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第5話 エンシェントロマン・大苦戦
しおりを挟むかつて俺が戦った、世界の運命を掛けるような戦いとは無縁。
必死に戦って、生き残ることが一番な戦いとは違う。勝利は当然で、それ以上に配信者としてどれだけユーザーたちを魅せるかが重要な戦いになっている。つまり魅せる技術だ。
俺には、この分野が苦手なのだろう。いつも勝利ばかり考えて、ハメ技や地味な見た目の戦術ばかりしていた。
さて、どうするか。両親は仕事だし、ずっと異世界で戦っていて他にやることもない。特に趣味もなかったし、今更何をすればいいのか──。
とりあえず、再び部屋へと戻る。
ところどころに、菓子パンやビニール袋のゴミが散らかっている部屋を見ながら考えた。
あの子たち、大丈夫だろうか。
異世界では、ダンジョンに意気揚々と潜って凄惨な死体となって発見された仲間たちが大勢いた。
彼女たちは、まさかな──仮にもNO1配信者だ。簡単に負けるわけが……。
夕焼けの空を見ながら──パソコンに向かった。
やっぱり、俺にはこれしかない。彼女たちを見てみよう。あの時こうしておけばよかったなんて後悔はたくさんあった。それで救えなかったなんてことにはなりたくない。
大丈夫そうなら、見せ方とか戦い方とか。少しでも勉強して参考にしてみよう。そうすれば、俺の再生数もちょっとでも上がるかもしれない。
4人──「チーム・エンシェントロマン」だっけ。そのちゃんねるを見る。なんだか見たことがあるが、もう一度見てみよう。
しかし……動画の様子がおかしい。人が多すぎては入れないのかな?
先ほどからずっと真っ暗で、音声は雑音ばかりだ。画面が入ってないのか?
NO1配信者で有名な、4人がこんな初歩的なミス?
するなんて少なくとも俺が見たライブ配信では一度もない。何か、そこまで手が回らない理由とかあるのだろうか?
;マジかよ、何でこんな強いんだよこの女
;4人なら負けないよ、がんばって!!
;弱点とかないのかなこいつ
そこに突如として、絶叫が響き渡る。そして、その姿に愕然として言葉を失った。
倒れこんでいる竜二と優愛。動揺している幸洋と璃緒。
コメントの履歴から察するに、4人はダンジョンを進んで、魔王のところへ進んだようだ。
問題は──そこからのようだ。
「あの魔物たちを打ち倒し、ここまでたどり着いたことだけは褒めて遣わそう」
褐色の肌、紫のロングヘアー。そして、癖のある口癖。
あと大きなおっぱいとそれを強調するような服。あっちの世界ではGカップだと称していたってな。
「またお前と会うとはな」
戦っている姿、それを見るだけで思い出す。
かつて俺と死闘を演じ──最後の最後、仲間たちや平和を想う人たちの力をすべて結集させて勝利したことは記憶に残っている。あの後、こいつは自らの敗北を受け入れたものの「この世界から撤退する」といって動ける配下ともどもどこかに行ってしまった。俺は力を使いつくしてしまい追撃することはできなかったが、まさかここで出くわすとは。
美人ともいえる美貌のせいで、それだけで魔王軍へと入ってしまったものもいるくらいだ。
男にとっては、たまらない体つきをしている
あいつ──ダンジョン経営なんてやり始めたのか? 何か理由でもあるのか?
「なんじゃ、NO1だとかぬかしておいてこの程度か? 軟弱者めが」
何度か4人はネフィリムにくらいつくも、圧倒的な力の差にすぐに吹き飛ばされてしまう。
必死に戦う4人に、気が付いたら心の中で応援していた。
4人なら、異世界に行ったとしてもトップクラスの実力はあるだろう。それでも──ネフィリムには届かないのか──。
ちょっと行ってみるか。売名とか言われるかもしれないが、そんなことはどうでもよかった。下手をしたら死ぬかもしれない。あの時、4人は俺のことを想ってくれた。そんな人たちを、見捨てるわけにはいかない。4人を助けて、ネフィリムに言ってやらないと。
ネフィリム、この世界のことがよくわかっていないように思う。
OPのような画像、オプション、突っ込みたいところはいろいろあるが──今はそんなこと言ってる場合じゃない。
あんな奴を相手にしたら、いくらAランク配信者だってただじゃすまない。
俺は、速足で彼女の元へ向かっていった。
「璃緒、私の攻撃が全然効かないんだけど……」
私に向かって涙目で叫んでくる優愛。いつも挑発的な彼女が、こんなに怯えているのは初めて見る。
まずい、攻撃を受けきれないから後方の竜二と優愛にまで攻撃が行く。2人が攻撃を受けると援護の攻撃が来ないから私が余計に攻撃を受ける。
完璧に悪循環になってる。コメントも、私たちの苦戦に気づいて心配の言葉が画面に流れてくる。
:なんじゃこれ、強すぎだろ
:バランスおかしい、敵強すぎ。
:エンシェント・ロマンが、ここまでやられるなんて
:バランスとか戦闘の要素とか、色々とおかしいだろこのダンジョン
:やっぱ逃げたほうがいいって
「まずはお前からじゃ!」
「ぐああああああああああああああああ!!!」
幸洋がネフィリムと名乗る魔王の女に吹き飛ばされ、後方の壁に激突。
意識を失って、ぐったりと倒れこむ。
「な、何よこれ……」
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