7 / 99
第7話 このダンジョンの、評判
しおりを挟む
「そち──いたのか」
目を合わせた瞬間に話始める。世界の運命をかけて、死闘を演じた仲故の者だろうか。敵であった中にもどこか親近感を感じる。そして、ネフィリムの攻撃を力づくではじいて正面から向かい合う。剣を向けたまま、後ろにいる璃緒に視線を向けた。
「後は大丈夫です。3人を連れて、安全な場所へ避難してください」
璃緒はしばしこっちを見て、フリーズしていたもののすぐに顔を振ってコクリと頷いた。
「ありがとうございます。私リーダー失格です。誰一人、仲間たちを守れないなんて」
「そんなことない」
ゆっくりと立ち上がる璃緒に強い口調で言葉を返した。
泣きながら言葉を返す璃緒に思う。
最後まで戦っていた。そんな彼女がいたからこそ、俺が来るまで全員無事で持ちこたえたのだから。
そして、倒れこんだ3人を引きずってここからいなくなるとネフィリムが話しかけてきた」
「ああ、澄人か。──久しぶりじゃ元気か?」
「元気? じゃない。なんでこんなところにいるんだよ!」
旧友だったみたいに気安く話しかけてきた。親近感を抱いているのだろうが、かつては世界を掛けた戦いをした関係なんだぞ……。
づかづかと、ネフィリムの元に速足で近寄る。
「なんじゃ? 貴様もわらわに挑むのか? 今度は負けんぞ! 対策もばっちりしておる」
「別に今回は殺し合いに来たわけじゃない。魔王軍の奴らも、散っていって人間たちに戦うそぶりはしなくなったからな」
「そうか、では──何の用じゃ」
突っ込みたいところがいっぱいだ。一つずつ聞いていこう。
「このダンジョンを作った理由は?」
そう言って、ネフィリムは両腕をつかんで俺と決戦をした後のことを語り始めた。
決戦の後、仲間とともに命からがら北の大地に逃げたネフィリムと幹部、部下たち。
行き場所がなくなった彼女たちはその後次元空間を逃げ、俺たちの世界のことを知ったようだ。
「じゃが──そのままでこの世界での共存は不可能だと話し合いで結論付けた」
「確かに」
幹部以上はともかく、一般兵はろくに教育されてない。そんな状態で俺たちの世界に言っても共存は不可能だろう。
「わらわだって、何百人という部下を抱えておる。敗れても、彼らの生活を支えねばならない。面倒を見てきたから、わらわたちを支持してくれるのじゃ」
「それはわかる」
「この世界ではダンジョン配信が流行していると聞いた。ダンジョンなら、わらわも以前の世界で作った経験がある。だからダンジョンを経営して、ダンジョン協会から広告収入や権利料などを頂いて生計を立てておるのじゃ。もちろん、頭が良くて自立できるものは別にダンジョンを作ったり一人で戸籍を捏造して生活してると聞いておる」
「なんかすごいことを聞いてしまった気が。まあなるほどな」
「もう世界を征服するなんでことはせん。今わらわは、ついてきた部下を食わせるのに手いっぱいでのう」
それなら、無理に倒す必要はない。大きく息を吐いて、剣を下ろす。ネフィリムからもさっきまでの魔力が消えていってるのがわかる。
ただ、それには何とかしなきゃいけない部分も多いのも事実だ。
ちょっと、それを指摘したほうがいいか。
「お前に敵意がないのはわかった。だが、収入を増やしたいなら改善しなきゃいけないところが山ほどある」
「そうなのか──まあわらわもダンジョンは初めてだしのう。じゃが、そこまでおかしかったのか?」
ネフィリムはなぜ言われてるかわからず、きょとんと首を傾けている。こいつ……。
この世界の感覚がわからないのかな?
「まずはこのオプションだ」
「充実したオプションじゃろ?」
とりあえず、オプション画面を見せよう。まあ、生まれた世界が違うのだから常識や文化がわからないのだろう。
設定のところを押して──こいつの言う「充実な設定」を見せる。
設定
ステレオ モノラル
「どこがおかしいのじゃ、充実な設定であろうが!!」
ネフィリムは強気な口調で腕を組んで答える。何がおかしいか、全く理解してないのがわかる。右手で頭を押さえて──全部言わないとわからないなと理解した。
腰に手を当て、ぷんすかと怒っているネフィリム。どういえばいいか考えた後、説明に入った。
「とりあえずな、ネットはわかるか?」
「ああ。わらわだってこの世界で生きていくと決めた。じゃからそのくらいは勉強しておる。この世界の地理、文化、歴史。何でも質問してみるとよい」
「じゃあ話は早い。お前のダンジョンを調べてみるぞ」
ネフィリム──今はこうして機嫌を損ねているが、何十万という配下を従えている魔族や世界中からはじかれた者たちを束ねている女だ。
この世界の文化やしきたり、ネットなどの下調べはしっかりとしているみたいだ。
ただ……ツメが甘い。ゲームやSNSは理解できても細かいバランスやそれをガバるとどうなるか教えてやる。
「確か、このダンジョンの名前はラス・クリムゾンだろ?」
「おう、そうじゃ!」
ラス・クリムゾン──をネットで検索っと。
予想通り出てきた。
そして、検索結果をネフィリムに向かって見せつける。
「お前が覚悟をもって仲間たちを養おうとしているのはわかる。だが、これが世間が見たお前の評価だ!」
ラス・クリムゾン もしかして
ラス・クリムゾン クソ
ラス・クリムゾン つまらない
ラス・クリムゾン クソゲー
ラス・クリムゾン クソダンジョン
ラス・クリムゾン バランスがゴミ
「な、なんじゃここれは……」
「YというSNSでの、このダンジョンの検索結果だ」
「ク……クソ……わらわのダンジョンが?」
