上 下
24 / 99

第24話 まさかの、初デート?

しおりを挟む
「あ、あ、ありがとうございます。これからよろしくお願いいたします!!」

 璃緒の表情がはっと明るくなって、頭を下げてきた。礼儀正しくて、腰が低い人なんだな。ここまで人気なら、もっと偉そうにしてもいいのに。まあ、そういう所が彼女の魅力なんだろうけど。

 再び視線が合う。
 幸せそうな、喜びを感じる表情の璃緒ちゃん。それを見ていると、こっちまで幸せな子持ちになってくる。本当にかわいいなぁ。さすがはNo1配信者。

 そして、今度直接会ってお話することとなった。流石に公開するわけにはいかないから璃緒ちゃんが日にちと場所をメモで渡してきたのだが。

「色々今後について話しましょう。会えるなんてとても嬉しいです」

「こちらこそ、こんな私ですが──よろしくお願います」

 さすがにずっと見つめられると、こっちも照れてしまう。それもうっとりとした表情で。

 そして、俺は璃緒の手をぎゅっと握った。冷たくて、柔らかくて滑らか。ずっと触っていたいと思えるものだ。

“爆発汁”
“彼女(2人目)おめでとう”
“堕 ち た な ”
“まさか、あの璃緒ちゃんを惚れさせるとは──”

 コメントがすごいことになってる。ないから。俺に彼女なんて。ネタで言ってるんだろう。
 今まで生きてきて──それは重々承知だ。これだって、璃緒のパーティーが復帰するまでのつなぎだし。

 そんなことを考えていると、ネフィリムが思いっきり背中を叩いてきた。

「不愉快、帰るのじゃ!!」

 いてて……結構強く叩いたせいで背中がひりひりする。なんなんだこいつ。
 どこか不機嫌そう。

「このわからずや! すけこまし! ハーレム男!」

 何で怒ってるんだ? 首をかしげて、しばし考えるが全然わからない。

 腕を組んで考えていると、ネフィリムはやれやれといった感じであきれ果ててしまった

「もう、期待するだけ無駄じゃな」

「そうだな」

 とはいえ、色々消耗したしいったん帰りたいのも事実。璃緒には悪いけど、こっちはここまでにしようか。

「まあ、今度はよろしくね。こっちはいったん戻るよ」

「あ、それなんですけどレポートが必要みたいです」

「何それ?」

「規約に細かく書かれてるんですけど、設定画面に入ってスタートボタンを押して出てくるレポートを押さないとまたあのチュートリアルからやり直しなんです」

「そうなのか」


 さらに璃緒がSNSを見せてくると、この仕様を知らないでもう一度チュートリアルからやり直す羽目になった人の叫びがタイムラインにたくさん載っていた。

“レポートとか、昔のゲームかよ”
“必要ならどこかで説明しとけよ、だからクソダンジョンなんだよ”

 やはり不評になってる。非難の嵐、これはクソダンジョン確定だな。
 とりあえず、レポートだ。宙に設定画面を出す。一番下にレポートと書いてある。
 このレポートをする必要があるということか。
 なんか、昔のゲームみたいだな。とりあえず、レポートの場所を押す。

 どこかのRPGみたいだ。そして、画面に文字が現れた。

 今までの活躍を、レポートに書き込みますか?

 ▷はい

 いいえ


 はいを選択。

 レポートに書き込んでいます。まだ退室しないでください。

 そして数秒後、効果音とともにレポートが書き終わった。

 からすみと璃緒はレポートにしっかり書き写した。



 これで終わりだ。璃緒と向かい合う。

「今日はこれでお別れですね、後日──それとコラボ配信の時はよろしくお願いします」

「こっちこそ、役に立てるかわからないけどよろしくね」

 互いに握手をしてからこの場を去る。
 改めて自分の部屋に戻った。時間は夕方で、窓から陽光が部屋に入り込んでいる。

 確認したら昨日から再生数も登録者数も伸びまくった──。これも璃緒と出会ったおかげなのだろう。
 璃緒のおかげで、確実に収益化ラインまでは行けただろう。もしかしたら──専業で稼げるくらい行ける可能性だってある。

 それもこれも、璃緒のおかげだ。今度会った時は、そのお礼もしなきゃな。
 果たして、俺なんかに璃緒を楽しませることができるかどうか。ベッドに座って考えていると、ネフィリムが不満そうに顔をぷくっと膨らませてこっちを見ている。

「な、なんだよ」

 思わず後ずさりすると、下がった分だけネフィリムは前かがみの姿勢でこっちに向かってくる。

「わらわというものがありながら、これはどういう事じゃ!!」

「どういうことって、あの流れからして仕方ないだろ……」

 意外と怒ってるのに驚く。璃緒には世話になったしコラボを組むならあらかじめ色々話したいし──親睦を深めるためにも実際にあって話をしたい。

「別に、おまえは関係ないだろ。付き合ってるわけでもないんだし」

 俺だって遊びでやってるわけじゃない。必要なことだと思い判断している。だからネフィリムとて引くわけにはいかなかった。ネフィリムは両手を強く握って体をプルプルと振るわせる。そして、地団駄を踏んで後ろを向いた。

「浮気者めが、勝手にしろ!」

 そしてこの場から去ってしまった。悪いことしちゃったかな? でもこっちだって引くわけにもいかなかったし──今度会った時は謝るか。

 なんにせよ──実質的なデート、生まれて初めてだ。
 俺にとっては初めての経験だが、璃緒はあの性格とルックスからして交際経験がないはずがない。
 それでも絶対に璃緒を幻滅させるわけにはいかない。しっかりと、彼女を喜ばせないと。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。 ※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

処理中です...