~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

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ローデシア帝国編

唯一王 キルコとミュアから「サンドイッチ」をごちそうになる

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 あの一件から数日が立った。

 朝起きて、顔を洗って歯を磨く。
 顔を洗って鏡を見る。

 自分の意識が、どこかに行ってしまっているような感覚があって、それが今も消えない。
 無意識に思い出してしまう。

 スキァーヴィの事。

 後悔しかない。

 あの選択は、本当に正しかったのか……。
 今でも疑問に残る。

 いけないいけない──。

 俺はもう一度顔を洗う。洗う手に思わず力が入る。
 まだ戦いは続いている。十分、取り返せる余地はある。

 朝食を食べた後、キルコとミュアの部屋へ。

 この街のことや、これからに関することなどを話す。
 それから、
 二人で街を散策。

 スキァーヴィのことは、すぐに街中に知れ渡ったようだ。
 先日までとは違い、人々は意気揚々に街を歩いている。

 どこか街がにぎやかになった印象も受ける。
 羽目を外しすぎて、暴れまわったりしている人や、悪いことをして、兵士にとらえられた人も多かったけど。


 そして夜。




 フリーゼが寝静まった後、俺はキルコとミュアの部屋へ。


 今日は夕飯は軽めに済ませた。
 理由は簡単、キルコとミュアが「サンドイッチ」をご馳走してくれるとのことだ。それだけじゃない。元パーティーとして大事な話があるとか。

 だから今回は俺だけで行く。フリーゼには悪いけれど、決してやましいことがあるわけじゃ無いから。
 夜遅くということもあり、静かに歩き、ノック。

「入って」

 ミュアの声がして、俺は中へ入る。

 キィィィ──。

 ドアを開け、部屋に入る。俺たちと同じような間取りの部屋。
 妙な違和感を感じる。キッチンにも、机にも、料理がある形跡はない。

「えーと、サンドイッチをご馳走してくれるってことだったよね?」

「そうよ」

 ミュアの自信を持った言葉。これは、いたずらか何かなのかな?
 俺は言いずらそうに二人に言葉を返す。

「何もないなら、部屋に戻りたいんだけど、ダメかな?」

「ダメよ」

「ミュアの通り、これからごちそうなんだから!」

 どういうことだか意味が分からず、戸惑う。
 すると、二人とも予想できない行動に出た。

 バサッ──。

「これが、私達のごちそうだよ」

 いきなり二人ともバッサリと寝間着を床に落としたのだ。

 そして手を後ろに置き、胸を見せつけるような体制になる。
 下着もつけていなかったので、全てが見えてしまっている。


 生まれたままの姿。俺は顔を真っ赤にし、どうしても視線が二人のふくらみへといってしまう

「ま、まって。状況が読み込めないんだけど……」

 キルコが挑発的な笑みを受かべて言葉を返す。

「フライ。私達の身体、ガン見してる──」

「なんだかんだ言っても、フライも男の子なんだねっ」

 あ、当たり前だろ。二人とも、それなりに異性としては魅力的なものを持っている。
 こんな姿を見せられたら、男なら誰だって意識してしまう。

 ミュアが、うっとりとした目つきで話しかける。

「キルコ。じゃあ、やりましょう」

「そうね」

 するとミュアは俺の前、キルコは俺の背後へと移動。何が待っているんだ?
 ミュアは正面に移動すると一度ウィンクをしてから両手を広げ──。


「たっぷりと召し上がれ~~」

「私達の──」

「「サンドイッチ~~」」

 そして前からはミュア、後ろからは俺に迫ってくる。
 二人は俺にぎゅっと抱きつく。それだけでなく、俺にまとわりつくように両手をつないだ。

 おかげで俺の体は、完全に二人の体に密着されてしまっている。
 二人とも、ほど良い肉付き。

 柔らかい肌が、全身に密着された状態。

 さ、サンドイッチってこういうことだったのか……。

 俺の胸の下にはミュアの控えめなふくらみが、背中にはキルコの豊満なふくらみが俺の体に押し付けられる。


 欲情せずにはいられない。まるで引き付けられるように、目線が大きなふくらみへといってしまう。

 そして、キルコが一度俺の耳に息をかけた。

「ふぅ──」

 甘く、生暖かい吐息。
 思わず力が抜け、ミュアにもたれかかってしまう。
 キルコはさらに俺に密着。

 二人の柔らかい肉体を全身に感じていると、キルコが耳元でささやいてくる。

「フライ──もう一度私達と組まない?」

「えっ。組む?」

 予想もしなかった言葉。唖然とする。

「私たち、わかったのよ。今までSランクで入れたのは、フライがいたおかげだって」

「あなたがいなくなって、私達は没落した。フライの加護がないと、私はダメなんだって──」

 なるほど。溶けてしまいそうな理性を総動員させ、頭を働かせる。

 確かに、二人が大変な目にあったというのは聞いた。
 時にキルコ──。ゴブリンたちに、あんな目にあったもんな。

「そうよ。本当に後悔しているわ。あなたを追放したこと──」

「キルコと通り、本当は、外れスキルなんかじゃなかったんだって」

「それは、ありがとう」

 気付いてくれたのか。その結論を出してくれただけでも、嬉しい。
 アドナとは違って、これからも二人は、それなりにやっていけるだろう。

 だ、だけど──。

「もし、もう一度仲間になってくれるというのなら──」

「こういうことだって、もっと先のことだって何でもしてあげるよ──」


 俺の本能が叫ぶ。この先のことが、したいと──。
 欲望に任せて、二人の言うことを聞けと。

 けれど、けれど──。

 俺は残っている理性を総動員して
 そのこと自体はとても嬉しい。


 それに俺には──いるんだ。フリーゼが。


「ごめん。二人の気持ちは受け取ったし、その言葉自体は、本当に嬉しい。けれど──」

「あっ……」

 二人の表情がはっと変わる。二人とも、長い間いた関係だ。俺の感情を、理解したのだろう。

「俺には、決めた人がいるから──。その一線は、絶対に越えられない」


 ミュアは、あきらめたのか、達観したような笑みを浮かべる。

「ごめんね、フライ」


「負けたわ。もう、あなたを仲間にするのはあきらめることにしたわ」

 二人の言葉に俺はほっと胸をなでおろす。とりあえず、今夜はお愉しみにならなくて済みそうだ。

「こっちこそ。わかってくれてありがとう。二人とも、応援してるよ」

「ありがとう。こっちこそ応援してるわ」

「私もよ」

 二人とも、穏やかな笑みを浮かべながら、言葉を返して来た。

 取りあえず、この場は何とか丸く収まった。
 しかし、二人がここまで大胆に出て来るなんて思わなかった。おかげで服を脱いだ時は完全にフリーズしてしまった。

 俺のことを考え直してくれたのは素直に嬉しかったけれど、流石に驚いた。
 俺には決めた人がいるし、一緒にはなれない。
 けれど、二人の今後は応援しているし、何かあったら力になりたいとは思っている。

 二人とも、俺と別れた日からいろいろと考えたのだろう。どこか変わったなとは思う。
 これからも、頑張ってほしい。
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