~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

文字の大きさ
上 下
139 / 203
ウェレン王国編

クリムへの罠

しおりを挟む
「待てクリム。ゼリエルの様子がおかしい、何か罠がある!!」

 俺は数歩踏み出して叫ぶが、クリムはそんなこと気にも留めない。

「罠なんて、このクリム様に通じるわけないでしょ。そんな小細工ごと、私のパワーで粉砕してやるわ」

 自身の剣をゼリエルに向かって突きつける。その姿にタミエルが一歩引いてゼリエルに話しかけた。

「おいおい、クリムって精霊でも強い方なんだろ。大丈夫かよ……。

 どこか不安な表情。しかし、ゼリエルは微動だにしない。クリムに向かってフッと不気味な笑みを見せつけると、小声でささやいた。

「大丈夫です。いくら力があっても、こいつなら、すぐに攻略できるです」


 そしてゼリエルは自信満々な笑みのままピッと指をはじいた。
 その瞬間、はじいた指から青白い光が生じ始める。


「クリム。下がりなさい。彼女から、ただならぬ力を感じるわ!」

 フリーゼがその力の邪悪さに気付き、警告するが。クリムは気にも留めない。

「余裕余裕。どんな力だろうと、私の力で押し潰して見せるわ」

 その光はさっきよりも力を増し、パッと閃光が走る。

 い瞬だけ、思わず目をつぶってしまった。
 そして光が再びやんだ。
 再び目を開け、周囲に視線を移すと、その光景に驚愕した。


「ステファヌア様?」

 俺達の後ろにいたはずのステファヌアが、一瞬で消滅。その体をタミエルが右手で抱え込んでいるのだ。
 意識を失ったステファヌア。思わず叫ぶ。

「どういうことだ──」

「なあに、ちょっと借りるだけさ。殺しはしないよ。それに、注意するべきなのは他にもいるんじゃねぇのか?」

 タミエルの挑発するような物言い、俺は周囲に視線を向けた。


「ステフ……」 


 クリムの様子がおかしいことに気付く。
 表情を失い、あぜんとしている。大切なステファヌアを取られて、ショックを受けているのだろうが、クリムの性格ならすぐに感情的になり、すぐにゼリエルとタミエルに突っ込んでいっているようにも感じる。

 クリムは、ぽかんと口を開け、数秒ほど固まった後、再び視線を向け──そして。

「フライ、フリーゼ──お前たち全員。絶対許さない!!」

「なんだ。どうしたクリム!」

 クリムは血眼になりながら剣を振り回し、俺たちに襲い掛かってきた。
 突然の出来事で戸惑いながらも、俺とフリーゼは何とか攻撃を受けていく。


「皆さんここは俺達が対応します。下がってください」

 その言葉に、要人や兵士、冒険者達は後ろの壁伝いに退避。

「クリム、どうしたんだ。行ってくれ」

 俺がクリムに叫ぶが、クリムは答えず、その間にも攻撃を加えていく。

 クリムは本気で俺たちを殺そうとしている。ふざけてなんかいない。その眼は、本当に、俺達を憎んでいる。

 それでも俺は攻撃を受けながら必死に話しかける。しかし、クリムは全く言葉を返さない。

「殺す。殺す。殺すゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ──!! お前たちを、ぶっ殺してやるぅぅぅぅっっっ!!」

 全く聞く耳を持たない。
 何があったかはわからんけれど、クリムの身に何か起きたということは理解した。

 フリーゼがこっちに近づいてひそひそと話しかけてくる。

「とりあえず。私に時間をください──」

 そう言うとフリーゼは、さらに急接近してきた。


 ぎゅっと腕を掴んで腕を組んだような状態になる。
 フリーゼの柔らかい肌が当たり、一瞬ドキッとしてしまうが、今はそんな場合ではない。

 そしてフリーゼは目をつぶると、その身体が青く光りだす。
 それからその光は、俺の体を包み始める。

「フライさん。目を閉じてください。かかる時間は一瞬です」

「──わかった」

 フリーゼの言葉通り俺は目を閉じる。すると、瞼の裏に、とある光景が生まれた。

 声のタイミング、ゼリエルやタミエルの居場所からしてさっきの閃光が刺し、クリムが悲鳴を上げた時間だ。

 しかし、先ほどとは決定的に違う所がある。

 それは、俺とフリーゼ、国王親子だ。

 俺とフリーゼがステファヌアを捕らえ、ケイルとジロンがステファヌアの腹をぶん殴る。
 そしてステファヌアは血を吐いて、ピクリとも動かなくなってしまった

 倒れこんだステファヌアを意気揚々と肩に乗せたタミエルが、俺たちに向かって親指を上げる。すると、そこにいた俺とフリーゼもそれに合わせるかのように親指を上げたのだ。

 俺はすぐに理解した。この映像は、クリムが見た光景なのだと。

「これは、ゼリエルが見せた光景なのか?」

「はい、今の術式は他人の視点から物を見ることができる術式です。強力な半面、魔力の消費が激しく、戦闘での使用では避けたかったのですが──。クリムに何があったのかが分からなければ、対策のしようがありませんので──」

 そして俺たちはこの空間から戻った。数分の間いたように感じても、空間に居た時間自体は一瞬なのだろう。
 すぐにクリムが攻めかかってきて、攻撃に対応。

「そういう──、ことだったんですね……」

 フリーゼの息が軽く荒くなっている。消費魔力が大きいのだろう。

 フリーゼ息切れするなんて相当だぞ。

 と考えてみたが、簡単にできるなら以前からやっているはずだ。普段は魔力の消費が多くて使えないけれど、今はそんなリスクを負っても使わないといけない。

 そんなところだろう。


 俺はクリムの攻撃に対応しながらゼリエルに向かって叫んだ。

「お前たち、クリムに何をしたんだ。言え!」

「そこまで怒るなよ。なぁ~~に、ちょいと認識を変えて洗脳を施しただけさ」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

俺の畑は魔境じゃありませんので~Fランクスキル「手加減」を使ったら最強二人が押しかけてきた~

うみ
ファンタジー
「俺は畑を耕したいだけなんだ!」  冒険者稼業でお金をためて、いざ憧れの一軒家で畑を耕そうとしたらとんでもないことになった。  あれやこれやあって、最強の二人が俺の家に住み着くことになってしまったんだよ。  見た目こそ愛らしい少女と凛とした女の子なんだけど……人って強けりゃいいってもんじゃないんだ。    雑草を抜くのを手伝うといった魔族の少女は、 「いくよー。開け地獄の門。アルティメット・フレア」  と土地ごと灼熱の大地に変えようとしやがる。  一方で、女騎士も似たようなもんだ。 「オーバードライブマジック。全ての闇よ滅せ。ホーリースラッシュ」  こっちはこっちで何もかもを消滅させ更地に変えようとするし!    使えないと思っていたFランクスキル「手加減」で彼女達の力を相殺できるからいいものの……一歩間違えれば俺の農地(予定)は人外魔境になってしまう。  もう一度言う、俺は最強やら名誉なんかには一切興味がない。    ただ、畑を耕し、収穫したいだけなんだ!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...