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ウェレン王国編

唯一王 遺跡の最深部へ

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 そして俺は螺旋状の階段を下る。
 薄暗い道を抜けると、やや小さい部屋へ。


 そこに、二人の姿はあった。

「フリーゼ、どうだった?」

 二人とも死闘を繰り広げていたのか、ボロボロでみずほらしい姿で横になっている。
 しかし、戦いが終わっているというのはその様子から理解できた。

「なんとか、クリムは取り戻しました……」

「そうか。それは良かった──」

 俺がその言葉に思わず安堵する。
 しかし、フリーゼは座り込んだままどこか残念そうにうつむいている。

「しかし、申し訳ありません。私はもう……」

 フリーゼが、暗い表情で話しかけてきた。
 彼女の外見を見るだけでわかる。かなり魔力を消耗していて、もう戦えないというのが──。

 しかし、俺一人で突っ込んでいってどうにかなるのか──。
 あのゼリエルとタミエル相手に──。

 しかし、そうしなければ彼女たちの行動を止められないのも事実。
 刺し違えるのも覚悟して、戦いへと望むつもりだ。

「分かった。じゃあ、フリーゼはここにいて」

「待ってください。一人で行くのは無茶です。やめて下さい」

 フリーゼは心配そうな表情で立ち上がり俺の肩を掴む。ダメだ、こうしている間にもゼリエル達が何か企んでいるかもしれない。

 確かに、俺一人じゃ力不足なのは事実だけれど。けど、どうすればいい──。
 すると、クリムが話に入ってきた。

「まって、私もいるわ──」

 ボロボロの姿、身体を震わせながら、ゆっくりと立ち上がる。

「できるんですか?」

「ええ。貴方が私が力尽きる前に洗脳を解いてくれたから、私はまだ戦える。フライ。あんた、加護の術とか使える?」

 すでにフリーゼは魔力を使いつくしていて戦えない。しかし、クリムはまだ戦えるようだ。
 それなら、答えは一つしかない。

「使えるよ。クリムにもできるとは思う──」

「……お願い」


「当たり前じゃない。敵にいいように同士撃ちさせられて、何一つ救えないなんて、そんなこと──。私が私を許せないわ!!」

 クリムも、大分消耗している。当然だ──。自らの怒りをぶつけ、全力でフリーゼと戦っていたのだから。

 それでも、クリムは立ち上がる。
 脚は震え、息切れ。

「無茶です。本当に死にますよ、クリム」

 フリーゼが心配そうな表情になり、止めようとする。
 しかし、俺もクリムも、顔を横に振って否定する。
 答えなんて、すでに決まっていた。

「それでも、俺はやらなきゃいけないんだ」

「そうよ。街の人たちの、みんなの運命がかかっているんだもの」

 俺もクリムも、決意の気持ちを込めてフリーゼに言葉を返した。

「以前レディナに言われたの、覚えているか? フライは無茶をし過ぎる。もっと周囲を信じろって──」

「……ありましたね」

「その言葉自体は、本当にありがたかった。肩に乗っている重しが取れた気がした」

 あの時、みんなが戦っているのに、俺だけが後ろにいるだけ。それが嫌だった。
 それで無茶をして、説教を食らった。

 俺を大切に想ってくれたあの言葉。本当にありがたかった。けれど──。

「でも、今は無茶をしなきゃいけない時なんだと思う。みんなを守るために、だから、危険だとわかっていても行く」

「そうよ。今はいかなきゃいけないの! フリーゼ……」

 そう、今は戦わなきゃいけないとき。無理をしても、周りに何と言われても、やらなきゃいけないときなんだ──。

 俺とクリムの言葉に負けたのか、フリーゼは一つため息をついてあきらめたかのような笑みを浮かべ、言葉を返した。

「──ですね。わかりました、二人とも──絶対に生きて帰ってください。それだけは、約束してください」

「わかった、約束するよ」

 俺はそっと言葉を返し、クリムと共に道の先へと進んでいった。


 松明の光が歩いていくごとにぼっぼっと光り、俺たちの足元を照らす。


 俺もクリムも、特に言葉は交わさなかった。
 目的なんて、言わなくてもわかる。一つしかない──。

 この街を、大切なもの守るということだ。





 そして俺たちは、さらに螺旋階段を下っていく。
 しばらく真っ暗な道を下った後、平坦な道へ。

 さっきまでとは打って変わって、壁から光が発せられることも、何かの壁画があるようなこともない。

 俺もクリムも何もしゃべらず、無言で突き進む。
 そして、その先に大きな扉。

 一度クリムに視線を向けた。
 互いにコクリと頷いて、扉に手を置いて互いに扉を開ける。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ──。

 扉が開いて、その先には広い部屋。





 そして、部屋の奥に三人はいた。

 ゼリエルとタミエル、グランだ。

 ゼリエルは俺たちに視線を向けると、冷静な口調で言葉を発する。

「ほう、洗脳を打ち破ったのですね……。素晴らしいの一言です」

「ええ、フリーゼのおかげよ。そして、フライのおかげで私は、まだ戦うことができるわ」


 クリムの、闘志あふれた目。それを察したのか、ゼリエルとグランは警戒した目つきでその場から一歩引いた。
 そしてクリムが前方を見ながら叫ぶ。

「ステフ!」

 クリムがその姿を見て思わず叫ぶ。

 手枷足枷を付けられ、倒れこんでいる。意識を失っているのか、その体はピクリとも動かない。

 ゼリエルはやれやれと言った表情になり、平然と言葉を返した。

「気にするなよ。ちょっと眠ってもらっているだけだ。殺しなんかしないって──」
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