~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

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第59話 強敵

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“草、あり得る”
“からすみはもうクソダンジョンからは離れられないん運命なんだよ。諦めろ”
“苦行兄貴定期”
“そうそう、腕はあるけどトークとかダメなんだろ。だったら誰にも攻略できないダンジョンを攻略するとか、ネタに走るとか差別化した利する必要があるな”
“もうクソダンジョンでネタに走るしか埋もれない方法はないと思うよ”

 コメントもこんな感じ。なんか、みんなが俺をどう扱っているかよくわかってきた。これからも、そんな使いを受けるんだろうな……。

「確かに、かっこいいヒーローというよりはネタっぽいところがありますよね、からすみさん」

「好きに言ってくれ」

 苦笑いで璃緒は言う。否定はできない──かっこいい英雄なんて似合わないというのは俺自身がよくわかってる。でも、面々と言われるとちょっとへこむ。

 それで慕われるというのならそれで構わない。

 ネフィリムはニコニコしながら俺の頭を優しくなでてくる。その方が、俺らしいってことか。

「異世界でもそんな感じじゃったの。どこか抜けてて、それが親しみやすさを醸し出しているのじゃ」

「ありがとう」

 それから、視線は再びトンネルへ。トンネルの中は真っ暗。ライトなんてものはない。一応俺の魔法で照らすことは出来るがそれでも限界がある。

 何か心霊スポットみたい。ためらってしまうが、先へ進むしかなさそうだ。

 トンネルに入り、俺と璃緒が魔法で明かりを照らす。これで数メートル先までは見えるようになった。
 廃道のような、ひびの入ったコンクリートの道を進んでいく。探知魔法を使ってみたが、特に敵の気配はない。奇襲されることはなさそう。
 真っ暗で、魔法の光だけが頼り。周囲を警戒しながら数分ほど進んでいくとトンネルの出口が見えた。

「あっちなのじゃ」

「行きましょう」


 出口を抜けると、山の中。草が生い茂る山の中腹のような場所に出たのだが──その姿に驚き気を隠せない。

「加奈──いたのか」

 加奈と、黒髪の女の子──確か相方のろこちゃんだっけ。


 2人は──必死に戦っていた。傷だらけの身体。服はぼろぼろで大きく息が上がっている。
 そして、2人と相対しているのは──妖怪?

 10メートルはあろう巨体から発せられる魔力は、一般ダンジョンのラスボス級より一回り多いくらい強力。

 そして一番特徴的なのは、8つの首と尾ひれ。

「あれは──八岐大蛇ですね」

「こっちの世界の魔物か?」

「詳しく言うと、こっちの世界の古来から伝わる物語の魔物ですねネフィリムさん」

「発せられる魔力がすごいのじゃ。相当な強敵なのじゃ」

 ネフィリムの言葉にそっと頷く。今も加奈とろこが必死に戦っているが、かなり分が悪く押されている。

「こいつ──今までで一番強いで」

「うん。ヤバいかも」

 加奈たちも招待されているのか。すごい偶然だ。だがこのままだと敗北は必至。そして、気配に気が付いたのか加奈がこっちを振り向いてきて視線が合った。


「え? 澄人」


「加奈」

 目が合うなり、予想もしなかった出来事に目をお菊開く。
 隣には、相方のろこちゃん。黒髪のセミロング。いつもは関西弁で元気そうにしゃべるかわいらしい女の子。

 ろこは、何が起こったのかわからないのかきょとんと首をかしげている。

「なんや、あんたは確か──今噂になっとるからすみやったな。どしたん?」

 あ、そう言えば2人には言ってなかったっけ。とりあえず、説明しようか。

「ああ、かなとは幼馴染なんだ」

「お、幼馴染だったんですか?」

「わらわも初めて聞いたのじゃ」

 驚きを隠せない2人。まあ、知り合いにそこそこ有名な実況者がいるというのなら納得か。ちなみに、コメントの方もこんな感じだった。

“マジかよ”
“やっぱりハーレムじゃないか”
“すげぇな。底辺からかわいい女の子2人と一緒だなと思ったらこんな幼馴染まで。ラノベの主人公かよ”


「ろこさん。今回も、厨パ狩りですか?」

「はぁ……はぁ……それはもう終わったで。知り合いに嫌がらせするAランクを打ち取ったで」

「そうなんですか? それはすごいですね」

「あ、気にせんでええよ。今回は別パーティーと強敵を狩るから、戦うつもりはないやで」
「そうですよね、2人が厨パ狩りをするときっていつも奇襲して弱点を突いてって感じですよね。こんな堂々としないですよね」

「随分詳しいんやな」

「まあ、話は聞いてますから。だから『エンシェントロマン』時代も対策はしていましたし」

「してたんかい……ってもう突っ込む力もあらへん」

 体力が尽きつつあるのかろこが膝をつく。おふざけはこれまでにして、目の前の敵と戦わないと。

 八岐大蛇はしばらくこっちを見ていたが、やがてすべての顔がこっちを向き始める。俺たちを敵と認識したのだろう。いっせいに口を開けてくる。

 加奈が指を差して叫んだ。

「光線が来る!! 逃げましょう!」


「とにかくパワーがけた違いなのよ。全然攻撃を防げなくて」

「とりあえず、わらわが力を見定める。防ぐのじゃ。澄人たちに、手出しはさせないのじゃ!」

 ネフィリムが先頭に立って、前方に障壁を作る。魔力からして、とても強力そう。でも、八岐大蛇から感じる魔力もかなり強力。防ぎきれるかどうか──。

 しかし、ここで攻撃を防ぎかつ八岐大蛇の力を見定められるチャンスはここしかない。

「みんな、退避する準備はしておいて」

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