目を合わせた瞬間に話始める。世界の運命をかけて、死闘を演じた仲故の者だろうか。敵であった中にもどこか親近感を感じる。そして、ネフィリムの攻撃を力づくではじいて正面から向かい合う。剣を向けたまま、後ろにいる璃緒に視線を向けた。
「後は大丈夫です。3人を連れて、安全な場所へ避難してください」
璃緒はしばしこっちを見て、フリーズしていたもののすぐに顔を振ってコクリと頷いた。
「ありがとうございます。私リーダー失格です。誰一人、仲間たちを守れないなんて」
「そんなことない」
ゆっくりと立ち上がる璃緒に強い口調で言葉を返した。
泣きながら言葉を返す璃緒に思う。
最後まで戦っていた。そんな彼女がいたからこそ、俺が来るまで全員無事で持ちこたえたのだから。
そして、倒れこんだ3人を引きずってここからいなくなるとネフィリムが話しかけてきた」
「ああ、澄人か。──久しぶりじゃ元気か?」
「元気? じゃない。なんでこんなところにいるんだよ!」
旧友だったみたいに気安く話しかけてきた。親近感を抱いているのだろうが、かつては世界を掛けた戦いをした関係なんだぞ……。
づかづかと、ネフィリムの元に速足で近寄る。
「なんじゃ? 貴様もわらわに挑むのか? 今度は負けんぞ! 対策もばっちりしておる」
「別に今回は殺し合いに来たわけじゃない。魔王軍の奴らも、散っていって人間たちに戦うそぶりはしなくなったからな」
「そうか、では──何の用じゃ」
突っ込みたいところがいっぱいだ。一つずつ聞いていこう。
「このダンジョンを作った理由は?」
そう言って、ネフィリムは両腕をつかんで俺と決戦をした後のことを語り始めた。
決戦の後、仲間とともに命からがら北の大地に逃げたネフィリムと幹部、部下たち。
行き場所がなくなった彼女たちはその後次元空間を逃げ、俺たちの世界のことを知ったようだ。
「じゃが──そのままでこの世界での共存は不可能だと話し合いで結論付けた」
「確かに」
幹部以上はともかく、一般兵はろくに教育されてない。そんな状態で俺たちの世界に言っても共存は不可能だろう。
「わらわだって、何百人という部下を抱えておる。敗れても、彼らの生活を支えねばならない。面倒を見てきたから、わらわたちを支持してくれるのじゃ」
「それはわかる」
「この世界ではダンジョン配信が流行していると聞いた。ダンジョンなら、わらわも以前の世界で作った経験がある。だからダンジョンを経営して、ダンジョン協会から広告収入や権利料などを頂いて生計を立てておるのじゃ。もちろん、頭が良くて自立できるものは別にダンジョンを作ったり一人で戸籍を捏造して生活してると聞いておる」
「なんかすごいことを聞いてしまった気が。まあなるほどな」
「もう世界を征服するなんでことはせん。今わらわは、ついてきた部下を食わせるのに手いっぱいでのう」
それなら、無理に倒す必要はない。大きく息を吐いて、剣を下ろす。ネフィリムからもさっきまでの魔力が消えていってるのがわかる。
ただ、それには何とかしなきゃいけない部分も多いのも事実だ。
ちょっと、それを指摘したほうがいいか。
「お前に敵意がないのはわかった。だが、収入を増やしたいなら改善しなきゃいけないところが山ほどある」
「そうなのか──まあわらわもダンジョンは初めてだしのう。じゃが、そこまでおかしかったのか?」
ネフィリムはなぜ言われてるかわからず、きょとんと首を傾けている。こいつ……。
この世界の感覚がわからないのかな?
「まずはこのオプションだ」
「充実したオプションじゃろ?」
とりあえず、オプション画面を見せよう。まあ、生まれた世界が違うのだから常識や文化がわからないのだろう。
設定のところを押して──こいつの言う「充実な設定」を見せる。
設定
ステレオ モノラル
「どこがおかしいのじゃ、充実な設定であろうが!!」
ネフィリムは強気な口調で腕を組んで答える。何がおかしいか、全く理解してないのがわかる。右手で頭を押さえて──全部言わないとわからないなと理解した。
腰に手を当て、ぷんすかと怒っているネフィリム。どういえばいいか考えた後、説明に入った。
「とりあえずな、ネットはわかるか?」
「ああ。わらわだってこの世界で生きていくと決めた。じゃからそのくらいは勉強しておる。この世界の地理、文化、歴史。何でも質問してみるとよい」
「じゃあ話は早い。お前のダンジョンを調べてみるぞ」
ネフィリム──今はこうして機嫌を損ねているが、何十万という配下を従えている魔族や世界中からはじかれた者たちを束ねている女だ。
この世界の文化やしきたり、ネットなどの下調べはしっかりとしているみたいだ。
ただ……ツメが甘い。ゲームやSNSは理解できても細かいバランスやそれをガバるとどうなるか教えてやる。
「確か、このダンジョンの名前はラス・クリムゾンだろ?」
「おう、そうじゃ!」
ラス・クリムゾン──をネットで検索っと。
予想通り出てきた。
そして、検索結果をネフィリムに向かって見せつける。
「お前が覚悟をもって仲間たちを養おうとしているのはわかる。だが、これが世間が見たお前の評価だ!」
ラス・クリムゾン もしかして
ラス・クリムゾン クソ
ラス・クリムゾン つまらない
ラス・クリムゾン クソゲー
ラス・クリムゾン クソダンジョン
ラス・クリムゾン バランスがゴミ
「な、なんじゃここれは……」
「YというSNSでの、このダンジョンの検索結果だ」
「ク……クソ……わらわのダンジョンが?」
17
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる