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第18話 ジャングルの中、ネフィリムの魅力
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確かにこんな感じだったな。
俺に、近寄りがたい存在とか、孤高な人間を演じることなんてできない。
勇者としてどれだけ名を上げていっても周囲の仲間たちや、出会った人たちと接するのをやめなかった。
時には子供たちが馬乗りになってじゃれあってきたり、誰でも入るようなバーでいろいろな人と接したり意気揚々としたりしていたなあ。
打ち解けあって、ふざけあって。まるで友人であるかのようだった。
俺も、変に謙遜されて神格化されたりするよりは友達みたいに気軽に接してくれた方がいいのも事実。
俺に、英雄なんて言葉は似合わん。
「わかったよ。尊敬されるのは性に合わん」
「そうじゃの。そっちの方が、そちの魅力がでて親しまれるぞい」
ネフィリムの通りだな。ただ変な噂が流れないよう気を付けないと。
でも、満面の笑みを浮かべていてどこかうれしそう。
「それでは、いくぞい」
「そうだな」
そして、俺たちは森の中へと進んでいった。
それ以外に俺たちができることはない。ネフィリムと一緒に、獣道を進み始めていいく。
「ギャァァァァァァァ──!!」
背後から奇襲してきたコボルト数匹を、一撃で真っ二つにする。
「よく奇襲してくるのう」
「まあ、こんな視界が悪い森だ。それが一番勝率が高いんだろうな」
熱帯雨林のような、何十層もの植物が折り重なるジャングル。
昼間だというのに森林によって日光が遮られ、まるで夜になっているかのようだ。
視界は数メートル。木の陰に誰かが隠れていても気が付かない。神経を研ぎ澄まして、気配を探る。
「怖いのじゃ~~」
「なんだよいきなり」
ネフィリムが、ぶりっ子みたいな表情で俺に寄ってくる。
それから、俺の腕に抱きついてきた。大きくて、柔らかい胸を押し付けてきてドキッとしてしまう。
ネフィリム、元の世界でも自分のスタイルやルックスの良さは理解していた。
有力な亜人の部族相手にわざと前かがみになって胸元を見せつけてきたり、好意的に抱き着いて虜にしてきたり。
流石は魔王というべきか、計算高さもある。わかっているけど、こうして抱きつかれおっぱいを押し付けてくるとドキッとしてしまう。
香水でもつけているのか、なびく髪から柑橘系のような甘酸っぱいにおいがする。
鼻腔をくすぐってきて、とても魅力的。彼女のことを知らなければ、この美貌とアタックに魅了されてしまうかもしれない。
ネフィリムはこっちを見て、ニコッと笑う。
「まったく、鼻の下を伸ばして──上の口は強がっていても、下半身は正直だからのう。男というものは」
「しょうがないだろ。お前はそれくらい魅力的なんだから」
「まあ、そちも男なのじゃ。何かあったらわらわは受け入れるぞい」
まあ、ネフィリムはたくさんの人を見てきた。中には、異性を自分の欲望の捌け口としか思わないやつだっている人だっている。
俺だって、ネフィリムのことを異性として素敵な人だとは思っている。でも、今まで敵同士だった人と交わるというのは気が引ける。
そんなことは、することができない。
「今はできないから──ダンジョン攻略に集中しよ」
「うん。そちらしいのじゃ」
ネフィリムは、予想していたように笑顔で答える。
俺のことをわかっているなら、予想できたよな。
そして、さらに進んでいるとネフィリムの表情が真剣なものになる。理由は簡単、俺もそれはわかる。薄暗い森、真剣モードに変わる。
「あれ、魔物ではないか?」
「ああ、そうだな」
ネフィリムが肩を叩いてくる。カサカサとした音、草に隠れているが気配からわかる。
「多分魔物だ」
腰を落とし、物陰から観察する。首から上がない、ぼろぼろの鎧を着た騎士の姿。
デュラハンだ。Bクラスの、中堅上位ともいえる魔物。
それなりに強く、一人で戦うには厄介だ。
「わらわが相手になろうか?」
「いい」
ネフィリムが前に出ようとするが、俺が手を置いて止める。
見たところ、あいつの周りに数匹。これなら一人でも戦える。一人でやって、みんなに実力を見せたいしね。
そしてデュラハンが背後を向いた次の瞬間──。
大きく接近して、思いっきり切りかかった。
デュラハンはそれに気づいて振り向こうとするが、時すでに遅し。振り向いた瞬間に、剣で胴体を寸断。
他のデュラハンはそれに気づいてこっちに向かて突っ込んできた。しかし、俺からすればスローモーションにしか見えない。
攻撃をかわして、デュラハンの肩部分に一撃
切り裂いたはずなのに、当てってない? 当たった感触が全くないのだ。
“何あれ、デュラハンにあんな力あったっけ?”
“ねぇよ。特殊な力を持っているのか?”
