとした表情。まだ覚醒しきっていないのだろうか、ぼーっとした感じで見つめ合う。
「これから、徐々にそちたちの恐怖を解いていくのじゃ」
「はい」
「ありがとう、ございます」
「例には及ばぬ。これから、サポートしていくぞい。あと澄人と璃緒殿」
「はい」
「何?」
「とりあえず、デートの方よろしくなのじゃ」
璃緒の強気の返事。璃緒なら大丈夫だろう、面倒見が良くて、周囲のことを想いやって。
後は俺。絶対に、加奈を元気にするぞ!
「加奈?」
「す、澄人君」
「絶対、加奈の事元気にして見せるから。よろしくね」
「こっちこそ、よろしく」
加奈の表情が緩んで、安心した。加奈が喜んでいる表情や安心しきっている姿を見ていると、こっちも心が落ち着いてくる。
加奈の喜ぶ表情が見れるように、精一杯尽くしていきたい。
「2人は、相当トラウマを抱えておる。澄人やわらわたちだけでは限界があるかもしれぬ。最初はよくても徐々にトラウマが戻ってしまうかもしれぬ。じゃから、わらわが手助けをする」
「あ、ありがとう」
ネフィリムはネフィリムで、ちゃんと考えてくれるんだな。まあ、そういう意味での面倒見がよくないと人が付いて行かないのだろう。
「じゃが催眠だって決して万能ではない。例えばじゃ──そちが考えているであろう、わらわと璃緒、この2人でエッチな4対1プレイをしたいとしよう」
「んなこと言った覚えはねーぞ」
「本人が本能的にしたくないと思ったことは決してできないのじゃ。あくまで、本人たちがこうしたいという気持ちがなければ、催眠はうまくいかぬ」
「へ~~。催眠術ショーとかしか知らないんで、参考になります」
「あと、一定の魔力を持った存在に催眠はかけられないのじゃ。例えば璃緒とか──。澄人も抵抗されるとムリなのじゃ。抵抗しようと思うとされてしまう」
つまり、強い魔力を持った人だと抵抗されるってことか。まあ、2人ともトラウマを克服したいという意思はあるから大丈夫だろう。
「ちょっと、時間をかけるぞい」
「わかった」
「2人とも」
「「は、はい」」
加奈とろこは催眠にかかった特有の、光を失ったとろんとした目でネフィリムに言葉を返す。
「ラポール(架け橋)というやつじゃ。まずは、警戒心を解いてから」
ネフィリムの表情、相当真剣モードに入ってるのがわかる。
「大丈夫じゃ──気にすることはない……嫌な命令だったら、拒絶してもよい」
「……はい」
「わかり、ました」
「そち達の怖がっている心を研ぎほぐしたいのじゃ。安心してほしい」
それから優しく、加奈の背中をさする。
「怖いか?」
「……はい」
そう答える加奈。体が震えていて、目からうっすらと涙がこぼれは始めているのがわかる。それだけじゃない。
話しかけてないはずのろこまで、動悸が激しくなり額から汗をにじませている。
ネフィリムは、それに気付いたのだろう。2人の間に入って、2人を自分の身体に寄せる形になる。
「怖い、その感情を少しずつ溶かしていくぞ」
「……はい」
「想像するのじゃ、自分を包んでいる氷のような、冷たいものを」
「冷たい、もの」
「それは、戦いによって刻み付けられた恐怖そのもの」
「あ、あ、あ……っ」
「うっ……うあっ」
それを聞くだけで、2人の表情が引きつった。もう、見ているだけで心が痛くなってくる。俺たちが来る前までに、つらい思いをしたんだな。ネフィリムはその姿にしばし思考をしてからさらに暗示を毛kて行く。
「そんな冷たい氷が、少しづつ溶けていく」
「溶けていく」
「ゆっくりと、溶けていく。体がぽかぽかと暖かくなって──」
加奈の表情が変わっていく。さっきまでのような怯えや恐怖をにじませていた表情から、ほっとしたような、安堵したようなものになっている。そう考えていると、ネフィリムが耳打ちしてくる。
「澄人、加奈殿の手を握ってくれ。ろこ殿は私が握る」
「わ、わかった」
そして、俺は加奈の両手を、ネフィリムはろこの両手を優しく握った。女の子特有の、冷たくて滑らかな手。
「手が暖かいじゃろう?」
「「はい」」
「それは、そちの心を現している物じゃ。じゃから、2人の手が暖かくなっていくごとに、冷え切っていた心も温かくなっていく……」
「「温かく、なっていく」」
「怖さが、なくなっていく」
「「なくなっていく」」
「そうじゃ。心が落ち着いていく。冷たい、自分の心を縛り付けていたものが溶けていって、少しずつ、温かいもので心が癒されていく」
ほんの少しだけ、2人の表情が柔らかくなった。
その後も、冷たくなった2人の心を和らげるかのように暗示をかけていく。20分ほどたった。
「あ、あ──」
加奈の呼吸が、落ち着いてくる。表情も、少しずつではあるが柔らかくなっていっているのがわかる。
ろこも、安堵したかのように大きく危機を吐いて肩を下ろす。
「これでかなりトラウマは和らいだじゃろう。あとはわらわたちと澄人の頑張り次第じゃ」
「わかった」
そして、ネフィリムは2人の催眠を解く。
「3つ数えるとそち達は目を覚ます。すっきりとした、陽気な目覚め。1.2.3」
パンと手を叩くと、2人は目を開けた。
ゆっくりと開けて、ぽかんとした表情。まだ覚醒しきっていないのだろうか、ぼーっとした感じで見つめ合う。
「これから、徐々にそちたちの恐怖を解いていくのじゃ」
「はい」
「ありがとう、ございます」
「例には及ばぬ。これから、サポートしていくぞい。あと澄人と璃緒殿」
「はい」
「何?」
「とりあえず、デートの方よろしくなのじゃ」
璃緒の強気の返事。璃緒なら大丈夫だろう、面倒見が良くて、周囲のことを想いやって。
後は俺。絶対に、加奈を元気にするぞ!
「加奈?」
「す、澄人君」
「絶対、加奈の事元気にして見せるから。よろしくね」
「こっちこそ、よろしく」
加奈の表情が緩んで、安心した。加奈が喜んでいる表情や安心しきっている姿を見ていると、こっちも心が落ち着いてくる。
加奈の喜ぶ表情が見れるように、精一杯尽くしていきたい。
3
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる