~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

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ローデシア帝国編

スワニーゼの、願い

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 暗い道、こっこっとフリーゼの足音がこの場を支配する。

「スキァーヴィ……。あなたはすでに、負けています。抵抗は無駄です、だから──出てきなさい」

 気配は感じていた。この辺りにいるのは、フリーゼは把握している。

(おそらく、奇襲ですね。暗い場所から、私を狙おうとしているのでしょう)

 暗い場所の上に、どんな罠があるかわからないスキァーヴィもホーム。
 フリーゼは神経をとがらせ、キョロキョロと周囲に視線を配る。

 そして──。

(そこです)

 フリーゼはいきなり背後に回し蹴りを見舞う。
 何もなかったはずの空間、しかし──。

「ぐはっ!」

 フリーゼの足はトップスピードで向かってきたスキァーヴィの耳の部分を捕らえていた。

「自らを視界から消すステルスの術式。最後の賭けで奇襲をしたようでしたが、その程度のおもちゃでは、私を欺くことはできません。甘いです」

 そう、フリーゼは最初から気付いていたのだ。スキァーヴィのいる場所を。
 そしてフリーゼはあえてスキァーヴィに反応しなかった。「いける」と思わせるために。
 スキァーヴィは自分に反応しない、背中を見せていたフリーゼを見て、行けると思い込み突撃。

 気付かれているとも知らずに突撃したスキァーヴィに待ってたのは、突然の回し蹴り。
 予想もしなかった攻撃に対応できず、スキァーヴィに直撃。

 彼女の体は強く壁にたたきつけられた。

 あまりの一撃に立ち上がることができないスキァーヴィ。
 そこに、ゆっくりとフリーゼが近づく。

「これで、勝負ありです」

「あ……、あ……、まって」

 スキァーヴィは倒れこみながらフリーゼに向かって手を伸ばす。

「話は、捕えた後で。では──」

 そう言ってフリーゼが彼女を捕らえようとした──その時だった。

「見ろよ、スキァーヴィ様が敗れたぜ」

「マジかよ」

「じゃあ、やることは、決まっているよな」

 何人もの足音がこっちにやってくる。
 フリーゼが後ろを振り向くと、軍服を着た軍人の人が何人もやってくる。
 そして──。

「フライさん」





 フライ視点。

 スキァーヴィが逃げていった暗闇の道へ歩を進めた。
 そこには、みずほらしくもスキァーヴィの元へ歩いているフリーゼと、ボロボロになりぴくぴくと体を動かしながら手を伸ばすスキァーヴィの姿。

 やはりフリーゼだ。スキァーヴィに勝ったようだ。
 そして俺はフリーゼの隣へと歩く。

「フリーゼ、ありがとう」

「──いいえ、このくらいは」

 フリーゼは、ほんのりと顔を赤くして、微笑を浮かべている。
 そして、視線をスキァーヴィへと戻す。

 傷だらけでボロボロの姿。ぽかんと口を開け、言葉をつぶやいている。

「あ、あ、ありえない。私が……負けるなんて」

 まだ現実が見えていないようだ。とりあえず捕え──。

 そう考えていた時、背後の兵士たちが俺たちに近づいてくる。

「あなたたち、こいつらを、殺しなさい……」

 スキァーヴィがにやりと笑みを取り戻し、言い放つ。こいつら、戦えるのか?


 しかし、兵士の人たちは黙々と歩いて俺たちを通り過ぎていき、スキァーヴィの元へ。
 どういうことかわからず、唖然とする。

 そして彼らはスキァーヴィへと接近し……。

「今までの恨みだ、クソ野郎!」


 一斉にスキァーヴィに暴行を加え始めたのだ。

 すでに体力を使い果たし、まともに動けないスキァーヴィに、兵士たちは何度も蹴っ飛ばし、髪を引っ張り顔面を殴る。

「オラオラオラァァァァァ──捕まった仲間の分まで、ぶん殴ってやるよぉぉ」

「ぶっ殺してやる! このクソ女!」

「へっ──殴ったら今までのお返しに、性奴隷にしてやるよォォォォォォ」

 兵士たちは彼女の圧政の中で、よほどの不満があったのだろう。今までの不満をぶちまけながら何度も暴行を加える。


 彼女が泣き叫んでもその行動はやむことなはい。激しさを増していく。

「イヤァァ──、イヤァァァァァァァッッッッッッ。許して、お願い。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい! やめてやめて。助けてぇぇぇぇぇッッ!」

 すでに戦う力を失った少女が、兵士たちから罵声と暴力を浴びている。

「フライさん。どうしましょう……」

 フリーゼはこの展開を予想していなかったためか、両手で口を覆い、どうすればいいかわからず戸惑っている。

 髪はくしゃくしゃ、傷だらけで服はボロボロ。この国の独裁者の威厳は全くない姿。
 そんな陰惨な光景に、思わず眉を顰める。

「助ける必要は、無いと思う」

 因果応報。

 この国を圧政と恐怖、力によって支配したツケ──。
 自業自得だとしか言いようがない。

 そんな姿を見ていると、ひとりの人物が俺の隣に現れる。

「フライ……さん」


 スワニーゼだ。体が震えて、引き攣った表情をしている。それも、ただ怯えているわけではない、どこか覚悟を決めた様な──。
 そして、ポケットから何かを取り出す。それを見て、俺は言葉を失った。

「スワニーゼ、何でそんなものを?」

 スワニーゼが取り出したのは、一つのナイフだ。ナイフを持っている両手が、大きく震えているのがわかる。

「スキァーヴィを、殺して、下さい」
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