113 / 203
ウェレン王国編
一日目
しおりを挟む
「じゃあフライ。私達も準備に入るわよ」
「そうだね。レディナ」
俺達はしんがりの役割を担うことになっていたため、先頭を行くステファヌア達とはしばらくお別れとなる。
それから、大歓声のこの広場を去っていく。
「ステファヌア様。良い祈りを──」
「私達、離れていても心はそばにいますからね──」
「クリム様、メイル様。しっかりと大教皇様を守ってくださいね──」
信者たちの、見送りの言葉。彼らが仲間割れなどせずに一枚岩で、団結心があるというのがわかる。
まずは教皇様の馬車と、その護衛の兵士たち。
それから要人たちの馬車。最後に、俺たちが出発となる。
決められた聖地を巡っていく、巡礼祭。その一日目が始まった。
ほとんどは馬車での移動となる。一つ目の巡礼地は、この街の北東にある森の中に囲まれた神殿。
街を出ると、針葉樹の木が連なる森に入って行く。
雪景色を見ながら、俺は考えていた。
この景色と、信仰深い国柄や人々。何か関係があるのだろうか。
すると、隣にいたレディナが肩をたたいて話しかけてきた。
「フライ、考え事? ずっと虚ろな目で外を見ているけど──」
「……まあね」
レディナは、いつも俺のことを見ているうえに、観察眼が鋭い。彼女に隠し事はできないと、心の底から思う。
「雪国の気候と、信仰深い国柄って、何か関係があるのかなって考えてた」
すると後ろにいたレシアが話に入ってくる。
「多分、あると思う」
「何か、証拠でもあるフィッシュか?」
するとレシアが得意げに答え始める。
「僕ね、遺跡にいるときに調べていたんだ。そういった信仰が盛んな地域と、特性とか。それでね、気が付いたんだよ。信仰が本当に生活に深い場所や国は、必ず厳しい環境が付いて回っているって。後は、疫病や紛争が多いって」
レシア、意外と博識なところがるんだな。ハリーセルも、感心しているのがわかる。
「すごいフィッシュ。よくわかるフィッシュね」
「なるほどね。過酷ゆえに、救いを求めるということか」
レディナも、それに対して同調し始める。
「確かに、こういった厳しい場所で、信仰が根付きやすいというのは私も思うわ。考えてみると極寒の地や、地震や災害が多い地。砂漠や酷暑など過酷な地域ではそういった事象を神の試練とあらわしたり、救いを求めるために神へすがったりするってことね」
なるほど、過酷な環境。嵐や吹雪。少しの天気の気まぐれで人々の運命が決まってしまうような場所。
そういった場所で、偉大なる神様への信仰が深くなったともいえる。
それに、そういった場所が織りなす光景は目を見張るものがある。神秘的で美しかったり、この世のものとは思えないような物だったり。
そういったものでも、信仰というのは芽生えていくのだと思う。
「そんな人たちの想いに、答えられるようにしたいですね。フライさん」
「そうだね、フリーゼ」
フリーゼの言葉。俺の心にかなり響いた。その通り、これから、何があっても答えていこう。
それからも、警戒はしたが特に気配はなかった。
そんなことを話しているうちに、俺達は目的の神殿にたどり着く。
雪深い森の中に。大きく目立つ古びた建物。
俺達は馬車を降り、あらかじめ説明を受けていたように、歩き回って警備の方に入る。
一応警戒はしているが、怪しい素振りをしている人はいないし。どこかからか奇襲を仕掛けてきそうな気配もない。
前の方まで歩いたタイミングで、神殿の中を覗き込む。
そこでは教皇ステファヌアや祭司の人たちが礼拝の準備を行っていた。儀式は、それが終わったら始まるようだ。
そしてほどなくすると準備は完了。ステファヌアが話しかけてくる。
「皆さん、お待たせしました。準備は完了です。これから私が祈りを捧げますので、皆さまは黙とうの方を、よろしくお願いいたします」
「はい、わかりました」
教会の要人らしき人が言葉を発し、あたりが静まり返った。
「待たせすぎなんだよバカ女。国王様がいるんだぞ。早くしろよ!」
国王のジロンは相変わらずであったが──。
それからすぐ、ステファヌアが両手を合わせ、目をつぶる。黙とうが始まったことを周囲が理解したのか、教会の幹部たちや要人たちも、彼女と同じようなポーズをとり、祈りをささげる。
