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ウェレン王国編
唯一王 大激闘、しかし一触即発
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王子のジロンがメイドの人を呼び出す。
メイドさんは嫌な表情をして小走りでジロンのところへ。
「どういうことだよ。こんなザコ敵にてこずりやがって、もっと冒険者を雇えばよかったんじゃね?」
「申し訳ありません。しかし今年は厳冬の関係で 費用がかさんでおります
国家予算が厳しく、削れるところを削らせて──きゃぁぁっ!」
「ああん。グダグダ言い訳してんじゃねぇよ。下民どもの福祉とか削れるところはいろいろあるだろ。そんな糞見てぇなことのために、俺達に恥をかかすんじゃねぇよ。国の威信がかかってるんだぞ」
そしてメイドさんの髪を引っ張り壁に投げつけたのだ。
「このバカ女。この代償、弁償しろよこの無能!」
そして女性を蹴っ飛ばす。国王ケイルも助けることもせず罵倒を繰り返す。
「全くじゃ、長年メイドをやっておいて、そのようなことも理解できぬとは」
あまりの光景に客人たちはみな言葉を失ってしまう。
ただ一人、スキァーヴィを除いては。
彼女はにやりと笑みを浮かべた後、ジロンの肩にそっと手を触れた。
「まあまあケイル様。そこまで気にしていませんし、良いではありませんか。他の要人の目もありますし──。ここはそれまでにしておきましょう」
その言葉にジロンは舌打ちをした後、メイドの人に言い放った。
「チッ──。 が言うなら仕方ねぇなァ。今回はこれで勘弁してやるよ。スキァーヴィ様に感謝しとけよ!」
「はい……。申し訳ありません」
倒れこみ、ショックを隠せない様子のメイドさん。
見ていていたたまれなくなり、俺は彼女に手を差し出した。
「だ、大丈夫ですか?」
「──ありがとうございます」
メイドの人は俺が差し伸べた手をぎゅっと握る。
その手は、暴力を受けた恐怖からかどこか震えているように感じた。
今度はフリーゼが、複雑そうな表情で話しかける。
「……よく務まっていますよね。これだけの暴力を受けておいて」
「理不尽なのは分かりますが、耐えるしかないのです」
「やめたりとは、考えないのですか?」
「お優しい言葉をありがとうございます。しかしこの国は、厳しい寒さの気候ゆえ、産業というものが育っておりませんゆえ、我々は仕事が選べる立場ではございません。もしこの職場を去ったら、生きていける保証がないのです」
確かにそうだ。例え俺たちがケイル達に注意したとする。
それは論理的には正しいし、一時は彼女は救われるかもしれない。しかし、俺達はずっとここにいるわけではない。
そしたら、この人たちはケイル達に目を付けられ、ひどい扱いを受けてしまうだろう。周囲を顧みず、自分勝手に正義を振りかざせばいいというわけではない。
だから、不用意に何かを言うわけにはいかないのだ。
背後では別の冒険者パーティーと魔物たちが戦っている。いつも戦っている魔物より手ごわい相手で苦戦しているようだ。
「なんだよ、こんな弱そうな敵に苦戦しているのかよ。いつもはイキリ散らかしているくせに、使えねえ奴らだなァ──」
「全くじゃ。これでは我が王国の面汚しといっても過言ではない」
こいつら、冒険者たちの苦労も知らずに、文句ばかり。ひどすぎる。
しかし、他を助けるのが先なので、俺達も加勢。
相手は、そこまで強い相手ではない。
何とか俺たちは魔物たちを退治する。とりあえず危機は去った。
そしてそれを確認した国王ケイルが兵士たちに話しかける。
「ふぅ──。終わったみたいじゃぞ。ボーっとしとる出ないノロマ! 早く出発しろ」
傷ついている冒険者のことなど構いもしない。まだ襲ってくるかもしれないというのに──。
「待ってください、背後で戦っていた冒険者たちがかなり消耗しています。休ませてから行きましょう」
俺は王族たちに頼み込む。しかし王族たちはその質問を聞くなりけげんな表情をし始め──。
「ふざけんなよ。こっちは他国から要人が控えているんだぞ。そんなことをしたら俺たちの名誉にかかわるだろ」
「しかし、彼らなしでは敵が襲ってきたときに対応できません。ようじんたちになにかあったら、それこそ名誉にかかわります」
「ああん? それはこいつらが雑魚で無能だからだろうが、なんでそんな奴らに俺たちがペースを合わせなきゃいけねえんだよ!」
「そうじゃそうじゃ。お前たちが無能なのが悪い、そんなクソ野郎どもに迎合する必要なんてない出発じゃ出発」
こいつら、自分たちは全く汗をかいていないくせ、全く冒険者たちを気遣っていない。
するとレディナが俺の肩を掴む。
「もう、見ていられないわ。ここは私に任せなさい」
そしてレディナが一歩前に出て国王と王子に向かって言い放った。
「なんじゃ貴様。失礼な奴じゃ」
「そうだぜ。一冒険者の分際で、偉そうにしているんじゃねぇよ」
「偉そうにしているのはそっちよ。あなた達はなんとも思わないの? あの冒険者があなたたちのために命がけで戦っているっていうのに」
「命がけ? そんなの知らんわい。わしらだってこ奴らに通常の倍近い報酬を払っているのじゃ。なのにこの程度で根を上げておまけに進行が遅れているにもかかわらず
「彼らなしじゃ安全な護衛も、巡礼祭の信仰も出来ないのよ。そんなんだから、教会たちに人心が集まっているのよ
互いに言い争い一触即発の状態。今にもどちらかが手を出しそうなギスギスした雰囲気。
