~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

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ウェレン王国編

そして、運命の最終日へ

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 レディナが人差し指を立てて言う。

「まず、どこを攻めて来るか、特定する必要があるわ」

「それもそうだね」

 レシアの言う通り、考えてみればそうだ。スパルティクス団が、必ず巡礼祭組を狙ってくるとは限らない。警備している俺たちを避け、大聖堂を狙ってくる可能性だってある。

「昨日の俺たちの襲撃は警戒を巡礼側に集中させるためのブラフだということだってあり得る」


 こういう戦いのとき、俺たち防御側はどこを襲撃されるかわからないので戦力を分散しなければならない一方、攻撃側は手薄な所や戦術的に有効な所、弱点など好きなところを攻撃出来て有利だ。

「──とりあえず、どこを襲撃してきてもいいように、各地に兵士や冒険者たちを配置します」

「問題は配置ね──」

 そして各自がそれについてどうすればいいのか考えこみ、この場に沈黙が走る。
 しばらくそんな空気が続くと、すっと手を上げたのがメイルだ。

「それについてですが、私に提案があります」

 そしてメイルは自分の考えを俺たちに伝える。

「それが一番、理にかなっているかと思われます」

 メイルの作戦は、俺たちとクリム、メイルを攻撃されやすいと思われる大聖堂と巡礼組に重点的に配置。

 そしてそのほかの冒険者達を大聖堂、巡礼組だけでなく市街地にもまばらに配備。するというものだ。

 悪くはない作戦だ。確かに明日、敵がどこを攻撃目標とするかといえば考えられるのはその二つだろう。

 それに対して街の方は要人たちもいないし、狙う必要だって奇襲や囮目的以外考えにくい。ならば冒険者達をまばらに配置し、状況に応じてその場所その場所に向かわせた方がいい。

「けど、ランクが高い冒険者ならともかく、そこら辺の冒険者じゃあいつらに太刀打ちできないわ」

 レディナの言う通りだ。街の各地に冒険者たちを配置するとなると、一人当たりのエリアが広くなってしまう。

 そうなるともし敵が奇襲してきたときに守り切れない可能性が出てしまう。

「ですので、各所に馬を配備します。そして襲撃したらその情報を周囲に伝え冒険者達を集中させるように指示します。伝達係の設定も頼み込みましょう」

 メイルもそれは理解していたようで、対策は考えていたらしい。


「スパルティクス団はそこまで数は多くありません。戦力的に集中できるのはせいぜい数か所。それなら、そのあたりの場所にこちらも戦力を集中させればじゅぶんに対応できます」

「メイルが言うんなら、そうなんだろうね」

 俺は彼女に視線を向け、うなづく
 はっきり言って、こういった事情はメイルの方が詳しい。俺が下手に首を突っ込むよりもずっと信用できる。

 そしてそれらをまとめて、作戦の全容を説明。俺たちをどこに、どのように配置するか。
 強さや相性などを考え、大聖堂と巡礼祭同行組に分かれる。


 ほどなくして説明は終了。


「──とりあえずは、こんなところかな?」

「まあ、この私とメイルがいれば、楽勝よ。実力の差を見せつけてやれば、相手は尻尾を巻いて逃げていくに違いないわ」

 クリムはふんと自信満々に笑みを浮かべ、腕を組んで言う。
 自分の強さに絶対的な自信を持っているのがわかる。


「じゃあ、今日はこの位でいいかな?」

「そうだね。一日中移動で疲れもあるし、後は体を休めよう」

 レシアの言う通りだ。もう打ち合わせは大丈夫だし、明日に備えて体力を回復させることだって必要だ。

 メイルは一度あくびをした後、ぺこりとお行儀よく頭を下げた。

「ありがとうございます。では明日」

「じゃあ、明日は私の大活躍ショーをたっぷりとご覧になりなさい!」

 バタン──。




 その後、俺達は変わりばんこでシャワーを浴びる。
 今日の疲れもあり、明日のことも考えすぐに寝ることにした。

 全員ベッドにつき、明かりを消す。夜空の星の光だけがこの部屋を照らす中、布団の中で考え事をしていると、隣にいるフリーゼが話しかけてくる。

「大丈夫でしょうか。明日──」

 やはり明日が心配なのだろう。どこか不安そうな声色だ。
 俺も、一丸に大丈夫とは言えない。

「わからない。けれど。これが最善だとは思う。後は、当日その場で解決するしかない」

「──そうですね」

「だから、何が起こるかは分からないけれど、全力を尽くしていこう」

「わかりました。全力を、尽くしましょう」

 フリーゼはそっとうなづいて言葉を返した後、視線を天井へと戻した。

 最終日、どんなことが待っているか俺にはわからない。ただ一つ言えるのは、今日の様に
 上手くはいかないことだ。

 けれど、たとえどんなことが待っていたとしても絶対に最後まで戦い抜いて見せる。
 そして、何事もなく巡礼祭を終えよう。

 そう心に誓い、俺達は眠りについた。




 俺達は親睦を深め、最終日の準備をしていたころ。
 彼らもまた、ことを進めている最中だった。

 ウェレンの中でも貧困層が住んでいるスラム街。

 治安が悪く、古びた壁に落書きがある建物の地下。
 普段はいわくつきの商社が潜伏しているこの場所。

 雑多で違法薬物や闇で仕入れた食品が入った木箱が置かれているランプで照らされた薄暗い部屋。


 そんな場所に彼女たちはいた。

「──ふぅ。いよいよ明日は最終日だね」

「ええ。しかし、厄介なのが敵に居ましたね。ハウゼン様」


 酒の入ったワイングラスを片手に木の椅子に座りながら話しているのはハウゼン。

 そして彼女を取り囲むように四人の人物。
 若々しい外見のグラン。目つきが悪い女のザニア。スキンヘッドで長身の男ヴィッツ。
 スパルティクス団の「三刑士」だ。

 さらにもう一人は──。

「フライか。あいつらは以前、出会ったことがある」

 そう、トラン──。
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