~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

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ローデシア帝国編

俺とアドナの、決着

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 俺の力は違う。
 フリーゼから受け取った力だ。

 力を感じているからわかる。俺が強い力を発揮できるように、しかし、俺の肉体に悪影響が現れないように調整されているのが──。


 フリーゼの暖かさを、全身から感じている。安心して、その力にゆだねることができる。
 だからアドナの攻撃。それをよく見ると力に振り回されているのがわかる。

 剣をなぎ払うと、体もそれにつられて体が横にそれる。突きを見舞えば、体がそれに引っ張られている。

 力への信頼。それが俺とお前の差だ。
 俺は一気に踏み込んでいく。その姿を見たアドナはニヤリと笑みを浮かべ、同時に攻撃に出た。

「フッ──。ついに開き直ったか。これで終わりだ、覚悟しろぉぉぉぉぉ!」

 そしてアドナは剣を振り上げてから、俺を目掛けて一気に剣を振り下ろす。

 剣に込められている魔力は、今までのアドナではありえないくらいのものだった。
 まともに食らえば、それで勝負はついてしまうだろう。

 けれど、そんなことはさせない。俺は全身から力を抜いて、体中をリラックスさせる。
 口で言うだけなら簡単だが、この攻撃を食らったら死ぬかもしれないような状況で、体をリラックスさせるなんて簡単な事じゃない。

 フリーゼの力があるから、これができる。

 スッと剣をアドナの攻撃してくる剣に向かって突き刺す。
 そして切っ先がアドナの剣に触れた。

 それから、体の力を抜いたまま剣を回転させる。俺の体はアドナの振り下ろす力を利用しながら右下方向に体を反らした形になる。

 上手くアドナの攻撃を受け流し、なおかつアドナの無防備な体に迫ることに成功。

 少しでも余計な力が入ってしまえば力を受け流すことができず、失敗してしまうだろう。
 フリーゼの力があるからこそ、安心してそれに背中を預けることができる。

 おまけにアドナは勝負を決めようと前のめるになったため、剣では対応できない。

「き、貴様ァァァァ──」

「さあ、決めさせてもらうよ」

 アドナは無理やり攻撃をかわそうと両足に魔力を込め、無理やり飛び上がる。
 俺はその発想に驚いたが、空中にいる状態では攻撃に対応することはできない。

 宙にいる無防備なアドナに向かって、剣に最大限魔力を込め──。
 一気に振りかざす。

 集いし思いが、新たな業火の力となる

 ──ファイアーエクシーズ・エクスプローション──


 俺と、フリーゼの力だ。振りかざした剣から炎状の光線がアドナに向かって飛んでいく。
 今までの俺の攻撃とは、比べ物にならないくらいの魔力。

 宙にいるアドナは何とかもがこうとするが、いくらもがいたところでなにもない宙を悪あがきするように手足を動かすだけ。

 どうにかできるはずもなく……。

 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!

 大きな爆発音を上げ、アドナの体が真上に吹き飛んで天井にたたきつけられる。

 そして数秒ほどすると、アドナの体はそのまま地面にたたきつけられた。



 アドナはボロボロ。肉体からほとんど魔力は感じられない。
 どうするか……とりあえず、話しかけよう。

「アドナ、勝負はついた。おとなしく──」

「う、うるっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 アドナは顔を上げて叫ぶと、両腕に力を入れ、ゆっくりと立ち上がる。すでにアドナに魔力はほとんどないし、ふらついているのがわかる。

 そして俺を指さし、叫んだ。

「フッ! こ、こ、今回は手加減してやったんだ。そうしないと、あっという間に勝負がついちまうからな。だが、次こそは──本気を出して。お前をぶっ倒してやる!」

 思わず言葉を失ってしまう。

 誰ががどう見たって、今のアドナは本気だった。どう考えても負け惜しみの言葉。
 アドナはプライドが高く、俺より弱いことを絶対に認めない。

 それゆえの、アドナの捨てセリフ。

 そしてアドナは、最後の力を振り絞り、この場を去っていった。
 これ以上ダメージを食らうと、命が危ないだけあって、まるでゴキブリのような素早さ。

 すぐに暗い地下道を走り去ってしまった。

 せっかく優位に立っていたのに残念だが、先にどんな罠があるかわからないのに、突っ込むわけにはいかない。

 アドナが走り去った先を見ながら、俺はリングの床にへたり込む。
 俺にもう戦える余力はない。
 無理にフリーゼに加勢しようとしても、逆に足を引っ張ってしまいそうだ。

 俺は、ゆっくりとフリーゼの方へと向かっていく。
 大丈夫。フリーゼは、絶対に負けない……。




 一方フリーゼ。

「さあ、一気に行かせてもらいますよ」

 序盤こそは二人が激しく火花を散らし、互角に戦っていた。
 強力な電撃がフリーゼに向かって襲い掛かると、フリーゼは軽快なステップでかわす。

 やはり、加護を発動させながらだと、フリーゼも苦戦をしてしまうようだ。

「どうしたの? フリーゼ。あなたの実力、こんなものなの?」

 フリーゼは答えない。スキァーヴィの雷を纏った剣。力任せの一撃だが、その力の強さに防戦一方だ。

「フライだっけ? 弱い彼氏さん、だわねぇ。見捨てちゃえば、あんなの」

 フリーゼがピクリと体を反応させる。それを見たスキァーヴィは、さらに挑発していく。

「反応したでしょ、今。ほら、あんな弱い彼氏さん見捨てて、私との戦いに全力を出しなさい。私の雷撃で、真っ黒こげになる前にねぇ」

 スキァーヴィは剣を振り下ろし、フリーゼに切りかかる。
 フリーゼは表情を変えず、ただ呟いた。

「私もフライさんも、絶対に負けません!」
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