41 / 99
第41話 配信者としての差
しおりを挟む
怖がっている人もいる。何とか、安心させないと。
「ちょっと、いいかな?」
「なんでしょうか」
とはいえどう言葉を変えようか迷う。ただ「大丈夫」と声をかけても信じてもらえるかどうか。考えていると、ネフィリムか隣にやってきた。
「そちたちを傷つけるつもりはない。何かあったら、協力するぞ。そち達もわらわの仲間じゃからの」
「大丈夫、セラフィールも君たちも殺したりなんかしないから」
2人で、優しい口調で言葉を掛ける。それしかないよな。自分の気持ちを込めて精一杯言おう。うさ耳をつけた女の人が、真剣な表情でじっとこっちを見る。
「信じて、いいんですか?」
「大丈夫! 危害を加えないなら、こっちだって何もしないよ。セラフィールだって別に存在を抹消するためにいくわけじゃない。危害を加えないというのならこっちだって必要以上に戦う理由はないしね」
「そうじゃ。わらわたちは殺すことを目的としているわけではない。現に、こうして大切にしているではないか。対話しているではないか」
女の人達の表情に、安堵が灯る。大丈夫、こっちは戦う事を目的にしてるわけではない。
女の子たちが、きょろきょろと互いに視線を向け、一人がコクリとうなづいた。
「信じます。セラフィール様──勇者様」
「勇者様も、敵ではありましたがどんな人にでも優しい誰からも愛される存在だと知っています。信じていますよ」
「了解です。私達に戦う力はありません。通りたいなら通ってください。あの道を行って、階段を上がればセラフィール様の部屋です」
「ありがとう」
みんな、納得してくれた。複雑な感情なのか、納得しきれていないような表情をしている人もいるけど、最後まで異論は出なかった。まあ、俺が魔王軍にしたことを考えれば無理はない。どんな理由があろうと、俺が魔王軍と戦い彼女たちの居場所を奪ってきたのは事実。
それでも、こうして言葉を返してくれたのはうれしい。今度困ったことがあったら、力になろう。
「礼を言うぞ、大丈夫。罪を犯していない仲間であれば、攻撃する義理はない。これからも、セラフィールのためによろしくなのじゃ」
そして、ネフィリムは彼女たちに手を差し出した。女の子たちがまるで心を開いたかのように握手をする。
「ネフィリム様。ご無事で何よりです、勇者様に敗れて以降私たちの前から消えてしまっていましたのでどうなったか心配でした」
「わらわがくたばるわけがなかろう。配下たちとどのようにして生きていくか、どうすれば生きていけるか考えておったのじゃ」
「ありがとう。ネフィリムが本当は部下想いで優しい性格で本当によかったよ」
そして、俺たちはこの部屋を出た。セラフィールを心から慕っているから、こうして
戦いが終わった後もついてきている。
そんな人に、俺はなりたい。
「澄人、わらわの顔に何かついておるか?」
「あ、大丈夫だよ。何でもないから」
ついついネフィリムの顔を見過ぎてしまった。慌てて前を向く。なんていうか、連合軍の政府の人たちの中や、こっちの世界のゲームでは魔王様といえば恐怖と悪の象徴みたいな感じだけど、ネフィリムは違うというのがわかる。
悪いこともしたけど、自分を慕ってきたやつは(仲間に非道なことをしたやつは別として)全力で大切にしてきた。
敵だったとはいえ、見習えるところは見習ってこれからの役に立てて行きたい。少なくとも世界の半分を支配した器があるのは事実なのだから。
大広間を出てから、赤絨毯が敷かれている階段を登っていく。
上へあがっていくたびに、強い気配を感じるようになる。強力な力。
「やつの気配じゃ──確実上におる」
「戦いなんですね─絶対勝ちます」
「皆さん、ラスボスとこれから決戦です! 頑張りますので、応援よろしくお願いします!!」
璃緒がスマホを広げて、これから決戦だという事を視聴者たちに伝える。まずい……なつかしさに夢中でほとんど視聴者のことを見てなかった。
慌ててコメントを確認。
“さっきから話が読めないんだけど”
“どういうこと??”
“面識があるってこと?”
しまった……視聴者たちは俺が異世界に行ってたことを知らない。どう説明すればいいのか……。どうすればいいか考えていると、隣に璃緒が寄ってきた。
「そういう設定です。これから強い敵と戦いますけど、皆さん応援してくださいね!! 盛り上げるために、演技してたんですよ」
璃緒がそう言って笑顔で手を振る。
“あ! 梨緒ちゃんだ”
“そういう事だったんだ。頑張れよ!!”
