~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

文字の大きさ
上 下
35 / 99

第35話 ネフィリムらしい攻略

しおりを挟む

 バチバチと火花を散らす2人。その一方で、俺はザインの動きを考えていた。どんな原理なのか、それに対応するにはどうすればいいのか。
 璃緒もかなり疑問を持っているのがわかる。こっちへ近づいて、耳打ちしてきた。

「璃緒、どうしたんだ?」

「これ、チートじゃないですか?」

「え──」

「ちょっと、聞いてみます」

 その言葉は、聞こえていたようだ。ザインがこっちに視線を向けてくる。

「どうしたの? あまりに勝てないから『卑怯だ』とか負け犬みたいなことを言い始めたの?」

「いいえ。まったく悪いとは感じてません。真剣勝負ですし──ただ、種はわかりました」

「どうしてそう感じたの?」

「髪の毛です。私たちよりずっと早く動いているはずなのに、なびいていませんまるでゆっくり動いているかのようでした。時間を増やしているかのかのような感じがします」


 真剣な表情。疑念ではない確信を持っているのがわかる。俺も、戦っていた時の記憶を手繰り寄せた。確かに、なびく髪がゆっくりだった気が。そこまで目が届いてなかった、さすがは璃緒だ。
 その言葉真実の可能性は十分ある。
 あの反射速度、通常の生き物では絶対に不可能なはず。それなら、今まで疑問に思っていたことがすべて解決する。本当なのか──。

 ザインはクククと言わんばかりに笑い声をあげ、顔を上げて右手で抑える。

「すごいね、こんな簡単に種がバレちゃうなんて。実力はあるなって思ってたんだ」

「からすみさんとの戦いの中で、よく2人の戦いを観察して気になったんです。最初はどこか違和感があって、それからずっとあなたを見て理解しました」

「どんなからくりなのじゃ?」

「僕はね──身に着けたんだよ。澄人の負けて以降何度も修行して、身に着けたんだ。自分の1秒を、2秒に変える力をね」

 何だそれ。まさしくチートだ。単純にスピードや反射神経を上げたわけじゃないのか。
 どう対抗すればいいものか。

「ネタバラシ、大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。それだけじゃ50点だし? だって、種がわかっただけでどう止めるかわからないじゃん」

 余裕そうな表情で、自分が負けるなんて微塵も思っているのがわかる。そんな中、ネフィリムは真剣な表情でじっとザインを見つめていた。


「気にするな。貴様を倒す手段は、既についておる」

「ハッタリかな? 急造チームでどう戦うのさ?」

 確かに。何か手でもあるのか──そう考えた瞬間、ネフィリムかこっちに近寄ってひそひそと耳打ちしてきた。

「させるわけないじゃん!!」

 すぐにザインが突っ込んできた。やはり攻撃が早い。すぐに話を聞くのを中止して対応しようとしたその時。

「させません!」

 そう璃緒が叫んで、寸前で攻撃を止めた。すぐにザインは連続攻撃に入り、視界にとらえるのがやっとの攻撃をぎりぎりで防いでいく。だが防戦一方。長くはもたなそう。

「話を聞くのじゃ」

 そして、ネフィリムが作戦を耳打ちしてきた。そうだ、璃緒だってザインを倒すために必死に戦っている。璃緒の頑張りを無駄にするわけにはいかない。


「なるほど、難しいけどやってみるよ」

「澄人なら絶対できるのじゃ。信じておるぞ」

 ネフィリムが自信をもって親指を立ててきた。この作戦、ネフィリムの負担も多いけど──自信に満ちた表情をしている。それ以外策はないのだからやってみよう。

「これで終わりだよ!!」

「きゃぁぁぁぁっ!!」

 防戦一方だった璃緒だが、ザインの手数に抗しきれずとうとう攻撃を受けてしまう。無防備に吹き飛ばされる肉体。

 そこに追い打ちを掛けようとさらに突っ込んでくるザイン。まずい、早く対応しないと。
 ネフィリムと同じタイミングで、俺は右、ネフィリムは左から切りかかる。

「甘いよ」

 同時だった攻撃を素早い身のこなしで対応される。それは織り込み済み、防がれてもさらに攻撃を仕掛けていく。

「どうしたの? 恋人同士なのにバラバラじゃない?」

「黙れ」

「そうなのじゃ。これから強くなるのじゃ!」

 本来、連携というものな長い時間かけて経験を積んで行うもの。即席でやったところでどうしたってスキができる。それなら、スキができないくらい全力で突っ込む。互いにずっと敵同士だったが故に攻撃パターンが読める。もちろんネフィリムもだってわかっている。これがネフィリムが提唱した策だった。さっき、ネフィリムが耳打ちした言葉。

「そちは、わらわの攻撃パターン理解してるじゃろ?」

「ああ」

「わらわもじゃ。じゃから、同時に攻撃を仕掛ける。全力で戦うぞ」

 互いに全力でぶつかっていく。動きは──わかってるだろ。荒いけど、なんともネフィリムらしい。左右同時にザインに攻撃を仕掛けるが、本当にネフィリムの攻撃パターンがわかる。俺はそれにかぶらないように攻撃を仕掛けていく。


「ふ~~ん、やるね。それなら、これはどう?」

 そして、ザインはネフィリムの攻撃を受けた直後体を回転させ、俺に向かって思いっきり剣を振り下ろしてきた。さっきまでの速さを意識した攻撃とは違う力任せの攻撃。
 しかし、突然の戦闘スタイルの変化に戸惑い威力を殺しきれなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...