~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

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ローデシア帝国編

唯一王 あいつと再会する

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「──もういい。早く全員でお前を、袋叩きにする」

「全員で?」

「卑怯だと思うなよ。俺たちの目的はお前に勝つこと。手段なんて、選んでいられない」

 卑怯かもしれないが、絶対に負けるわけにはいかない戦い。これしかない。
 しかし、スワニーゼの表情に焦りはない。ケラケラと笑って、言葉を返す。

「そうじゃないの。本当に、全員で戦えると思ってるの?」

「どういうこと?」

「こういう事!」

「フライさん、大切なお友達と再会させてあげます」

 大切な親友? 一瞬戸惑ったが、すぐにその言葉の意味を理解した。

 このタイミングで、そんな言葉で出てくる人物なんて、一人しかない。
 スワニーゼがピッと指をはじくと、一人の人物が現れる。

「フライ……」

「アドナ!」

 そう、現れたのはなんとアドナだ。はっとした、驚いた表情で俺の方を見ている。

「アドナ。もちろんだけどフライ、あなたが相手にするのよ。いいわね」

 アドナは表情を固まらせたままコクリと頷いて俺の顔をじっと見る。
 まさかの事態に言葉を失ってしまうが、すぐに落ち着きを取り戻す。

 とりあえず、話しかけよう。アドナと対峙しながら、話し開ける。

「アドナ、聞いてくれ」

 アドナは反応しない。
 無駄だとは思うけれど、行ってみよう。

「アドナ、今は争ってる場合じゃない。決着なら後でつけてやる。だから今は剣を下ろせ」

 そうだ。この世界のことがかかっている。この状況。
 こんな時にアドナと戦う必要はない。

 後で、ことが片付いたらいくらでもできる。


 しかし──。

「うるっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 アドナはそんなことをお構いなしに叫ぶ。

「世界の平和ぁ? んなのどうだっていいんだよぉ!! 俺の頭の中にあるのは、お前のことだけだ! お前をぶっ殺して、今まで俺が着せられてきた不当な、不当な汚名を全部晴らさなきゃいけないんだよ。それもこれも、全部お前のせいだ。お前に、俺が受けた屈辱を、全部晴らしてやる!」

 眉間に皺を寄せ、憎悪に満ちた表情で言い放つ。

 ……一応聞いてみたのだが、全く予想通りの展開だった。
 正当な結果なんだけどね──。

「わかったよ。お前との勝負、受けてやる」

 そう言ってアドナに剣を向ける。アドナは、自信たっぷりの表情で言葉を返した。

「当たり前だ。お前を倒すのは、この俺様なのだからな」

 そして俺は剣を構える。アドナ、ニクトリスの力で以前よりもかなり強化されている。

 以前よりも強い力、果たして勝てるかどうか──。

 そんな懸念を抱いていると、体があったかくなるような感覚になる。
 暖かくて、俺を包み込むような力。

「私の力、受け取りなさい」

「──ありがとう」

 これは、レディナの力。

 フリーゼの時とは違う力だ。
 俺は慌てて後ろを向く。

 そこには、レディナがニッコリとほほ笑み、親指を立てている姿があった。

「どんな力なの?」

「私の場合は特別よ。力だけでなく、私そのものまで与えることができるの」

「私、そのもの?」

 言葉の意味に首をかしげる。

「私の力だけでなく、動きそのものも与えられるってことよ」

 動きそのもの? 初めて知った。恐らく、レディナの新たな力だ。

 レディナの動きで、俺は戦うことができるということだ。
 よし、これならいけそうだ。

「私の勝利への絶対的な動き。これがあればアドナにだって勝てるはずよ」

「──ありがとう」


 そう言うとレディナは親指をぐっと立てた。


「まだ私の手は残っているのよ」

 スワニーゼは再び指をはじく。

 その瞬間、ズシンと大きな揺れが起き、ものすごい地響きが聞こえだした。

「ちょっと、今度は何をしでかしたの? 答えなさい」

 詰め寄るレディナに、スワニーゼは余裕そうなそぶりで答える。

「地上に、魔物たちを送り込んでおいたわ。それも、とびっきり強い奴をね。どうする? 普通の冒険者達じゃ歯が立たないわよ~~」

 はやし立てるように話すスワニーゼに、スキァーヴィはギッと歯ぎしりをしながら言葉を返した。

「最低──人の命を、何だと思ってるのよ」

 そして背中を向けてこの場を去ろうとする。

 彼女は、仮にもこの国の頂点に立つ存在。危機が迫れば、国民達を守らなくてはならない。
 この行動は、なんら間違っていない。しかし、一人ではいかせない。

「キルコ、ミュア、スキァーヴィに協力できるか?」

「──わかったわ」

 二人はコクリと頷いて、スキァーヴィの元へ。一緒に戦いたい気持ちはあるが、仕方がない。

 熾天使ほどの力があるものに、この二人がいたところで何にもならない。逆に人質にされる可能性すらあり、逆効果だ。
 おまけに、アドナは俺を相当憎んでいるし、俺もアドナとは一騎打ちで決着をつけたい。

 それに、街への急襲となれば、魔物の数も多いだろうし、避難誘導などで人でも必要になるはず。
 これが、最善の選択肢なのだ。

 そして三人は背中を向け、この場を去って行った。一緒には戦えないけれど、みんなを守るという目的は一つも変わらない。

 ──大丈夫だ。キルコもミュアも十分強いし、スキァーヴィだって、以前とは違う。
 背中を見ればわかる。以前とは違い、とても頼もしく見える。

「三人とも、信じてるよ」

「──まかせなさい」

 そのスキァーヴィ言葉が、今までにないくらい頼もしく感じられた。
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