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第15話 まさかのコメント

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 ネフィリムは大喜びで何とこっちに飛びついてきたのだ。

 やわらかくて大きいおっぱいを押し付けてくる。異性との交際経験が全くない俺にとって、それは劇薬に近いものがあった。

「触ってよいぞ、これからは一緒に行動するもの同士なのじゃからな」

「待ってくれ、まだそういう関係じゃないだろ。もしも関係が進展したらにしてくれ」
「そうじゃな。性欲が抑えきれなくなったら、いつでもわらわは受け入れるぞ」

 そんなことをするわけにはいかない。まだ、親しい中になったわけではないのだから。とりあえず、ネフィリムと一緒に行動することとなった。チャンネルの方も、少しでも賑わいが出るといいが。
 昨日からスマホをいじってないからちゃんねるがどうなってるかはわからないが、どうせ誰も見てないしコメントもくれないだろう。そして、これからもきっと──。

 それなら、ネフィリムといたほうがいい。性格はああだが、義理堅い部分もある。ルックスもいいし話題性が出るだろう。

 これから、慌ただしい日が続きそうだ。登録者数……100とか行ったらいいな。
 とりあえず──これからのことを考えようか。

「じゃあさ、次に潜るダンジョンとか考えない?」

「それなら、ここに行くとよいぞ。セラフィールの運営している新規ダンジョンだ」

「セラフィールか、あいつも独立してダンジョン経営してたのか」

 セラフィール。ネフィリムに使える、魔王軍NO3というべき存在。
 赤い髪でネフィリムに負けないくらいの美貌とスタイルを持つ人物。ネフィリムと比べると、異世界全体への恨みを持っていたのが特徴。いつも不満そうな、けげんな表情をしていたイメージがある。

「で、なんていう名前なんだ?」

「確か、ファ──ファイナルソウルといっておったかのう」

「ファイナルソウル??」

 聞いたことないダンジョン。どんなダンジョンだろうか。とはいえ、ネフィリムと同じ様にどこかおかしくて色々と教えなきゃいけないこともあるかもしれない。

 他に行きたいような場所があるわけでもない。無名ということは人が少なくてライバル配信者がいないということでもある。決めた。


「わかった。今回はそこにしよう」

「ありがとうなのじゃ。セラフィールもそちが来るとわかればとっても喜ぶぞい」

 ご機嫌な表情になるネフィリム。まあ、逃げ出した奴らがどうなってるかは興味あるし、第一どんな理由があろうと俺はこいつらと戦いを挑んで、結果彼女たちはあの世界から追放されてしまった。それなら、ある程度彼女たちの事を見る義務があるともいえる。事の顛末次第によっては、協力することだってあり得る。

 それから、母親がお菓子を持ってきてくれた。
 手のひらサイズのビスケットにチョコレートがかかっている。通称「たけのこ」だ。ネフィリムは興味津々そうに「たけのこ」を一つつまんで眺めた後、口に入れた。

「うん、甘くておいしいのじゃ」

 目を輝かせて、パクパクと食べ始めた。こういう無邪気なところは、とってもかわいいんだけどな。

 俺も「たけのこ」を2.3個つまんで食べた。うん、美味しい──サクッとしたビスケットを、まろやかなチョコレートが包んでいる。一口食べただけで、天下を取ったような気分になれる。

 さあ、行こうか。スマホを手に取り、告知用のSNSで配信開始をフォロワーに伝える。

「じゃあ配信開始……いつもの倍くらいは──コメント来てるといいな」

 URLを貼り付け、呟きを投稿した後、俺は配信を始めた。
 そして、そのコメント数に言葉を失うこととなる。

“おおっきた、来たぜ”
“うっす”
“これが、今話題の配信者か”
“きたぁあああああああ!!!!”
“待ってたわ”
“しゃべってしゃべってぇ~~”
“よっしゃぁあああああああ!!!!”
“通知から来たぞ!”

 何だこのコメント数。あまりの多さに流れるようにコメントが消えていく。
 どう返せばいいかわからず大慌て。え? え?

 以前はこんなことは間あった。まず視聴者自体がいなかったからコメントが付くなんて数日に1.2回という感じだ。
 だから、せっかくコメントしてくれた人を逃さないように配信しながら内容を考えてコメントしていた。結局その人たちには逃げられてしまったが。そして登録者数、確かに璃緒たちの件があって増えてるといいなと思ったが──その数、920。しかも、こうしている間にも1つ、また1つと増えていってる。

「何をしておるのじゃ」

 困惑していると、ネフィリムがあきれ顔で話しかけてきてスマホを覗き込んだ。

「…っ」

「おおっ、これがコメントか。そちは期待されておるのう」

「確かに」

 配信開始直後から、怒涛のように視聴者が押し寄せてくる。
 まずい、せっかくコメントをくれたんだ。返さないと、とはいえこんな数のコメント初めてだ。予想外の事態にあたふたしていると、ネフィリムがため息をついてさっきの俺のように頭にチョップしてきた。

「たわけ!」

「な、なんだよ」

「一人一人返す。なんて無理に決まっておるいちいち返すのではなくて、実況中に軽くお礼でも言っておけばよい」

「そ、そうかもしれないけど──」

「まったく、そちは──前の世界にいた時と変わっておらぬ」

「な、何がだよ」

「みんなの気持ちに無理に答えようとして、悩んで結局答えられなくて自責の念に駆られる。違うか? このお人よし」

「うるさい」

 俺のことを、よくわかっているな。これからも説教が飛んでくるわけか。こいつは面倒見もよくておせっかいしてくるからな。
 人の性格なんて、そんな簡単に変わるか。まあ、後でコメントにお礼とかしておこう。

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