31 / 99
第31話 ネタバレ
しおりを挟むやはりNPCだった。璃緒は苦笑いを浮かべていた。オウム返しばかり……している。すごいシュールだよな。
とはいえ、どこに行くかが決まったのは幸いだ。
「評判で文句言われてるダンジョンあるある。全体的に配慮が足りない。難易度抜きにして、何をすればいいかがわからなかったり、配慮が足りない傾向があるのよね」
璃緒は、配信者としていろんなダンジョンを歩いてきてそう言った経験が豊富なのだろう。とりあえず、手掛かりがそこにしかない以上行くしかない。あるだけまだマシだったというべきか。
そして、俺たちはダンジョンへと進んでいった。
森を超え、レーロル洞窟と飛ばれる洞窟へ。薄暗い洞窟の中、前方を見るとほかの配信者もいる。
「ここ、魔物がいるぞ」
「気配がするのじゃ」
その言葉に雰囲気がピリッとなる。
証拠に時折、弱い魔物と遭遇。3人で倒していく。ゴブリンとかコボルトが数匹。
薄暗いダンジョンを進みながら、ネフィリムが話しかけてきた。
「予想通りじゃ、この世界になじめなそうなやつらがいっぱいおる」
「確かに、ゴブリンもコボルトも狂暴だったり素行が悪かったりでまともに社会に溶け込めなさそうだよな」
「ああ」
向こうの世界で戦ってきたが、コボルトは村を襲って家畜、場合によっては人食いまでする凶暴な奴らだし、ゴブリンは暗いところにいて集団で襲い掛かってくる。どれだけ教育してもそれが治ることはなかったな。別の世界で、生かしておくしかないのか。難しい問題だ。そんなことを考えていると、璃緒がそっと手を挙げてきた。
「あの……質問いいですか?」
「何?」
「さっきから話の内容がつかめないんですけど、どういったことを話しているんですか?」
璃緒がきょとんとしてこっちを向いてくる。そうだ、璃緒は俺とネフィリム、異世界のことを知らない。
しまった、気に留めてなかった。えーと、配信は切ったままだったな。
う~~ん、どうやってはなそうか。考えていると、ネフィリムがご機嫌そうに話しかけてきた。とりあえず、配信切っといた方がいいか。
「璃緒、一旦配信切って。大事な話だから」
「わかりました」
「実は、わらわと澄人はな~~」
ネフィリムが、自慢げに話し始めた。
自分と俺の関係、そして異世界のことも……全部言っちゃったよ。配信切っていたのが幸いだったものの、璃緒は驚いて口元を手で押さえて言葉を失っていた。
そりゃあ驚くよね……。そして、数十秒ほどたつと正気に戻ったのか言葉を返し始めた。
「そうだったんですね……2人とも、戦い方を見て芯の強さを感じていました。私達のような見せるものではなく、絶対に負けない戦いをしているなって思ってました。本当に驚いてます。そんな戦いを、していらしたんですね」
「ああ。でも、そこまでわかるの?」
「私は、習い事でサッカーとかスポーツをやっていたからわかります。相手の真剣さの具合とか、必死に戦ってるんだなとか。お2人からも、真剣な時間を過ごしてきたもの特有の顔つきやそぶりを感じていました」
「璃緒殿は話が早くて助かるのじゃ」
「うん。どう説明しようか悩んじゃったけど、拍子抜けしちゃった」
「まあ、こんなダンジョンが現れたこと自体それ以前から見れば不思議ですし──大丈夫です」
とりあえず、信じてくれてよかった。それから、話はダンジョンの魔物たちの話題に戻る。
「まともに教育されずに育って、善悪という概念がないとうか……自分の利益のためなら周囲を裏切る、決まりを破る。平気で暴力に走る。これで一般社会になじめると思うか?」
「まあ、溶け込めないな」
多分、どこの世界に行っても社会に溶け込めなくてはじかれると思う。そんな奴に居場所はないだろうし、もし充てるとしたらそれは俺たちの世界で言う反社のような存在だろう。
「そんな奴に、教育をしたり役割を与えたりするのも役割じゃった。そういうやつらはどこへ行っても同じ目に合うからのう」
「流石は周囲をまとめていた人って感じです。面倒見が良くて、自分が去った後のことも考えている。だから、ネフィリムさんは慕われているんだと思います」
「ありがとうなのじゃ」
魔王は魔王で、大変だったんだな。考えてみればそんな奴らばかりネフィリムみたいなところに来たんだよな。
一見明るそうに見えるけど苦労人なんだな。なんだか、ネフィリムに対する考えが変わった。
「世話をするのも、大変に困っとるじゃろうが」
「そろそろ、配信しなくていいのか? あまり配信を止めると、お楽しみをしていたとかあらぬ疑いを掛けられるぞい」
「確かに、お楽しみはともかくあまり配信を止めると心配されますね」
そして、璃緒は配信を再開。俺も慌てて配信を入れた。
「ごめんね~~機械が調子悪かったみたい。何とか調子治った」
「すいません、機械の調子が悪かったみたいで、再開します」
コメントからは、同情の声。
そして、俺たちはさらにダンジョンを進んでいく。ネフィリムにもネフィリムの苦労があったんだな。
なんというか、彼女を見直した。いいところあるじゃん。
12
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる