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第38話 飛んだぁぁ
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そこは──普通のダンジョンマップ。広葉樹の木が生い茂る森。何十層もの木々が積み重なっているせいか、ほとんど光が差さなくて薄暗い。
他の配信者や剣をもって徘徊している人もいる。どうやら森の中に戻ったらしい。
「多分じゃが、今のは空間のワープじゃ。さっきまでのダンジョンは、特殊な空間だったのじゃろ」
「しかし、これからどうすればいいのでしょうか?」
璃緒の言うとおりだ。何をすればいいか全くわからない。
何か、指標というのがあればいいのだが。クソダンジョンでは無理か。周囲を見回す、配信者がいるという事は、どこかにモンスターがいることだ。
気を引き締めながら周囲に視線を配るが、草木が生い茂る森で視界が効かない。
「とりあえず、歩いてみよう」
「それしかないみたいですね」
璃緒の言葉を皮切りに、あてもなく歩き始める。森の中、時々配信者とすれ違い会話を交わす。
男女4人のパーティーとかち合い、会話する。
「ここ、案内が不親切だし。戦闘バランスや仕様がおかしいし帰ろうかな」
「ですよね。ちなみに違和感があるものとかありませんでしたか?」
「いや──変だなと思ったりはしたんですけど違和感、ちょっとわからないです」
「そうなんですか、健闘を祈ります」
何かヒントになるかなと思ったが、そこまで甘くはないか。そう考えて会釈をすると、配信者の一人、眼鏡をかけた男の人が顔を赤くしてもじもじと璃緒を見ていた。
「あと、璃緒さん──握手してください」
「あ、大丈夫ですよ」
璃緒はにっこりと笑顔を作って、ぎゅっと握手をした。男の人は、デレデレとしていてとても嬉しそう。
ちなみに、髪を結んだ緑の女の人がデレデレしていた男のお尻を蹴っ飛ばしていた。
仲がよさそうなパーティーだな。
それからしばらく歩く。時折オークやコボルトが襲い掛かってくる。少し歩くと、ネフィリムが肩に手を触れてきた。
「なんだ?」
「あれ、何なのじゃ?」
ネフィリムがキョトンと首をかしげる。ああ、知らないのか。俺と璃緒でテントについて説明。
「おお、ゲルとかによく似ているやつじゃな。こっちの世界にも便利なものがあるのじゃな」
「ゲル?」
「遊牧民族の人たちが使うテントみたいなものだ。ネフィリムがいた地域は草原地帯や荒野が多かったからよく知ってるんだ」
「それで、このテントをどうすればいいのじゃ?」
テントの入り口には、誰も入れないようにように鎖が縛り付けてあって、南京錠で固定されている。
「この鍵穴に、鍵を差せばいいってことですか?」
「この鍵でいいのかな」
ここに、鍵を刺せばいいという事だな。ザインから受け取ったカギ。合っているかわからないけど、それ以外手掛かりはないしあそこでカギを手に入れてない一般配信者は絶対にこの中に入れない造りになっている。
「入れてみよう」
ポケットから鍵を取り出す。南京錠のような鍵穴に鍵を差し込む。少しガチャガチャと鍵を回して──鍵は空いた。
「おおっ、そういう造りになっておるのか」
「よかった」
「とりあえず、入ってみましょう」
俺たちはキャンプの中へと入っていった。薄暗くて、ビニール素材でできてるテントの中。
これといって怪しいものはない。
「これ、どうすればいいんですか?」
璃緒の言うとおりだ。明らかにザインを倒した人にしかたどり着けない形になっている。
問題はこれからどうするか。
考えながら中を模索していると、ネフィリムが何かを見つけた。
「これは、なんなのじゃ?」
天井の一番上にある部分に、手の絵。
「わずかですが、魔力を感じます」
そう言って璃緒が軽くそこに手をかざす。すると、ふわっとテントが軽くなるような感触がした。
「なんか、テントがふわっとなった気がします」
今度はネフィリムが手をかざす。スッと、一瞬だけだがテントが浮いた気がした。びっくりしたのか、ネフィリムがかざすのをやめてこっちを見た瞬間、テントとは元に戻る。
「魔力を込めるというのがトリガーなのでしょうか?」
「もしかして飛ぶとか? 手をかざして、わらわたちが魔力をかざすとこのテントが飛ぶ仕掛けなのではないか?」
「まあキャンプが、飛ぶわけないじゃないですか」
「キャンプは、飛ばないから」
ネフィリムの言葉。ありえないことではないが、ちょっと笑ってしまった。コメントを見てみようか、何かヒントがあるかもしれない。
“キャンプが飛ぶわけ”
“※キャンプは飛びません”
“キャンプが飛ぶとかwww”
“キャンプが飛ばねぇよ”
コメントからも、ネフィリムの言葉に対して嘲笑の言葉が多数見受けられる。というかネタにされてる。
「なんじゃこれは。やってみなければわからぬではないか」
ぷんすかとムキになるネフィリム。確かに、そういうことはやって見なければわからない。璃緒に視線を送り、互いに意味を理解したのか2人同時に天井に手をかざした。ネフィリムもこっちを真剣な表情で見て手をかざす。
