~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

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ローデシア帝国編

完全決着そして、アドナの本当の最期

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「決着が、ついたわね」



 ボロボロの姿で、手をぴくぴくと動かしているスワニーゼ。
 歯ぎしりをしていて、とても悔しそうだ。

「あんたの野望は、潰えたわ。これであなたは、おしまいよ」

「くっ、どうして、どうして私が敗れたの? 何が悪かったのよ」

 レディナは、強い目つきでただスワニーゼを見つめていた。

「な、何よ……あなたに何がわかるのよ」


「わかる? 理解できないから言ってるのよ」

「まあ、理解できないでしょうね。してほしいなんて思ってないし……」

 そう言いながらスワニーゼが、ゆっくりと立ち上がる。ふらふらとした、立っているのがやっとの状態。



 すると、同じように倒れこんでいたアドナが、ふらふらとしながらゆっくりと立ち上がる。
 そして、よろよろと歩きながらスワニーゼに向かっていった。

「待てアドナ、こっちへ来い!」

 今のスワニーゼは、レディナに負けて気持ちが不安定になってる。腹いせにどんな目に合うかわからない。そんな意味で叫んだのだが──。

「うるせぇぇ! お前なんかに同情されてたまるか。お前を──お前をぶっ殺さなきゃ気が済まないんだフライ!」

 アドナは話を全く聞かない。フラフラとした足取りでスワニーゼの足元へと向かうと──。

「頼む。スワニーゼ様!」

 頭がめり込むくらい地面にこすりつける。いわゆる土下座だ。
 プライドだけは一級品に高いアドナがそんな不様な姿を見せてなお、欲しいのは──。

「スワニーゼ様。もう一度、もう一度お願いします。あのフライのせいなんです。この体が朽ちてもいいから、俺に力をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 力だ。恐らく、彼の心には俺への復讐心以外、何もないのだろう。この身が朽ちても、俺を殺すという強い心を感じる。

 そして当のスワニーゼは、アドナをきっと見下す。まるで汚いものを見るような、さげすんだ瞳──。

「アドナ、戻れ! 勝負ならまたしてy──」

「黙れ! お前のやさしさなどう」

 そして、アドナの言葉にスワニーゼが反応する。

「うるっさい! あんたに何ができるってのよ。結局フライに負けたくせに」

「うるっせぇ! 今度は勝つ!」

「どうやって?」

 スワニーゼの声が、重くなったのがわかる。

「スワニーゼ様の力を、もっと分けていただければ」

「この犬! ゴミ! 豚! あんたごときが、この私に指図するなんて図々しいのよ!」

 スワニーゼはカッと目を開いて叫び、アドナの頭を踏みつける。そして──。

 グシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ──!

 アドナの頭を、まるでトマトであったかのように踏みつぶしてしまった。
 その光景に俺もレディナも言葉を失う。

 アドナがいた所には、脳みそと思わしき黄色い物体と切断された首からあふれ出る血でいっぱいになる。

 あまりにも予想できなかったアドナの悲惨な最後。俺もレディナも思わず言葉を失ってしまう。

「うるっさいのよ。この犬。弱くて、役立たずの駒のくせに、いっちょ前にこのスワニーゼ様に指図するからこうなるのよ!」


「犬だの指図だの──あんたがうまくいかなかっ理由が、良く分かるわ」

 レディナがため息をついてあきれ果てるように言葉を返す。
 そして、感情を込めて叫ぶ。


「あなた達のような人はいつもそう。できもしないような理想ばかり押し付けて、周囲や、他の人が傷ついても気にも留めない。どうせ、人間たちや周りの天使たちのことを、自分の理想を実現させるための道具位にしか感じてないんでしょ」

「当たり前じゃない。人間よ人間、欲にまみれた俗物で、いつも争ってばかりで、こんなゴミみたいな奴らに、権利なんて与えたってろくなことにならないわ」

 すると、レディナはスワニーゼに接近し──。

 パシン!

 頬をひっぱたく。スワニーゼは表情を失い、ただレディナを見ていた。

「私は、この世界にいて感じたわ。人間というのは、私達から見たら流されやすく、弱いかもしれない」

「そうよ、だから──」

「けれど、強くだってなれる。目的のために、大切な人のために──。私だってそう。あなたの様に、自分の目的や正義のために周囲を傷つけたりするなんてしない。あなたと死闘を演じるなんてこともしなかった。けれど、フライや、みんなのことをって思ったら、自然とあなたに勝つって心の底から思えるようになったわ」

 その言葉に反応したのは、ソルトだった。

「わ、私もです……。確かに、ここに来るまでは、本当に怖くて、何度も逃げ出したくなりそうでした。けれど、スキァーヴィのために、人々のためにって思ったら、自然と勇気が出て、私はここから逃げないでいれます」


 その言葉に、スワニーゼは言葉を失い、反論できない。そして、大きく息を吐いて座り込んで言葉を返す。
 さっきまでとは違う、あきらめの感情が入った弱弱しい表情。

「──負けたわ。あんた達に」

「当然よ」

「天界に行ってみたら──」

 スワニーゼの突然の言葉に俺達は顔を見合わせる。

「どうして?」

「私達の計画を止めたいんでしょう。それなら、一つしかないわ。天界へ行って、大天使ツァルキール様や熾天使のところへ行って、訴えてきなさい」

 その言葉に俺とレディナは顔を合わせる。罠──なのだろうかと疑ってしまう。

「けど、それ以外手段なんてないし……」

 レディナが困った表情でつぶやく。

「言っておくけれど、甘くはないわよ。熾天使の中には、私がやっていることですら生ぬるいと叫ぶような過激で急進派と呼ばれるようなやつだっているのよ」

 その言葉に、俺は戸惑う。スワニーゼでさえ、生ぬるいっていったいどんな奴らなんだろうか。

「わかってるわ。それでも、それしか道がないというのなら、やるしかないわ」

「……そうだね」

「じゃあ、スワニーゼの言葉に、のるとするよ」

 スワニーゼは、そのまま倒れこんでしまった。

「あんた達なら、もしかしたら変えられるかもしれないわ。正義感も我も強い天使たちの心をね」

 スワニーゼが微笑を浮かべている。期待はしているということだろう。

「わかった、行ってみるよ」

「応援してるわ」

 取りあえず、今はもう戦えない。
 一度体力を回復してから天界へ行こう。

 そう考えた矢先──。
 フラッ──。

 突然、目の前の視界がゆがんだかと思うと、急に足の力が入らなくなる。

「フライ!」

 慌ててレディナが俺のそばに寄ってきて、抱きかかえる
 暖かくて、柔らかい感触が気持ちいい。

 レディナに抱きかかえられた瞬間、強烈な眠気が襲ってきて、瞼が重くなる。

 今までの激闘もあり、レディナに抱きかかえながら意識を失ってしまった。



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