~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

文字の大きさ
上 下
18 / 99

第18話 ジャングルの中、ネフィリムの魅力

しおりを挟む
 確かにこんな感じだったな。
 俺に、近寄りがたい存在とか、孤高な人間を演じることなんてできない。

 勇者としてどれだけ名を上げていっても周囲の仲間たちや、出会った人たちと接するのをやめなかった。
 時には子供たちが馬乗りになってじゃれあってきたり、誰でも入るようなバーでいろいろな人と接したり意気揚々としたりしていたなあ。

 打ち解けあって、ふざけあって。まるで友人であるかのようだった。
 俺も、変に謙遜されて神格化されたりするよりは友達みたいに気軽に接してくれた方がいいのも事実。

 俺に、英雄なんて言葉は似合わん。

「わかったよ。尊敬されるのは性に合わん」

「そうじゃの。そっちの方が、そちの魅力がでて親しまれるぞい」

 ネフィリムの通りだな。ただ変な噂が流れないよう気を付けないと。
 でも、満面の笑みを浮かべていてどこかうれしそう。

「それでは、いくぞい」

「そうだな」

 そして、俺たちは森の中へと進んでいった。
 それ以外に俺たちができることはない。ネフィリムと一緒に、獣道を進み始めていいく。

「ギャァァァァァァァ──!!」

 背後から奇襲してきたコボルト数匹を、一撃で真っ二つにする。

「よく奇襲してくるのう」

「まあ、こんな視界が悪い森だ。それが一番勝率が高いんだろうな」

 熱帯雨林のような、何十層もの植物が折り重なるジャングル。
 昼間だというのに森林によって日光が遮られ、まるで夜になっているかのようだ。

 視界は数メートル。木の陰に誰かが隠れていても気が付かない。神経を研ぎ澄まして、気配を探る。

「怖いのじゃ~~」

「なんだよいきなり」

 ネフィリムが、ぶりっ子みたいな表情で俺に寄ってくる。
 それから、俺の腕に抱きついてきた。大きくて、柔らかい胸を押し付けてきてドキッとしてしまう。

 ネフィリム、元の世界でも自分のスタイルやルックスの良さは理解していた。
 有力な亜人の部族相手にわざと前かがみになって胸元を見せつけてきたり、好意的に抱き着いて虜にしてきたり。

 流石は魔王というべきか、計算高さもある。わかっているけど、こうして抱きつかれおっぱいを押し付けてくるとドキッとしてしまう。

 香水でもつけているのか、なびく髪から柑橘系のような甘酸っぱいにおいがする。
 鼻腔をくすぐってきて、とても魅力的。彼女のことを知らなければ、この美貌とアタックに魅了されてしまうかもしれない。

 ネフィリムはこっちを見て、ニコッと笑う。

「まったく、鼻の下を伸ばして──上の口は強がっていても、下半身は正直だからのう。男というものは」

「しょうがないだろ。お前はそれくらい魅力的なんだから」

「まあ、そちも男なのじゃ。何かあったらわらわは受け入れるぞい」

 まあ、ネフィリムはたくさんの人を見てきた。中には、異性を自分の欲望の捌け口としか思わないやつだっている人だっている。

 俺だって、ネフィリムのことを異性として素敵な人だとは思っている。でも、今まで敵同士だった人と交わるというのは気が引ける。

 そんなことは、することができない。

「今はできないから──ダンジョン攻略に集中しよ」

「うん。そちらしいのじゃ」

 ネフィリムは、予想していたように笑顔で答える。
 俺のことをわかっているなら、予想できたよな。

 そして、さらに進んでいるとネフィリムの表情が真剣なものになる。理由は簡単、俺もそれはわかる。薄暗い森、真剣モードに変わる。

「あれ、魔物ではないか?」

「ああ、そうだな」

 ネフィリムが肩を叩いてくる。カサカサとした音、草に隠れているが気配からわかる。

「多分魔物だ」

 腰を落とし、物陰から観察する。首から上がない、ぼろぼろの鎧を着た騎士の姿。
 デュラハンだ。Bクラスの、中堅上位ともいえる魔物。

 それなりに強く、一人で戦うには厄介だ。

「わらわが相手になろうか?」

「いい」


 ネフィリムが前に出ようとするが、俺が手を置いて止める。

 見たところ、あいつの周りに数匹。これなら一人でも戦える。一人でやって、みんなに実力を見せたいしね。
 そしてデュラハンが背後を向いた次の瞬間──。

 大きく接近して、思いっきり切りかかった。
 デュラハンはそれに気づいて振り向こうとするが、時すでに遅し。振り向いた瞬間に、剣で胴体を寸断。

 他のデュラハンはそれに気づいてこっちに向かて突っ込んできた。しかし、俺からすればスローモーションにしか見えない。

 攻撃をかわして、デュラハンの肩部分に一撃
 切り裂いたはずなのに、当てってない? 当たった感触が全くないのだ。

“何あれ、デュラハンにあんな力あったっけ?”
“ねぇよ。特殊な力を持っているのか?”

 コメントからも疑問の声が──考えているうちにデュラハンが突っ込んできた。幸い突っ込んでくるだけだからかわして無防備となったところにカウンターを食らわせればいいだけだから問題ないが──何度か当たったのに感触もなく素通りするというのが多発。

 何か当たり判定がおかしい気がする。具体的に言うと、腕や肩の部分を切ってもまったく感触がなく、お腹あたりに攻撃を食らえると、敵を切り刻んだ感触がある。


 事実、胴体を切ったデュラハンは肉体が真っ二つに切断されてその場に倒れこんだのだ。

「やはりわらわが」

「いい」

 一歩前に出たネフィリムを俺が止める。大丈夫、問題ないから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...