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ローデシア帝国編

激戦、意外な乱入

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 フリーゼは表情を変えず、ただ呟いた。

「私もフライさんも、絶対に負けません!」

 そしてフリーゼはスキァーヴィに向かって踏み込んでいく。
 スキァーヴィの剣を横に受け止めると、受け止めた力を利用して体を回転させた。

 予想もしなかった動きにスキァーヴィは一瞬体を止めてしまう。

「そのスキ、逃しません」

 フリーゼはそれを見逃さなかった。体を回転させながら前へと突っ込むと、そこには無防備になったスキァーヴィの胴体。

 スキァーヴィは慌てて後退しようと重心を後ろに傾けるが時すでに遅し──。

「これで、決まりです」

 フリーゼは魔力を剣に込め、一気に剣を薙ぐ。
 強大な魔力をともなった砲弾が出現。スキァーヴィに向かっていく。

 スキァーヴィは慌てて障壁を張って防ごうとしたが──。

「そんなガラス細工。無駄です」

 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!

 フリーゼの攻撃は障壁を一瞬で粉砕し、スキァーヴィに直撃。大きな音を上げて大爆発を起こす。

 スキァーヴィの肉体が後方に吹き飛び、壁にたたきつけられた後、床に簿取と肉体が落ちる。

 痛みに耐えながら何とか起き上がろうとしたスキァーヴィ。しかし──。


 スッ──。

 彼女の喉元に、フリーゼが剣を突き刺す。

 そのままフリーゼは言い放つ。

「私達の優劣は、完全につきました。勝敗は、明白です。」

「ついてない、負けてない!」

 座り込み、腕を抑えながらスキァーヴィが叫ぶ。魔力は底をつきかけていて、体はボロボロ。
 誰の目から見ても満身創痍。

 勝負の行く末は、誰の目から見ても明らかだった。
 しかし、スキァーヴィはそれを認めようとしない。

「ふざけないでよ。私は、こんなところで負けてなれないのよ!」

 フリーゼは、スキァーヴィの目をじっと見る。

(本気で思ってるようです。決してハッタリや一時の感情からくるものではありませんね……)

 強い意志を持っている目。何かは分からないが、強い想いをスキァーヴィから感じ取っている。

「しかし、私だって負けるわけにはいきません。行きますよ──」

 フリーゼはためらいながらもスキァーヴィに最後の一撃を与えようと、踏み込もうとする。

 すると──。
「あなたは……」

 スッ──。

 二人の間に何者かが割って入ってくる。その光景に、フリーゼは言葉を失う。


「スキァーヴィ。私だよ──。私がわかる?」

「ソルト──どうして?」

 肩が露出したワンピースにひらひらのミニスカート。
 淡いぽわぽわとした髪。あどけない顔つき。
 か弱くて、かわいらしい女の子。

 そこにいたのは、ソルトの姿だった。
 フリーゼは思わず攻撃をやめた。

「ソ、ソルト──。う、ウソでしょ──」

 スキァーヴィはその姿を見て両手で口元を抑え、ソルトをじっと凝視している。
 彼女の姿に動揺しているのは明らかだった。


「何で、何でソルトがここにいるの?」

「私だって商人の娘。ひそかに許可書を手に入れたの。あなたに居たい、その一心で──」

「会いたい? ふざけないでよ……」

 ソルトはじっとスキァーヴィを見つめながら、ゆっくりと近づく。
 あどけない顔つきで、恐怖も感じながらも、その目に強い意志があるのがわかる。

 スキァーヴィはそれに合わせるかのように体を震わせ、一歩一歩と後ろに後退していった。

「ふざけてなんてない」

「私は、ずっと話がしたかった。あなたと お願い、話を聞いて──」

「貴方に私の、何がわかるのよぉぉぉっっ!」

 スキァーヴィは心の中の迷いを振り切ろうとしているかのように、目をつぶり、ソルトを突き飛ばした。
 ソルトの体はそのまま吹き飛び、尻もちをついて倒れこむ。

 そしてお尻を抑えつつ、視線をスキァーヴィに向ける。

「わかるもん。恐怖に怯えていて、助けてって心の中で叫んで、震えているのが!」

「もう黙って!」

 スキァーヴィはその言葉を遮るようにして叫び、剣を振り上げた。

「させません!」

 フリーゼはソルトの安全のため、スキァーヴィとの間に立つ。

「二人まとめて、片付ける!」

 そう叫んで、スキァーヴィは振り下ろす。
 フリーゼはそれを受け止めると、くるりと剣を回転させ、スキァーヴィに向かって打ち込んだ。スキァーヴィは何とか身をかがんで回避したものの──。

「動揺しすぎです。動きが散漫ですよ──」

 回避したスキァーヴィの胸を思いっきりけり上げた。
 スキァーヴィはソルトを見てから、体を震わせ明らかに動揺しているのがわかる。

 それは、戦いにも影響を及ぼしていた。
 攻撃は単調、フリーゼの意図に気付くことができず、攻撃をまともに食らう始末。

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」

 そんな気持ちをかき消す様に叫ぶ。まるで、フリーゼの言葉を認めているかのように……。

「投降してください。もう、あなたでは私に勝つことはできません」

「いやぁぁぁぁぁ!」

 そして──。

「それは、出来ないのよぉぉぉ!」

 そう言ってスキァーヴィはフリーゼに背中を向けた。
 人気のない薄暗い道へと走っていく。

「逃がしませんよ!」

 フリーゼは、彼女の後を追う。


 大きな会場から、どこに続くかわからない暗い道へ。
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