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ウェレン王国編
二日目を終えて──
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周囲に目を回す。デュラハンとの戦いがどうなったかを見てみたのだが──。
「──何とか片付いたぞ」
「これもあの女の子二人のおかげだな」
傷だらけの姿で座り、ほっと体を休めている冒険者たちの姿。
すると、誰か肩をたたいてくる。
「デュラハン達は、全部退治したわ」
「こっちはもう。大丈夫だよ」
レディナとレシア。そして他の冒険者たちの活躍により、ここにいつデュラハンは全て倒したようだ。
二人とも軽く息が上がっているが、特に痛手は追っていなさそうだ。
「ありがとうレディナ、助かったよ」
「私だけじゃないわ。みんなのおかげよ」
「そうだ、ハリーセルは?」
レシアの言葉に俺は周囲に視線を送る。ハリーセルだ。一人で三刑士の一人、グランを相手にしていた。
メイルによると相当手強い相手だと聞いた。いくらハリーセルでも、苦戦する可能性は十分にある。
「確か、前方よ。行ってみましょう」
「そうだね──」
俺とレディナはハリーセルがいると聞いた後方へと足を運ぶ。
一方ハリーセル、後方でグランと戦っていた。
グランの、レイピアの様な細くて曲がる剣に苦戦するも、有利に戦いを進めている。
何度かつば競り合いを重ねたうち、ハリーセルが一気に間合いを詰める。
「これで、決めるフィッシュ!!」
グランは何とか対応しようと交代するが、ハリーセルが詰める速度の方が早い。
そして右手をグランの方へとかざすと、そこに水をまとった矢が五発ほど出現。
「終わりだフィッシュ!」
その矢がグランへと直進。
グランの体に矢が突き刺さり、グランの体が森の中へと吹き飛ぶ。
そして数メートルほど吹き飛び、そのまま倒れこんだ。
「よし、捕えろ」
「任せろフィッシュ!」
俺の声にハリーセルはグランに向かって直進。しかしグランは魔力で傷を癒すと、無理やり立ち上がる。
「ほう、この僕にここまで戦えるとは、褒めてやるよ──」
そう言って後ろに向かって飛び上がった。
何とか追おうとしたものの、そのジャンプは数十メートルにも及び、目に見えないくらい早い。
この場から離れるわけにはいかない俺たちに、とても追うことなどできなかった。
「逃げられたフィッシュ……」
ハリーセルは悔しそうにシュンとする。すぐに駆け寄り、慰める。
「ありがとうハリーセル。これで大丈夫だよ」
「くやしいフィッシュ。追いたいフィッシュ」
「ダメだよ。俺たちには巡礼祭を何事もなく行うという義務がある。それにここはあいつらのホーム。何をされるかわからない」
敵に有利を取りながらも逃がしてしまった悔しさはわかる。しかしこの辺りは敵たちのホーム。どんな待ち伏せや罠があるか分からない。
逆に捕まってしまう可能性だってある。
俺たちの目的はあくまで要人たちを守ること。
これでも、目的は十分に達していると言える。
「ありがとう、助かったよハリーセル」
そう言って俺はハリーセルの頭をなでる。ハリーセルは顔をほんのり赤くして表情が明るくなった。
「ありがとうフィッシュ……。撫でてくれて……嬉しいフィッシュ」
取りあえず、納得してくれたようだ。
最後に周囲を見回す。戦っている人はもういない。
とりあえずこの場の危機は去った。
要人たちや、俺たちの中に弛緩した空気が流れる。それだけでなく──。
「やっぱりクリム様はすごいぜぇぇぇ」
「そうだな。彼女がいれば怖いものなんてないぜ」
兵士たちから歓喜の声がこだまし始めた。
要人たちからも、ほっとしたような雰囲気が流れる。しかし俺は違った。
「どうもおかしい……」
首をかしげた俺に隣にいたレシアが話しかけてくる。。
「あいつらが、手を抜いているってこと?」
レシアの質問に俺は答える。
「いや、決して手を抜いているとか、そういうわけじゃない。本気では戦っている。ただ──」
「ただ?」
「どこか、真剣さがない」
「フライさん。彼らは、手を抜いているということですか?」
するとメイルがキョトンとした様子で質問してくる」
「違う。決して遊んでいるとか、手抜きをしているわけではないんだ。
けれど、生死をかけて必死に戦っている時と、競技の様な真剣ではあるけれどそこまでは掛けていないときって、なんとなくわかるんだよ。目つきとか、剣裁きとか──」
「ええ、本気を出してはいましたが、どこか必死さに欠けていました」
フリーゼも戦っていてわかっていたのだろう。
あいつらの戦いには、必死さがない。自分の命と引き換えにしてでも、俺たちの首を奪い取ろうという、執念のようなものを感じなかった。
どちらかというと、トレーニングや、競技に近い。
手加減をしているわけではないが、こっちを殺しに来るような様子が感じられない。剣裁きやつば競り合いの時の粘り強さがどこかたりない。
まるで俺たちを試しているかのようだった。
「あいつらが何を企んでいるか、俺たちにはわからない」
「しかし、これで終わりではないということだけは分かります」
メイルとクリムは、真剣な表情になる。
「今日の巡礼祭。終わったら俺たちの部屋に来てほしい。そこでいろいろ話そう」
「──そうですね」
「分かったわ」