数分間の黙とうが行われる。
それからも、神殿の中に順番に人が入って行き、奥にある礼拝所で祈りをささげた。
もちろん俺たちも。
薄暗い神殿の奥。そこそこ広い部屋で両手を合わせ祈りをささげる。
「フリーゼ、この絵画。誰を描いたものかわかるか?」
「おそらく、大天使様を描いたものだと思われます」
なるほど。こういった所でも、大天使様は尊敬されているのか。
俺達は外へ出る。
狭い道の都合上少しずつ礼拝をおこなったため、時間がかかった。
それからも、付近にある礼拝所などで祈りを行う。
特に敵が襲ってくるわけではなく、無事に一日が終わった。
夕方で日が沈んできたころ。俺たちは朝出発した大聖堂前の広間に戻る。
先頭を歩いていたステファヌア様たちを乗せた馬車がたどり着くと、まずはメイル。次にステファヌアとクリムが馬車から降りた。
その後も、他の馬車から要人たちが次々と降りる。みんな一日中の移動の疲れからか、背伸びをしたり、一息ついたりしている。
最後に、俺たちが広間に足を踏み入れた。すぐにステファヌアやクリムのところへと向かっていく。
ステファヌアのところにたどり着いた俺たち。彼女は胸に手を当てながらにっこりと上品な笑みを浮かべ、話しかけてきた。
「フライさん達ですよね。長い時間の警護、馬車もなしに歩きで、本当にお疲れ様です。ありがとうございました」
「そうだね。レディナ」
俺達はしんがりの役割を担うことになっていたため、先頭を行くステファヌア達とはしばらくお別れとなる。
それから、大歓声のこの広場を去っていく。
「ステファヌア様。良い祈りを──」
「私達、離れていても心はそばにいますからね──」
「クリム様、メイル様。しっかりと大教皇様を守ってくださいね──」
信者たちの、見送りの言葉。彼らが仲間割れなどせずに一枚岩で、団結心があるというのがわかる。
まずは教皇様の馬車と、その護衛の兵士たち。
それから要人たちの馬車。最後に、俺たちが出発となる。
決められた聖地を巡っていく、巡礼祭。その一日目が始まった。
ほとんどは馬車での移動となる。一つ目の巡礼地は、この街の北東にある森の中に囲まれた神殿。
街を出ると、針葉樹の木が連なる森に入って行く。
雪景色を見ながら、俺は考えていた。
この景色と、信仰深い国柄や人々。何か関係があるのだろうか。
すると、隣にいたレディナが肩をたたいて話しかけてきた。
「フライ、考え事? ずっと虚ろな目で外を見ているけど──」
「……まあね」
レディナは、いつも俺のことを見ているうえに、観察眼が鋭い。彼女に隠し事はできないと、心の底から思う。
「雪国の気候と、信仰深い国柄って、何か関係があるのかなって考えてた」
すると後ろにいたレシアが話に入ってくる。
「多分、あると思う」
「何か、証拠でもあるフィッシュか?」
するとレシアが得意げに答え始める。
「僕ね、遺跡にいるときに調べていたんだ。そういった信仰が盛んな地域と、特性とか。それでね、気が付いたんだよ。信仰が本当に生活に深い場所や国は、必ず厳しい環境が付いて回っているって。後は、疫病や紛争が多いって」
レシア、意外と博識なところがるんだな。ハリーセルも、感心しているのがわかる。
「すごいフィッシュ。よくわかるフィッシュね」
「なるほどね。過酷ゆえに、救いを求めるということか」
レディナも、それに対して同調し始める。
「確かに、こういった厳しい場所で、信仰が根付きやすいというのは私も思うわ。考えてみると極寒の地や、地震や災害が多い地。砂漠や酷暑など過酷な地域ではそういった事象を神の試練とあらわしたり、救いを求めるために神へすがったりするってことね」
なるほど、過酷な環境。嵐や吹雪。少しの天気の気まぐれで人々の運命が決まってしまうような場所。
そういった場所で、偉大なる神様への信仰が深くなったともいえる。
それに、そういった場所が織りなす光景は目を見張るものがある。神秘的で美しかったり、この世のものとは思えないような物だったり。
そういったものでも、信仰というのは芽生えていくのだと思う。
「そんな人たちの想いに、答えられるようにしたいですね。フライさん」
「そうだね、フリーゼ」
フリーゼの言葉。俺の心にかなり響いた。その通り、これから、何があっても答えていこう。