コメントからも疑問の声が──考えているうちにデュラハンが突っ込んできた。幸い突っ込んでくるだけだからかわして無防備となったところにカウンターを食らわせればいいだけだから問題ないが──何度か当たったのに感触もなく素通りするというのが多発。
何か当たり判定がおかしい気がする。具体的に言うと、腕や肩の部分を切ってもまったく感触がなく、お腹あたりに攻撃を食らえると、敵を切り刻んだ感触がある。
事実、胴体を切ったデュラハンは肉体が真っ二つに切断されてその場に倒れこんだのだ。
「やはりわらわが」
「いい」
一歩前に出たネフィリムを俺が止める。大丈夫、問題ないから。
俺に、近寄りがたい存在とか、孤高な人間を演じることなんてできない。
勇者としてどれだけ名を上げていっても周囲の仲間たちや、出会った人たちと接するのをやめなかった。
時には子供たちが馬乗りになってじゃれあってきたり、誰でも入るようなバーでいろいろな人と接したり意気揚々としたりしていたなあ。
打ち解けあって、ふざけあって。まるで友人であるかのようだった。
俺も、変に謙遜されて神格化されたりするよりは友達みたいに気軽に接してくれた方がいいのも事実。
俺に、英雄なんて言葉は似合わん。
「わかったよ。尊敬されるのは性に合わん」
「そうじゃの。そっちの方が、そちの魅力がでて親しまれるぞい」
ネフィリムの通りだな。ただ変な噂が流れないよう気を付けないと。
でも、満面の笑みを浮かべていてどこかうれしそう。
「それでは、いくぞい」
「そうだな」
そして、俺たちは森の中へと進んでいった。
それ以外に俺たちができることはない。ネフィリムと一緒に、獣道を進み始めていいく。
「ギャァァァァァァァ──!!」
背後から奇襲してきたコボルト数匹を、一撃で真っ二つにする。
「よく奇襲してくるのう」
「まあ、こんな視界が悪い森だ。それが一番勝率が高いんだろうな」
熱帯雨林のような、何十層もの植物が折り重なるジャングル。
昼間だというのに森林によって日光が遮られ、まるで夜になっているかのようだ。
視界は数メートル。木の陰に誰かが隠れていても気が付かない。神経を研ぎ澄まして、気配を探る。
「怖いのじゃ~~」
「なんだよいきなり」
ネフィリムが、ぶりっ子みたいな表情で俺に寄ってくる。
それから、俺の腕に抱きついてきた。大きくて、柔らかい胸を押し付けてきてドキッとしてしまう。
ネフィリム、元の世界でも自分のスタイルやルックスの良さは理解していた。
有力な亜人の部族相手にわざと前かがみになって胸元を見せつけてきたり、好意的に抱き着いて虜にしてきたり。
流石は魔王というべきか、計算高さもある。わかっているけど、こうして抱きつかれおっぱいを押し付けてくるとドキッとしてしまう。
香水でもつけているのか、なびく髪から柑橘系のような甘酸っぱいにおいがする。
鼻腔をくすぐってきて、とても魅力的。彼女のことを知らなければ、この美貌とアタックに魅了されてしまうかもしれない。
ネフィリムはこっちを見て、ニコッと笑う。
「まったく、鼻の下を伸ばして──上の口は強がっていても、下半身は正直だからのう。男というものは」
「しょうがないだろ。お前はそれくらい魅力的なんだから」
「まあ、そちも男なのじゃ。何かあったらわらわは受け入れるぞい」
まあ、ネフィリムはたくさんの人を見てきた。中には、異性を自分の欲望の捌け口としか思わないやつだっている人だっている。
俺だって、ネフィリムのことを異性として素敵な人だとは思っている。でも、今まで敵同士だった人と交わるというのは気が引ける。
そんなことは、することができない。
「今はできないから──ダンジョン攻略に集中しよ」
「うん。そちらしいのじゃ」
ネフィリムは、予想していたように笑顔で答える。
俺のことをわかっているなら、予想できたよな。
そして、さらに進んでいるとネフィリムの表情が真剣なものになる。理由は簡単、俺もそれはわかる。薄暗い森、真剣モードに変わる。
「あれ、魔物ではないか?」
「ああ、そうだな」
ネフィリムが肩を叩いてくる。カサカサとした音、草に隠れているが気配からわかる。
「多分魔物だ」
腰を落とし、物陰から観察する。首から上がない、ぼろぼろの鎧を着た騎士の姿。
デュラハンだ。Bクラスの、中堅上位ともいえる魔物。
それなりに強く、一人で戦うには厄介だ。
「わらわが相手になろうか?」
「いい」
ネフィリムが前に出ようとするが、俺が手を置いて止める。
見たところ、あいつの周りに数匹。これなら一人でも戦える。一人でやって、みんなに実力を見せたいしね。
そしてデュラハンが背後を向いた次の瞬間──。
大きく接近して、思いっきり切りかかった。
デュラハンはそれに気づいて振り向こうとするが、時すでに遅し。振り向いた瞬間に、剣で胴体を寸断。
他のデュラハンはそれに気づいてこっちに向かて突っ込んできた。しかし、俺からすればスローモーションにしか見えない。
攻撃をかわして、デュラハンの肩部分に一撃
切り裂いたはずなのに、当てってない? 当たった感触が全くないのだ。
“何あれ、デュラハンにあんな力あったっけ?”
“ねぇよ。特殊な力を持っているのか?”
コメントからも疑問の声が──考えているうちにデュラハンが突っ込んできた。幸い突っ込んでくるだけだからかわして無防備となったところにカウンターを食らわせればいいだけだから問題ないが──何度か当たったのに感触もなく素通りするというのが多発。
何か当たり判定がおかしい気がする。具体的に言うと、腕や肩の部分を切ってもまったく感触がなく、お腹あたりに攻撃を食らえると、敵を切り刻んだ感触がある。
事実、胴体を切ったデュラハンは肉体が真っ二つに切断されてその場に倒れこんだのだ。
「やはりわらわが」
「いい」
一歩前に出たネフィリムを俺が止める。大丈夫、問題ないから。
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