二人とも、首を縦に振ってくれた。
取りあえず、ここから戻ろう。帰ったら再び作戦会議だ。
「──何とか片付いたぞ」
「これもあの女の子二人のおかげだな」
傷だらけの姿で座り、ほっと体を休めている冒険者たちの姿。
すると、誰か肩をたたいてくる。
「デュラハン達は、全部退治したわ」
「こっちはもう。大丈夫だよ」
レディナとレシア。そして他の冒険者たちの活躍により、ここにいつデュラハンは全て倒したようだ。
二人とも軽く息が上がっているが、特に痛手は追っていなさそうだ。
「ありがとうレディナ、助かったよ」
「私だけじゃないわ。みんなのおかげよ」
「そうだ、ハリーセルは?」
レシアの言葉に俺は周囲に視線を送る。ハリーセルだ。一人で三刑士の一人、グランを相手にしていた。
メイルによると相当手強い相手だと聞いた。いくらハリーセルでも、苦戦する可能性は十分にある。
「確か、前方よ。行ってみましょう」
「そうだね──」
俺とレディナはハリーセルがいると聞いた後方へと足を運ぶ。
一方ハリーセル、後方でグランと戦っていた。
グランの、レイピアの様な細くて曲がる剣に苦戦するも、有利に戦いを進めている。
何度かつば競り合いを重ねたうち、ハリーセルが一気に間合いを詰める。
「これで、決めるフィッシュ!!」
グランは何とか対応しようと交代するが、ハリーセルが詰める速度の方が早い。
そして右手をグランの方へとかざすと、そこに水をまとった矢が五発ほど出現。
「終わりだフィッシュ!」
その矢がグランへと直進。
グランの体に矢が突き刺さり、グランの体が森の中へと吹き飛ぶ。
そして数メートルほど吹き飛び、そのまま倒れこんだ。
「よし、捕えろ」
「任せろフィッシュ!」
俺の声にハリーセルはグランに向かって直進。しかしグランは魔力で傷を癒すと、無理やり立ち上がる。
「ほう、この僕にここまで戦えるとは、褒めてやるよ──」
そう言って後ろに向かって飛び上がった。
何とか追おうとしたものの、そのジャンプは数十メートルにも及び、目に見えないくらい早い。
この場から離れるわけにはいかない俺たちに、とても追うことなどできなかった。
「逃げられたフィッシュ……」
ハリーセルは悔しそうにシュンとする。すぐに駆け寄り、慰める。
「ありがとうハリーセル。これで大丈夫だよ」
「くやしいフィッシュ。追いたいフィッシュ」
「ダメだよ。俺たちには巡礼祭を何事もなく行うという義務がある。それにここはあいつらのホーム。何をされるかわからない」
敵に有利を取りながらも逃がしてしまった悔しさはわかる。しかしこの辺りは敵たちのホーム。どんな待ち伏せや罠があるか分からない。
逆に捕まってしまう可能性だってある。
俺たちの目的はあくまで要人たちを守ること。
これでも、目的は十分に達していると言える。
「ありがとう、助かったよハリーセル」
そう言って俺はハリーセルの頭をなでる。ハリーセルは顔をほんのり赤くして表情が明るくなった。
「ありがとうフィッシュ……。撫でてくれて……嬉しいフィッシュ」
取りあえず、納得してくれたようだ。
最後に周囲を見回す。戦っている人はもういない。
とりあえずこの場の危機は去った。
要人たちや、俺たちの中に弛緩した空気が流れる。それだけでなく──。
「やっぱりクリム様はすごいぜぇぇぇ」
「そうだな。彼女がいれば怖いものなんてないぜ」
兵士たちから歓喜の声がこだまし始めた。
要人たちからも、ほっとしたような雰囲気が流れる。しかし俺は違った。
「どうもおかしい……」
首をかしげた俺に隣にいたレシアが話しかけてくる。。
「あいつらが、手を抜いているってこと?」
レシアの質問に俺は答える。
「いや、決して手を抜いているとか、そういうわけじゃない。本気では戦っている。ただ──」
「ただ?」
「どこか、真剣さがない」
「フライさん。彼らは、手を抜いているということですか?」
するとメイルがキョトンとした様子で質問してくる」
「違う。決して遊んでいるとか、手抜きをしているわけではないんだ。
けれど、生死をかけて必死に戦っている時と、競技の様な真剣ではあるけれどそこまでは掛けていないときって、なんとなくわかるんだよ。目つきとか、剣裁きとか──」
「ええ、本気を出してはいましたが、どこか必死さに欠けていました」
フリーゼも戦っていてわかっていたのだろう。
あいつらの戦いには、必死さがない。自分の命と引き換えにしてでも、俺たちの首を奪い取ろうという、執念のようなものを感じなかった。
どちらかというと、トレーニングや、競技に近い。
手加減をしているわけではないが、こっちを殺しに来るような様子が感じられない。剣裁きやつば競り合いの時の粘り強さがどこかたりない。
まるで俺たちを試しているかのようだった。
「あいつらが何を企んでいるか、俺たちにはわからない」
「しかし、これで終わりではないということだけは分かります」
メイルとクリムは、真剣な表情になる。
「今日の巡礼祭。終わったら俺たちの部屋に来てほしい。そこでいろいろ話そう」
「──そうですね」
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二人とも、首を縦に振ってくれた。
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