127 / 203
ウェレン王国編
唯一王 フリーゼを信じる
しおりを挟む
そう言って俺とフリーゼは正面にいる敵に視線を向けた。
筋肉質で長身な男ヴィッツ。
もう一人は目つきが悪く、赤髪でロングヘアの女ザニア。
ヴィッツは見下すような目つきをして言い放つ。
「ほう、たった二人でこの俺様たちに挑んでくるか──」
「ああ、勝負だ」
「もっと多人数で行けばよかったと、後悔させてやるよ」
そして俺たちの戦いが始まった。
戦いが始まってしばらく──。
「ほらほら、どうしたどうしたぁぁぁぁぁっ!」
ザニアの挑発するような物言いに俺は防御に徹しながら対応する。
この二人、本来の実力はそこそこといった所。
雑魚というわけではないが、今まで戦ってきた敵と比べて、そこまで強いというわけでもない。
しかし俺たちは苦戦している。
理由は、簡単だ。
二人のコンビネーションがとても素晴らしいからだ。
「フッ、自らの力を過信しすぎたな。降参するなら今のうちだぞ──」
「降参などするものか!」
俺はヴィッツの攻撃を耐えながら、反論。
この二人は、それぞれが対角線になるように二方向から攻めて来る。
そのせいで俺たちは背を向けて戦わざるを得ない。
こっちはなかなかコンビネーションを生かせず、攻めあぐねているのだ。
「じゃあ、こっちは行かせてもらうぜ。次の作戦によぉ!」
そうザニアが言うと二人は左右に分かれ、フリーゼを狙ってきた。
フリーゼは何とか対応するも、二人のコンビネーションもよく、なかなか反撃に移れない。
慌てて俺も対応しようとフリーゼのところへと向かう。
ヴィッツへと立ち向かい、剣をふるうが片手で防がれてしまう。
そして俺を無視してフリーゼへと向かっていく。
その後も、フリーゼの負担を減らそうと戦いに入ろうとするが、結果は同じだった。
有効打を与えられず、防がれてしまう。
二人とも俺への対応は最低限という形で、二人でフリーゼに狙いを定めているのがまるわかりだ。
戦い方がうまい。こういう二対二で戦うときの定石として、どこかで二対二の状況を作り、そこで有利をとっていく手があるのだが、それを行ってきているのだ。
もちろん簡単ではない。必然的に俺ががら空きになるので、その対応をしなければならないのだが。
それもしっかりと対応している。
二人とも連携が良くできていて、なかなか崩せない。
少しだけスキを許すと、すぐにフリーゼに向かっていってしまう。
恐らくここはこいつらの得意な場所。そしてこれは二人が得意としている戦いからなのだろう。
こういうとこに俺がやらなければいけないことは一つだ。
このまま闇雲に立ち向かっていっても、同じ結果になるだけだろう。やり方を変える必要がある。
相手の好きにさせず得意戦術をつぶす。「おや、今回は違うぞ」と思わせること。
それならば、こんなやり方がある。
以前本で学んだ面白そうな術式。
使いどころに困って、今まで使ったことがない、実戦で使うのは初めてのこの術式。
俺は近くにいたザニアに立ち向かう。
「お前の攻撃なんて、通じねぇよ!」
ザニアの、あざ笑うかのような物言い。
「攻撃じゃない。こうだ!」
俺は剣を天に向かって上げる。
「分断せよ──。バインド・ウォール!」
その瞬間、真っ白の魔力を伴った壁が現れる。
「な、何だこれは──」
驚くザニア。無理はない、かなり珍しく使用者の少ない術式。
初めて見たのだろう。
その壁は様に俺とザニア。ヴィッツとフリーゼの間を分断。そして、俺とザニア、フリーゼとヴィッツが互いに見合う形になる。
「さあ、これで狙い撃ちはできないぞ」
「ほう──、大したやつだね」
これならフリーゼを狙うことはできない。相手の勝ち筋を封じる。
戦いの基本だ。
しかしザニアに焦りの表情はない。
にやりと笑みを浮かべ言葉を返す。
「だが、その程度で私を止められると思ったら、大違いだ」
そして俺とザニアの戦いが始まった。
ザニアが大きな槍を持って突っ込んでくる。
俺はその攻撃に対応していく。
ザニアの目にもとまらぬ速さの攻撃。
「どうした、その程度か小僧。ならば大したやつではないな──」
「くっ……」
ザニアの槍の猛攻をしのぎながら、思わず唇をかむ。
俺とフリーゼ、ザニアとヴィッツの間に壁を作り、二人のコンビネーションをつぶしたのは正解だった。
しかし、このザニアとかいう女。それなりに実力がある。
決して油断をしていたわけではないが、障壁を作り、フリーゼたちに魔力を供給しながらだと、流石にきつい。
内心苦心しつつ、ザニアが連続で繰り出す攻撃を防ぎ、時折剣を振り攻撃を加える。
しかしザニアも長い槍を器用に操り、攻撃は通らない。
「随分苦しそうだな。目の前の相手に集中したらどうだ」
ザニアはいったん距離を取り、障壁に視線を向けてつぶやいた。
どうやら、障壁や周囲に魔力を使っていることに気付いたようだ。
「それは、出来ないな──」
確かに、今の俺は障壁や仲間への加護のせいでいつもの六割ほどしか力を出せない。
もし加護の力をやめ、ザニアを倒すことだけに専念すれば、もっと楽に戦えていただろう。
倒せるだろう。しかし、そしたらフリーゼたちが困ってしまう。
──
あくまで、俺が勝つことではなく、この場で そのためには、俺が多少犠牲になる必要がある。
「まあいい。だが、早く倒さないと壁の向こうの彼女さんが破れてしまうかもしれないぞ──」
「大丈夫。フリーゼは、そんなことありえないから──」