そこに話に入ってきたのはステファヌアだった。
三人がいかみ合ってるところに、フッと笑みを見せて接近。その笑みは、まるで女神の様に優しくて、慈悲深く見えた。
メイドさんは嫌な表情をして小走りでジロンのところへ。
「どういうことだよ。こんなザコ敵にてこずりやがって、もっと冒険者を雇えばよかったんじゃね?」
「申し訳ありません。しかし今年は厳冬の関係で 費用がかさんでおります
国家予算が厳しく、削れるところを削らせて──きゃぁぁっ!」
「ああん。グダグダ言い訳してんじゃねぇよ。下民どもの福祉とか削れるところはいろいろあるだろ。そんな糞見てぇなことのために、俺達に恥をかかすんじゃねぇよ。国の威信がかかってるんだぞ」
そしてメイドさんの髪を引っ張り壁に投げつけたのだ。
「このバカ女。この代償、弁償しろよこの無能!」
そして女性を蹴っ飛ばす。国王ケイルも助けることもせず罵倒を繰り返す。
「全くじゃ、長年メイドをやっておいて、そのようなことも理解できぬとは」
あまりの光景に客人たちはみな言葉を失ってしまう。
ただ一人、スキァーヴィを除いては。
彼女はにやりと笑みを浮かべた後、ジロンの肩にそっと手を触れた。
「まあまあケイル様。そこまで気にしていませんし、良いではありませんか。他の要人の目もありますし──。ここはそれまでにしておきましょう」
その言葉にジロンは舌打ちをした後、メイドの人に言い放った。
「チッ──。 が言うなら仕方ねぇなァ。今回はこれで勘弁してやるよ。スキァーヴィ様に感謝しとけよ!」
「はい……。申し訳ありません」
倒れこみ、ショックを隠せない様子のメイドさん。
見ていていたたまれなくなり、俺は彼女に手を差し出した。
「だ、大丈夫ですか?」
「──ありがとうございます」
メイドの人は俺が差し伸べた手をぎゅっと握る。
その手は、暴力を受けた恐怖からかどこか震えているように感じた。
今度はフリーゼが、複雑そうな表情で話しかける。
「……よく務まっていますよね。これだけの暴力を受けておいて」
「理不尽なのは分かりますが、耐えるしかないのです」
「やめたりとは、考えないのですか?」
「お優しい言葉をありがとうございます。しかしこの国は、厳しい寒さの気候ゆえ、産業というものが育っておりませんゆえ、我々は仕事が選べる立場ではございません。もしこの職場を去ったら、生きていける保証がないのです」
確かにそうだ。例え俺たちがケイル達に注意したとする。
それは論理的には正しいし、一時は彼女は救われるかもしれない。しかし、俺達はずっとここにいるわけではない。
そしたら、この人たちはケイル達に目を付けられ、ひどい扱いを受けてしまうだろう。周囲を顧みず、自分勝手に正義を振りかざせばいいというわけではない。
だから、不用意に何かを言うわけにはいかないのだ。
背後では別の冒険者パーティーと魔物たちが戦っている。いつも戦っている魔物より手ごわい相手で苦戦しているようだ。
「なんだよ、こんな弱そうな敵に苦戦しているのかよ。いつもはイキリ散らかしているくせに、使えねえ奴らだなァ──」
「全くじゃ。これでは我が王国の面汚しといっても過言ではない」
こいつら、冒険者たちの苦労も知らずに、文句ばかり。ひどすぎる。
しかし、他を助けるのが先なので、俺達も加勢。
相手は、そこまで強い相手ではない。
何とか俺たちは魔物たちを退治する。とりあえず危機は去った。
そしてそれを確認した国王ケイルが兵士たちに話しかける。
「ふぅ──。終わったみたいじゃぞ。ボーっとしとる出ないノロマ! 早く出発しろ」
傷ついている冒険者のことなど構いもしない。まだ襲ってくるかもしれないというのに──。
「待ってください、背後で戦っていた冒険者たちがかなり消耗しています。休ませてから行きましょう」
俺は王族たちに頼み込む。しかし王族たちはその質問を聞くなりけげんな表情をし始め──。
「ふざけんなよ。こっちは他国から要人が控えているんだぞ。そんなことをしたら俺たちの名誉にかかわるだろ」
「しかし、彼らなしでは敵が襲ってきたときに対応できません。ようじんたちになにかあったら、それこそ名誉にかかわります」
「ああん? それはこいつらが雑魚で無能だからだろうが、なんでそんな奴らに俺たちがペースを合わせなきゃいけねえんだよ!」
「そうじゃそうじゃ。お前たちが無能なのが悪い、そんなクソ野郎どもに迎合する必要なんてない出発じゃ出発」
こいつら、自分たちは全く汗をかいていないくせ、全く冒険者たちを気遣っていない。
するとレディナが俺の肩を掴む。
「もう、見ていられないわ。ここは私に任せなさい」
そしてレディナが一歩前に出て国王と王子に向かって言い放った。
「なんじゃ貴様。失礼な奴じゃ」
「そうだぜ。一冒険者の分際で、偉そうにしているんじゃねぇよ」
「偉そうにしているのはそっちよ。あなた達はなんとも思わないの? あの冒険者があなたたちのために命がけで戦っているっていうのに」
「命がけ? そんなの知らんわい。わしらだってこ奴らに通常の倍近い報酬を払っているのじゃ。なのにこの程度で根を上げておまけに進行が遅れているにもかかわらず
「彼らなしじゃ安全な護衛も、巡礼祭の信仰も出来ないのよ。そんなんだから、教会たちに人心が集まっているのよ
互いに言い争い一触即発の状態。今にもどちらかが手を出しそうなギスギスした雰囲気。
そこに話に入ってきたのはステファヌアだった。
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