“絶対勝ってくれよ、応援してるからな”
視聴者たちも納得してくれた。流石は璃緒。こういうカバーも上手だ。
「私もありますよ、特別な思いがあって感情を込めているうちに配信だってことを忘れちゃうって。互いに助けあいましょ」
「あ、ありがとうございます」
リカバリーもアドリブも本当にうまい。こういう、常に視聴者への配慮ってところはまだまだだな俺。
見習っていかないと──。
“【速報】からすみ、二股してしまう”
“璃緒ちゃんから直々にフォローしてもらうなんて羨ましすぎだろ”
“そこかわれ”
璃緒と絡むと、やはりいろいろ言われるよな。璃緒と組むのに、ミスマッチにならないような存在になりたい。
「ちょっと、いいかな?」
「なんでしょうか」
とはいえどう言葉を変えようか迷う。ただ「大丈夫」と声をかけても信じてもらえるかどうか。考えていると、ネフィリムか隣にやってきた。
「そちたちを傷つけるつもりはない。何かあったら、協力するぞ。そち達もわらわの仲間じゃからの」
「大丈夫、セラフィールも君たちも殺したりなんかしないから」
2人で、優しい口調で言葉を掛ける。それしかないよな。自分の気持ちを込めて精一杯言おう。うさ耳をつけた女の人が、真剣な表情でじっとこっちを見る。
「信じて、いいんですか?」
「大丈夫! 危害を加えないなら、こっちだって何もしないよ。セラフィールだって別に存在を抹消するためにいくわけじゃない。危害を加えないというのならこっちだって必要以上に戦う理由はないしね」
「そうじゃ。わらわたちは殺すことを目的としているわけではない。現に、こうして大切にしているではないか。対話しているではないか」
女の人達の表情に、安堵が灯る。大丈夫、こっちは戦う事を目的にしてるわけではない。
女の子たちが、きょろきょろと互いに視線を向け、一人がコクリとうなづいた。
「信じます。セラフィール様──勇者様」
「勇者様も、敵ではありましたがどんな人にでも優しい誰からも愛される存在だと知っています。信じていますよ」
「了解です。私達に戦う力はありません。通りたいなら通ってください。あの道を行って、階段を上がればセラフィール様の部屋です」
「ありがとう」
みんな、納得してくれた。複雑な感情なのか、納得しきれていないような表情をしている人もいるけど、最後まで異論は出なかった。まあ、俺が魔王軍にしたことを考えれば無理はない。どんな理由があろうと、俺が魔王軍と戦い彼女たちの居場所を奪ってきたのは事実。
それでも、こうして言葉を返してくれたのはうれしい。今度困ったことがあったら、力になろう。
「礼を言うぞ、大丈夫。罪を犯していない仲間であれば、攻撃する義理はない。これからも、セラフィールのためによろしくなのじゃ」
そして、ネフィリムは彼女たちに手を差し出した。女の子たちがまるで心を開いたかのように握手をする。
「ネフィリム様。ご無事で何よりです、勇者様に敗れて以降私たちの前から消えてしまっていましたのでどうなったか心配でした」
「わらわがくたばるわけがなかろう。配下たちとどのようにして生きていくか、どうすれば生きていけるか考えておったのじゃ」
「ありがとう。ネフィリムが本当は部下想いで優しい性格で本当によかったよ」
そして、俺たちはこの部屋を出た。セラフィールを心から慕っているから、こうして
戦いが終わった後もついてきている。
そんな人に、俺はなりたい。
「澄人、わらわの顔に何かついておるか?」
「あ、大丈夫だよ。何でもないから」
ついついネフィリムの顔を見過ぎてしまった。慌てて前を向く。なんていうか、連合軍の政府の人たちの中や、こっちの世界のゲームでは魔王様といえば恐怖と悪の象徴みたいな感じだけど、ネフィリムは違うというのがわかる。
悪いこともしたけど、自分を慕ってきたやつは(仲間に非道なことをしたやつは別として)全力で大切にしてきた。
敵だったとはいえ、見習えるところは見習ってこれからの役に立てて行きたい。少なくとも世界の半分を支配した器があるのは事実なのだから。
大広間を出てから、赤絨毯が敷かれている階段を登っていく。
上へあがっていくたびに、強い気配を感じるようになる。強力な力。
「やつの気配じゃ──確実上におる」
「戦いなんですね─絶対勝ちます」
「皆さん、ラスボスとこれから決戦です! 頑張りますので、応援よろしくお願いします!!」
璃緒がスマホを広げて、これから決戦だという事を視聴者たちに伝える。まずい……なつかしさに夢中でほとんど視聴者のことを見てなかった。
慌ててコメントを確認。
“さっきから話が読めないんだけど”
“どういうこと??”
“面識があるってこと?”
しまった……視聴者たちは俺が異世界に行ってたことを知らない。どう説明すればいいのか……。どうすればいいか考えていると、隣に璃緒が寄ってきた。
「そういう設定です。これから強い敵と戦いますけど、皆さん応援してくださいね!! 盛り上げるために、演技してたんですよ」
璃緒がそう言って笑顔で手を振る。
“あ! 梨緒ちゃんだ”
“そういう事だったんだ。頑張れよ!!”
“絶対勝ってくれよ、応援してるからな”
視聴者たちも納得してくれた。流石は璃緒。こういうカバーも上手だ。
「私もありますよ、特別な思いがあって感情を込めているうちに配信だってことを忘れちゃうって。互いに助けあいましょ」
「あ、ありがとうございます」
リカバリーもアドリブも本当にうまい。こういう、常に視聴者への配慮ってところはまだまだだな俺。
見習っていかないと──。
“【速報】からすみ、二股してしまう”
“璃緒ちゃんから直々にフォローしてもらうなんて羨ましすぎだろ”
“そこかわれ”
璃緒と絡むと、やはりいろいろ言われるよな。璃緒と組むのに、ミスマッチにならないような存在になりたい。
13
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~
mimiaizu
ファンタジー
迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる