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最終章 天界編

全員で、力を合わせて

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「二人とも、信じるよ」

「そうフィッシュ。みんなで力を合わせれば、絶対勝てるフィッシュ」

「そうだよ。今までだって、それで勝ってきたんだから」

 ハリーセルとレシアも強気な表情で俺に勇気を与えてくれる。
 そして……。


 スッ──。

 だれかが優しく背中を撫でた。

「フライさん。最後の戦い、みんなで戦って勝ちましょう」

 フリーゼだった。
 不思議な気分だ、みんながこうして声をかけてくれたからか、どんな障害でも乗り越えていけそうな気がする。

 負けるというイメージが、全くわかない。

「そうだね」

「行ってきなさい! 勝ってここから帰りましょう。私達がフライの力になってあいつを倒すのよ!」

 そうだ、今の俺は、フリーゼやレディナの力を受け取れる。みんなの力で戦うことに変わりはない。

 一歩前に出て、答えを出した。

「セファリール、わかった。その決闘、受け入れるよ」

「──了解です。フリーゼたちの力があれば、行けると踏んだのですね。無駄だと思いますが」

 こうして俺はセファリールとの一騎打ちをする事になった。
 それを察したのか、後ろにいた熾天使たちは後ろへと離れる。

「まあ、無謀ですこと」

「セファリール様に、コテンパンにされればいいんですの」

 ぶつぶつと、俺に陰口をたたきながら……。
 そして、俺とセファリールが向かい合った。真剣な表情で、俺を見つめてくる。

「フライ──でしたわね」

「はい」

 まるで透き通っているかのような、純粋で水色の瞳。
 見ているだけで、まるで吸い込まれそうな感覚になる。

 そんな瞳で、俺の方をじっと見つめている。

「私は、ツァルキール様に、その想いを伝えなければなりません。人間であろうと、手加減するつもりはありません」

「それは、あなたを見た時から理解してました」

 当然だ。
 今までのどんな強敵よりも、熾天使よりもはるかに強いオーラ。
 気持ちを強く持っていないと、すぐに腰を抜かしてしまいそうになってしまう。

 それだけではない。彼女には、負けられない思いがある。俺がこの戦いに強い想いをかけているように、彼女もまた同じくらい、いや──はるかに強い想いを持っているだろう。


 スッと、足音が聞こえる。

「フライさん──」

 フリーゼたちだ。何事かと思うと、フリーゼが右手を出た。そしてレディナ達に視線を配った後、何か示し合わせたかのように全員がコクリとうなづいた。

 そして、全員が同じ場所に手を出す

「私達の力、全部あなたに託すわ」

「はい。私達の力で、絶対に勝ってください」

「──わかった」

 コクリとうなづいて俺もフリーゼたちの手の元へ手を出す。
 そしてフリーゼたちは各々の力を、俺に供給し始める。

 強く、俺の手に彼女たちの手が押し付けられる。
 今までにないくらい。それぞれの想いを込めるかの如く強く──。

「フライ、私達の力、全部あなたに託すわ」

「受け取ったよ、みんなの力」

「頑張れフィッシュ。負けるなフィッシュ」

「絶対勝ちなさい。負けたら、承知しないんだからね」

「フライ──。絶対勝つって、信じてるよ」


 背中を押される形で、俺はセファリールがいる、場所へ。
 みんながくれたこの力、決して無駄にはしない。

 相対する俺とセファリール。

 ツァルキールは、切ない表情で祈るようなポーズをしながら、俺たちをじっと見ている。

「いよいよ始めるのですね。世界の趨勢が決まる一騎打ち──」

 晴天の空に、草原が広がるこの地。
 優雅で天国ともいえるこの空間に、俺とセファリールがにらみ合う。
 それを取り囲むように、エンレィなどの熾天使たちとフリーゼたち。そしてツァルキール。

 セファリールが聖剣を俺に向けてくる

「冒険者フライ。たとえあなたが人間であろうと、手加減をするつもりはありません。私達が理想とする世界のために、全力で戦い抜くつもりです。例えこの戦いで、あんたの命が尽きることになろうとも──」

 その言葉の意味を理解し、無意識に俺は一歩引いてしまう。
 セファリールはこういっているのだ。

「戦い次第では、俺を殺すことだってあり得る──ということですね?」

「はい。容赦はしません。これが最終通告です。よろしいですね?」

「……ああ」

 俺は、しばしの間戸惑いながらも首を縦に振った。

 フリーゼたちと、約束した。この戦いに勝って、またみんなで楽しく過ごすと。
 そして──。
 答えは一つ──。
 フリーゼを未亡人になんてさせない。

 絶対に勝って、生きてこの場から帰る。

 そして俺とセファリールが再び向かい合った。
 真剣な目で見つめ合い、剣を互いに向ける。
 金銀に輝き、神秘的な幾何学模様をした剣。

「フライ──あなたの想いを、全て受け止めて……私が勝ちます」

 そして、俺達は互いに接近。世界をかけた、壮大な戦いが始まった。

 互いに引いたりしない、共に自らの想いを込めるような攻め合う攻防。これは、俺と彼女の想いをかけた戦い。

 動きが全く違う。やはり人間と天使では大きな差がある。
 一歩一歩引きながらの攻撃になり、このままではどんどん押し込まれてしまうというのがわかる。


 それでも、負けるつもりなんてない。
 俺には、フリーゼたちからもらった力がある。

 まずはレシアの動き。レシアのスキルである「猛火逆鱗」を発動させる。

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