それからも、警戒はしたが特に気配はなかった。
そんなことを話しているうちに、俺達は目的の神殿にたどり着く。
雪深い森の中に。大きく目立つ古びた建物。
俺達は馬車を降り、あらかじめ説明を受けていたように、歩き回って警備の方に入る。
一応警戒はしているが、怪しい素振りをしている人はいないし。どこかからか奇襲を仕掛けてきそうな気配もない。
前の方まで歩いたタイミングで、神殿の中を覗き込む。
そこでは教皇ステファヌアや祭司の人たちが礼拝の準備を行っていた。儀式は、それが終わったら始まるようだ。
そしてほどなくすると準備は完了。ステファヌアが話しかけてくる。
「皆さん、お待たせしました。準備は完了です。これから私が祈りを捧げますので、皆さまは黙とうの方を、よろしくお願いいたします」
「はい、わかりました」
教会の要人らしき人が言葉を発し、あたりが静まり返った。
「待たせすぎなんだよバカ女。国王様がいるんだぞ。早くしろよ!」
国王のジロンは相変わらずであったが──。
それからすぐ、ステファヌアが両手を合わせ、目をつぶる。黙とうが始まったことを周囲が理解したのか、教会の幹部たちや要人たちも、彼女と同じようなポーズをとり、祈りをささげる。
数分間の黙とうが行われる。
それからも、神殿の中に順番に人が入って行き、奥にある礼拝所で祈りをささげた。
もちろん俺たちも。
薄暗い神殿の奥。そこそこ広い部屋で両手を合わせ祈りをささげる。
「フリーゼ、この絵画。誰を描いたものかわかるか?」
「おそらく、大天使様を描いたものだと思われます」
なるほど。こういった所でも、大天使様は尊敬されているのか。
俺達は外へ出る。
狭い道の都合上少しずつ礼拝をおこなったため、時間がかかった。
それからも、付近にある礼拝所などで祈りを行う。
特に敵が襲ってくるわけではなく、無事に一日が終わった。
夕方で日が沈んできたころ。俺たちは朝出発した大聖堂前の広間に戻る。
先頭を歩いていたステファヌア様たちを乗せた馬車がたどり着くと、まずはメイル。次にステファヌアとクリムが馬車から降りた。
その後も、他の馬車から要人たちが次々と降りる。みんな一日中の移動の疲れからか、背伸びをしたり、一息ついたりしている。
最後に、俺たちが広間に足を踏み入れた。すぐにステファヌアやクリムのところへと向かっていく。
ステファヌアのところにたどり着いた俺たち。彼女は胸に手を当てながらにっこりと上品な笑みを浮かべ、話しかけてきた。
「フライさん達ですよね。長い時間の警護、馬車もなしに歩きで、本当にお疲れ様です。ありがとうございました」
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
月白色の叙情詩~銀礫の魔女が綴るもの~
羽月明香
ファンタジー
魔女は災いを呼ぶ。
魔女は澱みから生まれし魔物を操り、更なる混沌を招く。そうして、魔物等の王が生まれる。
魔物の王が現れし時、勇者は選ばれ、勇者は魔物の王を打ち倒す事で世界から混沌を浄化し、救世へと導く。
それがこの世界で繰り返されてきた摂理だった。
そして、またも魔物の王は生まれ、勇者は魔物の王へと挑む。
勇者を選びし聖女と聖女の侍従、剣の達人である剣聖、そして、一人の魔女を仲間に迎えて。
これは、勇者が魔物の王を倒すまでの苦難と波乱に満ちた物語・・・ではなく、魔物の王を倒した後、勇者にパーティから外された魔女の物語です。
※衝動発射の為、着地点未定。一応完結させるつもりはありますが、不定期気紛れ更新なうえ、展開に悩めば強制終了もありえます。ご了承下さい。
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル
ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。
しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。
甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。
2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる