~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

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第42話 セラフィールの価値観

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 階段を上がり、ひときわ大きな扉へ。前回はこの扉を開けると、セラフィールがいた。今までの流れからして、ここを開けた先にセラフィールがいるのは間違いない。

 前を歩いていたネフィリムがこっちを振り向いてくる。

「行くよ」

「行くのじゃ」

「どんな敵が待っていようと、私は負けるつもりはありません」

 いよいよセラフィールとの再会。戦いになるのだろうか──どんなことになるかはこっちもわからない。ただ一つ、感情をぶつけ合うことになるのはわかる。

 小細工とかは特にない、セラフィールに思っていたことを、全力でぶつけていこう。
 迷いはなく、さっきと同じ様にコンコンとノックをしてから扉を開ける。

「入りますよ」

「入れ」

 ぼそっと、誰かが低い声で呟く。確実にセラフィールだ。

 ドアが開き、視線を前に向ける。
 目の前に、1人の人物がいた。


 こいつだ、間違いない。
 赤い髪でネフィリムに負けないくらいの美貌とスタイル。疑っているようなジト目でこっちを見つめている。
 セラフィール。ネフィリムに使える、魔王軍NO3というべき存在。

 吊り上がった目つきで、どこかやさぐれた印象。そして、セラフィールはこっちに手を向ける。向けた手が赤く光ると彼女の身長くらいの槍が登場。

 彼女の心情を現しているかのような、とげとげしい形をしている。

「これで20人くらいだな。ダンジョンに俺のところに来たのは」

「そち──久しぶりなのじゃ。みんな、葬ってきたのか?」

「おーネフィリム。なんだよ、勇者なんかと手を組んで──滅ぼしに来たのか? ちなみに、殺してはない。痛めつけたり、女はオークのところにやったよ。それでどうなったかは、察してくれ」


「許せません」

「あ? あいつらは俺のところに来て普通に部下たちの首をはねていったぜ。つまり、殺すつもりで来てるってことだ。だから、相応の対応をさせてもらった。こっちの部下を殺しておいて、痛い思いはしたくないなんて言わせねぇよ。死なないだけありがたいと思えよ!」

 璃緒が強くセラフィールをにらみつけるが、セラフィールは動じない。当然だ、だって──。
 璃緒の肩に手を触れる。

「申し訳ないが、その抗議は意味がない。どんな理由があろうと、どんな悪い奴だろうと命を奪った以上同じことをされる覚悟を持たなければならない。俺達だってそう、だから──ここまでモンスター達を斬ってきた俺たちができるのは、全力でこいつを倒すことだけだ」


 悪いが、ここではセラフィールの言葉が正しい。どんな理由であれ、俺たちはモンスターを殺している。そんな俺たちがいざ強敵と戦って、どんな目に合おうとも文句は言えない。
 それが、命を刈る者の定めなのだ。
 璃緒は覚悟を決めたのだろう。表情がきりっと険しくなった。

「わかりました、それもそうですね。流石死闘と真剣勝負を繰り広げてきたからすみさんです。絶対に勝ちます」

「その意気じゃ。もはやわらわたちに言葉など不要。戦って勝つ。それ以外に出来ることはない」

「セラフィール、強いと聞きましたがオーラでわかります。相当な強敵ですね」



「あたりめぇだ。お前たちの世界を手に入れるため、ネフィリムといた時よりずっと強くなった。あの時のつもりで戦ったら、一瞬で首が飛ぶぞ」

「そこまでして、何が目的だ?」

「お前たちの世界を手に入れる。そして俺たちが支配者となる」


「じゃあ、なおさら生かせるわけにはいかないな。負けるわけにはいかないな」

「この世界は、わらわやそちの価値観とは違う。むやみに人の命を奪うことは許されぬ。きっと溶け込めぬだろう。じゃから、行かせはせん」

 ネフィリムからも、今までにないくらい魔力のオーラを感じる。本気モードという感じだ。

「無理だな」

「理由は聞こう」

「どこの世界でも溶け込めないはぐれ物が、俺のところにどんどんやってくる。それでさ、生きる場所がこのままだと足りなくなることがわかってる。生き残るために、奪わなきゃいけないんだよ」

 なるほどな。あの世界は、ネフィリムがいなくなって連合軍による治安の回復が進んでいるはず。そうなると、普通の世界では生きられないようなはぐれ物は居場所を失ってしまう。

 戦う事しかできなくて、一般社会に溶け込めないタイプ。そんな奴が、こいつのところに迷い込んだという事か。
 いくら上司といっても、部下を食わせられないとこいつ自身も失職されたり反乱されたりする可能性がある。こいつは倫理観が壊れていて自分の目的のために人を殺してもなんとも思わないが、自分を慕ってきて家族と決めたやつには義理が固く息子と呼んで何があっても見捨てない一面もある。

「だからよぉ、負けるわけにはいかねぇんだよ。たとえ相手が、おまえでもなぁ」

「やはり、戦わなければならぬのか」

「そりゃそうだろ。俺が言葉なんかで説得されるような存在だと思っていたのか?」

「そうじゃな。貴様の心に想いを届かせる唯一の手段。それは、全力で戦う事」


「やっぱお前はわかってるな。当たり前だろ! それ以外あるわけない。さあ、行くぞ!!」

 そして、セラフィールが突っ込んできた。死闘が始まる。
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