筋肉質で長身な男ヴィッツ。
もう一人は目つきが悪く、赤髪でロングヘアの女ザニア。
ヴィッツは見下すような目つきをして言い放つ。
「ほう、たった二人でこの俺様たちに挑んでくるか──」
「ああ、勝負だ」
「もっと多人数で行けばよかったと、後悔させてやるよ」
そして俺たちの戦いが始まった。
戦いが始まってしばらく──。
「ほらほら、どうしたどうしたぁぁぁぁぁっ!」
ザニアの挑発するような物言いに俺は防御に徹しながら対応する。
この二人、本来の実力はそこそこといった所。
雑魚というわけではないが、今まで戦ってきた敵と比べて、そこまで強いというわけでもない。
しかし俺たちは苦戦している。
理由は、簡単だ。
二人のコンビネーションがとても素晴らしいからだ。
「フッ、自らの力を過信しすぎたな。降参するなら今のうちだぞ──」
「降参などするものか!」
俺はヴィッツの攻撃を耐えながら、反論。
この二人は、それぞれが対角線になるように二方向から攻めて来る。
そのせいで俺たちは背を向けて戦わざるを得ない。
こっちはなかなかコンビネーションを生かせず、攻めあぐねているのだ。
「じゃあ、こっちは行かせてもらうぜ。次の作戦によぉ!」
そうザニアが言うと二人は左右に分かれ、フリーゼを狙ってきた。
フリーゼは何とか対応するも、二人のコンビネーションもよく、なかなか反撃に移れない。
慌てて俺も対応しようとフリーゼのところへと向かう。
ヴィッツへと立ち向かい、剣をふるうが片手で防がれてしまう。
そして俺を無視してフリーゼへと向かっていく。
その後も、フリーゼの負担を減らそうと戦いに入ろうとするが、結果は同じだった。
有効打を与えられず、防がれてしまう。
二人とも俺への対応は最低限という形で、二人でフリーゼに狙いを定めているのがまるわかりだ。
戦い方がうまい。こういう二対二で戦うときの定石として、どこかで二対二の状況を作り、そこで有利をとっていく手があるのだが、それを行ってきているのだ。
もちろん簡単ではない。必然的に俺ががら空きになるので、その対応をしなければならないのだが。
それもしっかりと対応している。
二人とも連携が良くできていて、なかなか崩せない。
少しだけスキを許すと、すぐにフリーゼに向かっていってしまう。
恐らくここはこいつらの得意な場所。そしてこれは二人が得意としている戦いからなのだろう。
こういうとこに俺がやらなければいけないことは一つだ。
このまま闇雲に立ち向かっていっても、同じ結果になるだけだろう。やり方を変える必要がある。
相手の好きにさせず得意戦術をつぶす。「おや、今回は違うぞ」と思わせること。
それならば、こんなやり方がある。
以前本で学んだ面白そうな術式。
使いどころに困って、今まで使ったことがない、実戦で使うのは初めてのこの術式。
俺は近くにいたザニアに立ち向かう。
「お前の攻撃なんて、通じねぇよ!」
ザニアの、あざ笑うかのような物言い。
「攻撃じゃない。こうだ!」
俺は剣を天に向かって上げる。
「分断せよ──。バインド・ウォール!」
その瞬間、真っ白の魔力を伴った壁が現れる。
「な、何だこれは──」
驚くザニア。無理はない、かなり珍しく使用者の少ない術式。
初めて見たのだろう。
その壁は様に俺とザニア。ヴィッツとフリーゼの間を分断。そして、俺とザニア、フリーゼとヴィッツが互いに見合う形になる。
「さあ、これで狙い撃ちはできないぞ」
「ほう──、大したやつだね」
これならフリーゼを狙うことはできない。相手の勝ち筋を封じる。
戦いの基本だ。
しかしザニアに焦りの表情はない。
にやりと笑みを浮かべ言葉を返す。
「だが、その程度で私を止められると思ったら、大違いだ」
そして俺とザニアの戦いが始まった。
ザニアが大きな槍を持って突っ込んでくる。
俺はその攻撃に対応していく。
ザニアの目にもとまらぬ速さの攻撃。
「どうした、その程度か小僧。ならば大したやつではないな──」
「くっ……」
ザニアの槍の猛攻をしのぎながら、思わず唇をかむ。
俺とフリーゼ、ザニアとヴィッツの間に壁を作り、二人のコンビネーションをつぶしたのは正解だった。
しかし、このザニアとかいう女。それなりに実力がある。
決して油断をしていたわけではないが、障壁を作り、フリーゼたちに魔力を供給しながらだと、流石にきつい。
内心苦心しつつ、ザニアが連続で繰り出す攻撃を防ぎ、時折剣を振り攻撃を加える。
しかしザニアも長い槍を器用に操り、攻撃は通らない。
「随分苦しそうだな。目の前の相手に集中したらどうだ」
ザニアはいったん距離を取り、障壁に視線を向けてつぶやいた。
どうやら、障壁や周囲に魔力を使っていることに気付いたようだ。
「それは、出来ないな──」
確かに、今の俺は障壁や仲間への加護のせいでいつもの六割ほどしか力を出せない。
もし加護の力をやめ、ザニアを倒すことだけに専念すれば、もっと楽に戦えていただろう。
倒せるだろう。しかし、そしたらフリーゼたちが困ってしまう。
──
あくまで、俺が勝つことではなく、この場で そのためには、俺が多少犠牲になる必要がある。
「まあいい。だが、早く倒さないと壁の向こうの彼女さんが破れてしまうかもしれないぞ──」
「大丈夫。フリーゼは、そんなことありえないから──」
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる