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ウェレン王国編
私なら、出来る──
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「生き残るために、勝ち残るために特化した戦いということか」
「ご名答。あんたらみたいに、名誉や綺麗さなどとは無縁の力。だが貴様達より勝ち残ることに、生き残ることに特化した力だね」
その言葉に、メイルの表情に険しさがともり始める。対してハウゼンは、余裕の表情。
「まあ、あんたも相当な実力者だね。並の冒険者なら、すでに五回は死んでいるだね」
「誉め言葉として、受け取っておくよ」
それでもメイルは攻撃を耐え、チャンスをうかがう。
いままででも、想定外の強さを持つ敵に遭遇したことはあった。
どんな強い敵であっても、必ずチャンスが来るとわかってるメイル。集中を切らさずに、攻撃のチャンスをうかがう。
そして、再びハウゼンの連撃が始まる。
ハウゼンの攻撃を何とか受けきるメイル。
(危険だが──、やってみよう)
メイルはほんの少し賭けに出た。今までは来る攻撃に対して隙を見せない様に防御を第一に考えていた。
だから、ハウゼンも攻撃に出れば自分が引いてくると思い込んでいる可能性がある。
(行こう──)
そしてメイルは防御の合間を縫って無理やり反撃に出た。
先ほどとは違い前に出た後、力任せに猛攻撃を仕掛ける。
ハウゼンは迫りくる剣を自身の穂先ではじき返すと、その衝撃でパチンと大きな音が響き渡り、大きな衝撃で弾き飛ばされてしまう。
まるで反発するような力。それも肩が抜けるんじゃないかというくらい大きなものだ。
「くっ──」
「うっ……。腕がちぎれそうだね」
「──奇遇だな。私も同じことを考えていた」
そして心の中で、うなづいた。
(逃げていてばかりではだめだ。こっちも、攻撃に出ないと──)
その衝撃に思わず一歩下がり、右腕を抑える。ぶつかり合った衝撃で右腕に重い痛みが走った。
もっともそれはハウゼンも同じなようだ。
苦悶の表情を浮かべ、衝撃を殺そうと背後に飛びつつ地面に杖を突き立て着地。
その動きはとても柔軟な身のこなしをしていて、全くスキがない。
「いいねぇ今の。それなら、こっちも本気を出させてもらうよ!」
ハウゼンが再び攻撃に出る。メイルも、反撃に出ようと前に出る。
そして、二人の攻撃がぶつかり合った時、それは起こった。
「な────ッッッ!!」
受けた時の、今までとは違う衝撃に、思わず数歩引いた。
しかしハウゼンがそんなスキを待ってくれるはずもなく、さらに攻撃を加えてくる。
ぶつかった時の衝撃。
それに思わず考えこんでしまうメイル。自身の剣とハウゼンの槍が衝突すると、まるで反発し合うかのように強い力で吹き飛ばされてしまうのだ。
まるで、一回ぶつかり合うごとに剣が悲鳴を上げているかのようだ。
そして、互いに弾き飛ばされるのであれば有利になるのは武器のリーチが長いハウゼンの方だ。
メイルはそれに比べると、間合いに入るためにハウゼンの攻撃をかいくぐらなければならないため、後手に回ってしまう。
そしてこの衝撃、自分よりも剣そのものにダメージが言っている気がする。
ハウゼンの槍に視線を向けると、彼女の槍もダメージを受けていて、どこか傷だらけのようにも見える。
すると彼女もその視線に気が付いたようで、にやりと口をゆがめた。
「ほう嬢ちゃん。押されているのにこっちの心配をしてくれるのかい。優しいねぇ……」
「この反発の秘密を言え!!」
「残念だが、それはできないねぇ。生きるか死ぬかの真剣勝負なんだから。自分で、たどり着くことだねぇ」
そしてハウゼンは再び突っ込んでくる。
メイルはこの反発の力の正体がわからず、引き気味に対応。
「ほらほらさっきまでの威勢はどうした。そんなへっぴり腰じゃあ、かすり傷一つ与えられないよ!!」
ハウゼンは、自分が優勢なのを生かしてどんどん前に出る。
といっても、イノシシの様に攻撃をするだけではなく、メイルの奇襲やカウンターもしっかり警戒していて一切スキ気がない。
メイルは戸惑いながらも、徐々に冷静さを取り戻す。
(目で見ても、どう攻略すればいいかわからない。それなら──)
メイルは、何とかハウゼンの攻撃に対応しながら理解した。どうすれば、ハウゼンの策を看破できるか。
そして再び剣が悲鳴を上げるように反発。二人の距離が離れると──。
「き、貴様──。どういうことだね?」
ハウゼンがその姿に驚愕して目を大きく開く。メイルは深呼吸をすると、剣を持った左手をだらんと下ろし、目をつぶり始めたのだ。
「ふざけるな、この期に及んで舐メプかい?」
「なめてなどいない。貴様の種を理解するには、これが一番。そう感じただけだ」
そう、メイルは意図的に目をつぶったのだ。
彼女は、感じたかったのだ。この場一帯に、響き渡る力を。目ではなく全神経で。
それならば、目で見える風景はただの雑音でしかない。
目を閉じ、暗く閉じた世界。
その中で神経を極限まで研ぎ澄ます。感じ取る。目の前にある、力の正体を──。
そして理解した。ハウゼンの反発の力は、槍の刃の部分だけにしかないと──。
ハウゼンの槍で、触れると反発する部分は先端にある刃の部分だけ。それ以外を触れれば反発はしない。
(大丈夫、私には、攻略法がある)
「この野郎。舐めやがって。串刺しにしてやるよ!」
冷静にハウゼンの力の種を理解したメイルに、ハウゼンが突っ込んで来る。
(大丈夫。私なら、出来る──)
「ご名答。あんたらみたいに、名誉や綺麗さなどとは無縁の力。だが貴様達より勝ち残ることに、生き残ることに特化した力だね」
その言葉に、メイルの表情に険しさがともり始める。対してハウゼンは、余裕の表情。
「まあ、あんたも相当な実力者だね。並の冒険者なら、すでに五回は死んでいるだね」
「誉め言葉として、受け取っておくよ」
それでもメイルは攻撃を耐え、チャンスをうかがう。
いままででも、想定外の強さを持つ敵に遭遇したことはあった。
どんな強い敵であっても、必ずチャンスが来るとわかってるメイル。集中を切らさずに、攻撃のチャンスをうかがう。
そして、再びハウゼンの連撃が始まる。
ハウゼンの攻撃を何とか受けきるメイル。
(危険だが──、やってみよう)
メイルはほんの少し賭けに出た。今までは来る攻撃に対して隙を見せない様に防御を第一に考えていた。
だから、ハウゼンも攻撃に出れば自分が引いてくると思い込んでいる可能性がある。
(行こう──)
そしてメイルは防御の合間を縫って無理やり反撃に出た。
先ほどとは違い前に出た後、力任せに猛攻撃を仕掛ける。
ハウゼンは迫りくる剣を自身の穂先ではじき返すと、その衝撃でパチンと大きな音が響き渡り、大きな衝撃で弾き飛ばされてしまう。
まるで反発するような力。それも肩が抜けるんじゃないかというくらい大きなものだ。
「くっ──」
「うっ……。腕がちぎれそうだね」
「──奇遇だな。私も同じことを考えていた」
そして心の中で、うなづいた。
(逃げていてばかりではだめだ。こっちも、攻撃に出ないと──)
その衝撃に思わず一歩下がり、右腕を抑える。ぶつかり合った衝撃で右腕に重い痛みが走った。
もっともそれはハウゼンも同じなようだ。
苦悶の表情を浮かべ、衝撃を殺そうと背後に飛びつつ地面に杖を突き立て着地。
その動きはとても柔軟な身のこなしをしていて、全くスキがない。
「いいねぇ今の。それなら、こっちも本気を出させてもらうよ!」
ハウゼンが再び攻撃に出る。メイルも、反撃に出ようと前に出る。
そして、二人の攻撃がぶつかり合った時、それは起こった。
「な────ッッッ!!」
受けた時の、今までとは違う衝撃に、思わず数歩引いた。
しかしハウゼンがそんなスキを待ってくれるはずもなく、さらに攻撃を加えてくる。
ぶつかった時の衝撃。
それに思わず考えこんでしまうメイル。自身の剣とハウゼンの槍が衝突すると、まるで反発し合うかのように強い力で吹き飛ばされてしまうのだ。
まるで、一回ぶつかり合うごとに剣が悲鳴を上げているかのようだ。
そして、互いに弾き飛ばされるのであれば有利になるのは武器のリーチが長いハウゼンの方だ。
メイルはそれに比べると、間合いに入るためにハウゼンの攻撃をかいくぐらなければならないため、後手に回ってしまう。
そしてこの衝撃、自分よりも剣そのものにダメージが言っている気がする。
ハウゼンの槍に視線を向けると、彼女の槍もダメージを受けていて、どこか傷だらけのようにも見える。
すると彼女もその視線に気が付いたようで、にやりと口をゆがめた。
「ほう嬢ちゃん。押されているのにこっちの心配をしてくれるのかい。優しいねぇ……」
「この反発の秘密を言え!!」
「残念だが、それはできないねぇ。生きるか死ぬかの真剣勝負なんだから。自分で、たどり着くことだねぇ」
そしてハウゼンは再び突っ込んでくる。
メイルはこの反発の力の正体がわからず、引き気味に対応。
「ほらほらさっきまでの威勢はどうした。そんなへっぴり腰じゃあ、かすり傷一つ与えられないよ!!」
ハウゼンは、自分が優勢なのを生かしてどんどん前に出る。
といっても、イノシシの様に攻撃をするだけではなく、メイルの奇襲やカウンターもしっかり警戒していて一切スキ気がない。
メイルは戸惑いながらも、徐々に冷静さを取り戻す。
(目で見ても、どう攻略すればいいかわからない。それなら──)
メイルは、何とかハウゼンの攻撃に対応しながら理解した。どうすれば、ハウゼンの策を看破できるか。
そして再び剣が悲鳴を上げるように反発。二人の距離が離れると──。
「き、貴様──。どういうことだね?」
ハウゼンがその姿に驚愕して目を大きく開く。メイルは深呼吸をすると、剣を持った左手をだらんと下ろし、目をつぶり始めたのだ。
「ふざけるな、この期に及んで舐メプかい?」
「なめてなどいない。貴様の種を理解するには、これが一番。そう感じただけだ」
そう、メイルは意図的に目をつぶったのだ。
彼女は、感じたかったのだ。この場一帯に、響き渡る力を。目ではなく全神経で。
それならば、目で見える風景はただの雑音でしかない。
目を閉じ、暗く閉じた世界。
その中で神経を極限まで研ぎ澄ます。感じ取る。目の前にある、力の正体を──。
そして理解した。ハウゼンの反発の力は、槍の刃の部分だけにしかないと──。
ハウゼンの槍で、触れると反発する部分は先端にある刃の部分だけ。それ以外を触れれば反発はしない。
(大丈夫、私には、攻略法がある)
「この野郎。舐めやがって。串刺しにしてやるよ!」
冷静にハウゼンの力の種を理解したメイルに、ハウゼンが突っ込んで来る。
(大丈夫。私なら、出来る──)
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