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ローデシア帝国編

俺とフリーゼの激闘

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「フライさん。私の力、受け取ってください」

「でも、フリーゼだって」

 そう、フリーゼが相対しているのはザコ敵ではない。この国でも有数の力を持つ女、スキァーヴィだ。おまけにどんな力を持っているのか全く分からない。

 加護の力を使うということは、それだけフリーゼにとって負担になってしまうこと。
 強い相手と戦いながらやっていいことでなはい。

「危険だ。フリーゼは目の前の相手に専念して──」

 例え俺がダメでもフリーゼが無事なら何とかなる。
 アドナに負けるのは癪だが、そんな感情的な事を言っている場合ではない。生き残ることを第一に考えなきゃいけない。

 だからフリーゼが無事でいるため、万全の状態で戦わせたい。

「俺は、大丈夫だから──」

 しかし、フリーゼは俺を向いてほほ笑む。


「いつも私はフライさんに支えられてきました。しかし、いつも支えられてばかりというのは、辛いです。今回くらいは、私がフライさんを支えたい──」

 強気な目線での言葉。何を言っても撤回することはないだろうというのが、俺にはわかる。

 俺はコクリとうなづいて、言葉を返した。

「わかった。けれど、何かあったら、自分の身を守ることを最優先にして……」

「──はい」

 そして俺はリングに上がり、アドナをじっと見つめる。

「分かった。勝負の方、受けてやるよ。来い! アドナ」

 そして俺とアドナの決戦が始まる。





 対するフリーゼ。


 フリーゼとスキァーヴィが互いににらみ合う。

「スキァーヴィさん。武器を捨てて投降するなら、危害は加えません」

「冗談! いくらあなただって、私は負けるつもりなないわ」

 スキァーヴィは腕を組みながら自信満々に言い放つ。
 いくらフリーゼがフライに力を供給しているとはいえ、精霊である彼女の力は人間とは比べ物にならないものがある。

 いくらスキァーヴィが強いからって、簡単に覆せるものではない。

 フリーゼは当然理解している。

(あの自信。やはり使用していますね──)

「死なない程度にニクトリスを注入したところで、私との差は埋まりませんよ」

 そう、ニクトリスだ。
 スキァーヴィはニヤリと微笑んだまま言葉を返す。

「差があるかどうかは、戦ってみればわかるわ」

 自分が勝つとわかっている、自信に満ちた表情。
 フリーゼは理解した。

(何か策がありますね)

 実力差をひっくり返す策略。何も考えずに突っ込むのは危険。
 しかし、だからといって何もしなければスキァーヴィを倒せない。

(それなら、罠だとわかっていても、相手の懐に飛び込んでいきます!)

 そしてフリーゼは左手を上げ、自身の剣を召喚。

 星脈聖剣<ステラブレード>

「いいじゃない。さあ、この私の大活躍ショーの始まりよ!」

 ウォォォォォォォォォォォォォォォ──!

 観客たちは、大きく大歓声を上げる。
 そして、二人は一気に距離を詰める。


 激闘の、始まりだった。






 一方、俺とアドナ。


「フライ、フライ……」

 表情を失い、大きく見開き、俺を見る。

「御託はいい。さあ、戦ってどっちが強おう。アドナ」

 俺は剣をアドナに向け、ただそういった。
 アドナは、俺のことを何よりも恨んでいる。なんて言ったって、その心が揺らぐことはないだろう。

 だから一対一で戦ってケリをつける。ただそれだけ。
 アドナは、俺をじっと見た後、剣を振りかざし──。

「さあ、今日がお前の命日だぁぁ。フライィィィィィィィィィィィィィィ────!」

 そう叫んで一目散に俺の方へと向かっていく。

 剣を何度も何度もぶん回し、俺に攻めかかる。

 俺は、攻撃を受けたがその瞬間に理解した。
 まるで獣のような、本能、力任せの攻撃。俺はその攻撃をいなし、受け流して対応。

 力加減から理解できる。真正面からの力のぶつかり合いでは、確実に勝てない──。


「この逃げ虫が! この臆病者がぁぁ! やる気があるのかぁぁぁ!」

 アドナは俺の行動にイライラしているせいか、力任せに攻撃し、俺を挑発する。
 しかし、そんな安い挑発に俺は動じない。

 戦いに思いを乗せて全力を出すことと、ただ感情任せに突っ込むことは違う。

 それでも、感情に任せたアドナの攻撃に、俺は苦戦を続ける。

 むやみに前に出ることはせず、リングの中で少しずつ後退しながら攻撃に対応していく。
 本当に単調になっている。俺への深い怒りが、アドナの冷静さを完全に失わせている。

 ここは我慢だ。そんな精神状態で、まともに戦えるはずがない。モーションもいつもより大ぶりで、力任せになっているのが一目瞭然だ。

 そしてアドナが回転を付け一気に薙ぎ払ってきた攻撃。
 それを低く屈んで攻撃をかわす。

 ここだ!

 俺の目の前には攻撃を空振りさせ、前のめりになったアドナの無防備な胴体。
 ようやくできたチャンス。俺は一気に踏み込む。


 そして、一気に剣をアドナに向かって突き刺した。

 これでアドナに致命傷──そう思った矢先。
 信じられない姿に、俺は唖然とする。

 そこにあるのは自らの歯で俺の剣を受け止めるアドナの姿。
 何とアドナは、俺の剣に対して嚙みついてとらえたのだ。

「しまった!」

 慌てて剣を引き戻そうとするも、予想もしなかった行動に反応がわずかに遅れてしまう。

「あふぇうなふぉ──フファイッッッッッッ」

 アドナは剣にかみつきながら叫ぶ。
 そして俺が剣を引くよりも一歩早く、アドナが俺の剣の柄を掴み──。


 スッと自分の元へと引き寄せた。
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