テントが少しずつ、宙に浮き始めた。
「飛んだ??」
“飛んだあああああああああああああああああああああああああああああ”
他の配信者や剣をもって徘徊している人もいる。どうやら森の中に戻ったらしい。
「多分じゃが、今のは空間のワープじゃ。さっきまでのダンジョンは、特殊な空間だったのじゃろ」
「しかし、これからどうすればいいのでしょうか?」
璃緒の言うとおりだ。何をすればいいか全くわからない。
何か、指標というのがあればいいのだが。クソダンジョンでは無理か。周囲を見回す、配信者がいるという事は、どこかにモンスターがいることだ。
気を引き締めながら周囲に視線を配るが、草木が生い茂る森で視界が効かない。
「とりあえず、歩いてみよう」
「それしかないみたいですね」
璃緒の言葉を皮切りに、あてもなく歩き始める。森の中、時々配信者とすれ違い会話を交わす。
男女4人のパーティーとかち合い、会話する。
「ここ、案内が不親切だし。戦闘バランスや仕様がおかしいし帰ろうかな」
「ですよね。ちなみに違和感があるものとかありませんでしたか?」
「いや──変だなと思ったりはしたんですけど違和感、ちょっとわからないです」
「そうなんですか、健闘を祈ります」
何かヒントになるかなと思ったが、そこまで甘くはないか。そう考えて会釈をすると、配信者の一人、眼鏡をかけた男の人が顔を赤くしてもじもじと璃緒を見ていた。
「あと、璃緒さん──握手してください」
「あ、大丈夫ですよ」
璃緒はにっこりと笑顔を作って、ぎゅっと握手をした。男の人は、デレデレとしていてとても嬉しそう。
ちなみに、髪を結んだ緑の女の人がデレデレしていた男のお尻を蹴っ飛ばしていた。
仲がよさそうなパーティーだな。
それからしばらく歩く。時折オークやコボルトが襲い掛かってくる。少し歩くと、ネフィリムが肩に手を触れてきた。
「なんだ?」
「あれ、何なのじゃ?」
ネフィリムがキョトンと首をかしげる。ああ、知らないのか。俺と璃緒でテントについて説明。
「おお、ゲルとかによく似ているやつじゃな。こっちの世界にも便利なものがあるのじゃな」
「ゲル?」
「遊牧民族の人たちが使うテントみたいなものだ。ネフィリムがいた地域は草原地帯や荒野が多かったからよく知ってるんだ」
「それで、このテントをどうすればいいのじゃ?」
テントの入り口には、誰も入れないようにように鎖が縛り付けてあって、南京錠で固定されている。
「この鍵穴に、鍵を差せばいいってことですか?」
「この鍵でいいのかな」
ここに、鍵を刺せばいいという事だな。ザインから受け取ったカギ。合っているかわからないけど、それ以外手掛かりはないしあそこでカギを手に入れてない一般配信者は絶対にこの中に入れない造りになっている。
「入れてみよう」
ポケットから鍵を取り出す。南京錠のような鍵穴に鍵を差し込む。少しガチャガチャと鍵を回して──鍵は空いた。
「おおっ、そういう造りになっておるのか」
「よかった」
「とりあえず、入ってみましょう」
俺たちはキャンプの中へと入っていった。薄暗くて、ビニール素材でできてるテントの中。
これといって怪しいものはない。
「これ、どうすればいいんですか?」
璃緒の言うとおりだ。明らかにザインを倒した人にしかたどり着けない形になっている。
問題はこれからどうするか。
考えながら中を模索していると、ネフィリムが何かを見つけた。
「これは、なんなのじゃ?」
天井の一番上にある部分に、手の絵。
「わずかですが、魔力を感じます」
そう言って璃緒が軽くそこに手をかざす。すると、ふわっとテントが軽くなるような感触がした。
「なんか、テントがふわっとなった気がします」
今度はネフィリムが手をかざす。スッと、一瞬だけだがテントが浮いた気がした。びっくりしたのか、ネフィリムがかざすのをやめてこっちを見た瞬間、テントとは元に戻る。
「魔力を込めるというのがトリガーなのでしょうか?」
「もしかして飛ぶとか? 手をかざして、わらわたちが魔力をかざすとこのテントが飛ぶ仕掛けなのではないか?」
「まあキャンプが、飛ぶわけないじゃないですか」
「キャンプは、飛ばないから」
ネフィリムの言葉。ありえないことではないが、ちょっと笑ってしまった。コメントを見てみようか、何かヒントがあるかもしれない。
“キャンプが飛ぶわけ”
“※キャンプは飛びません”
“キャンプが飛ぶとかwww”
“キャンプが飛ばねぇよ”
コメントからも、ネフィリムの言葉に対して嘲笑の言葉が多数見受けられる。というかネタにされてる。
「なんじゃこれは。やってみなければわからぬではないか」
ぷんすかとムキになるネフィリム。確かに、そういうことはやって見なければわからない。璃緒に視線を送り、互いに意味を理解したのか2人同時に天井に手をかざした。ネフィリムもこっちを真剣な表情で見て手をかざす。
テントが少しずつ、宙に浮き始めた。
「飛んだ??」
“飛んだあああああああああああああああああああああああああああああ”
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