~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

文字の大きさ
上 下
34 / 99

第34話 強敵

しおりを挟む
 その瞬間、後ろからただならぬ気配を感じ、慌てて後方に身を投げた。

 すぐに身をひるがえすと、俺がいた場所に向かって魔剣を薙ぎ払っているザインの姿。
 そして、ネフィリムが剣から光を出して対応しているのが見える。

 後一歩遅かったら、俺はあの剣に背中から真っ二つにされていたのか。ネフィリムのおかげで、無事だった。

「なんだぁ~~あとちょっとだったのに、惜しかったな」

「からすみさんを、犠牲になんかさせません!!」

 残念そうに舌を出してせせら笑うザインを、ネフィリムと璃緒が攻撃していく。2対1本来は2人が優位なはずだが、一緒に行動して間もたってないせいでコンビネーションがあまりとれてない。

 2人で攻め込もうとすると、璃緒が遠慮がちになってしまい威力が半減してしまう。

「ほらほらどうしたの? 2人がかりで来ればいいじゃん」

 俺もネフィリムと戦ってきてはいるがいずれも格下のモンスターばかりだった。同格ともいえる相手だとこっちの余裕がなくなる。その状態で俺も突っ込んでいくのは同士討ちのリスクが高い。

 ネフィリムは何度も光を伴った遠距離攻撃を織り交ぜて戦うが、ザインは涼しそうな表情で対応していく。なんというか、動きが早い。


「ホラホラホラホラ──どうしたの? 僕の上司だったのに、何で苦戦してるの?」

「うるさいのじゃ。強くなったな貴様──」

 今度はネフィリムが一気に反撃に出る。かなり苦しそうな表情、予想外だったようだ。

 一瞬で2人から距離をとると、魔剣を思いっきり構える。その瞬間、魔剣が紫色に光りだしした。

「さあ──これをしのぎ切れるかな?」

「来るのじゃ!!」

「虐爆波 ──ディザスターライジング」

 魔剣から、紫色の雷がこっちに向かってきた。魔力が、今まで感じたことがないくらい大きい。

「させません」

 璃緒が左手をかざして2人の前に障壁を作り出す。ピンク色の、ハートの形をした強固な擁壁。俺も配信で見たこともある。パーティー仲間を何度も救ってきた、強力な障壁。

 しかし、ザインは余裕そうな表情を崩さない。

「その程度で、僕の攻撃を防げると思わないでよ!」


 そして、紫の雷は璃緒の障壁に直撃。ドン!! と大きな音がして、障壁に少しずつひびが入っていく。やはり、璃緒の障壁では防げないのか。
 あくまで璃緒が得意なのは接近戦。こういった術式は仲間にやってもらっていたことが多く、こういった援護の実力は中堅上位レベル。ザインの攻撃を防ぐには力不足みたいだ。

「強い──」

「わらわがやるのじゃ!」

 ネフィリムが手をかざすと、ネフィリムから巨大な魔力が出現。灰色の魔力の塊がネフィリムの手を包む。

 大きな音とともに璃緒の障壁が完全にガラスが割れたかのように崩壊。ザインの術式がこっちに襲ってくる。それと同時にネフィリムの魔力の塊がザインの攻撃と衝突していく。

 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 大きな爆発音がこの場を包む。衝突した攻撃の威力は互角といったといった所か──両者の術式が消え、再び相対。

「流石は魔王様、僕の術式を打ち消すとは」

「攻撃を防ぐというのは、わらわの価値観と合わぬ。互いに全力でぶつかり合ってこそ、そちのことがわかるというものじゃ」

「そうだね。互いの力のぶつかり合い。僕も大好きだよ」

 ザインがどこか嬉しそうな表情をしている。戦うことを恐れていない、むしろ全力を出しても問題ない相手と考えているのだろうか。そして、今度はこっちに向かってきた。

「今度は俺が対応する」

 俺が2人の前に立ちはだかり、攻撃を防ぐ。俺が攻撃を受けると、ザインは一歩引いた後に魔剣を横一線に薙ぎ払ってきた。

 俺はそれを──前傾を深くしてかいくぐる。まるで地を這うようなダッシュ。

「やるね」

「当然だ」

 カウンターを仕掛けようとした俺を、ゼインはさらに剣を振り下ろして対応。

「まずいのじゃ」

「上から、真っ二つにしてやるよ!!」

「大丈夫。お前ならそう来ると思ってたから」

 こいつの攻撃パターンは、何度も戦ってきてるからなんとなくわかる。強さは変わっても、人の思考回路は変わらない。

 俺は最低限のサイドステップで攻撃をかわす。あまりにぎりぎりだったせいでシャツの裾が切れたくらいだ。ただ防戦一方だったわけではない。こうして、反撃のチャンスをうかがっていたのだ。


「ウソ──」

 奇襲を空振りさせたザインにスキができた。前がかりになって、十分に反撃ができる。
 これで勝負は決まりだ、がら空きとなったザインの胸に剣を突き刺す。

 ──はずだった瞬間、標的であるザインの姿が消えた。

 まただ──どうして通常では不可能な局面で姿が消える? そして、俺の脳裏に「キケン、キケン」の文字。

「危ない!!」

 璃緒の叫びに慌てて横に身を投げた。その瞬間、俺がいた場所をザインの剣筋が横切った。璃緒のおかげた。一瞬でも回避が遅れていたら、俺の身体は真っ二つにされていた。

「後一歩だったんだけどなぁ。その女を真っ二つにしようかなぁ~~」

「やらせはせぬ。その瞬間、わらわの術式でこの場ごと灰にしてやるのじゃ」


俺は慌てて振り返ってザインに目を向ける。またしても余裕な表情、そして──人間ではありあえない動きをしてくる。あの隙を見せた状態から回避してカウンター。

以前戦った時は、あんなことはしてこなかった。

「それは困るな。まあ、君を怒らせるようなことはしたくないし真正面から戦うよ。それでも、負けるつもりはないからね」

「望むところなのじゃ」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

処理中です...