~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

文字の大きさ
上 下
96 / 203
アドナと最終戦編

アドナ ユニコーンと死闘そして爆発

しおりを挟む
 ユニコーンはニ十体以上。アドナたちを取り囲むように位置している。

「──行くしかないで」

「ああ、オラたちは、そのために来たんだもんな」

 囲まれているというのは最悪な配置だ。普通はそうならないように周囲に気を配ったりする。しかし、ただでさえ険悪な雰囲気だったことに加え、石英を目の前にして気が緩んでいた。なのでこんな状況になってしまったのだ。


 戦うしかないこの状況。
 覚悟を決めた村の冒険者たち。互いににらみ合い、出方をうかがう。


「グルルルルルルルルルァァァァ──」

 明らかにユニコーンたちはアドナたちに敵意を向け、威嚇している。
 数秒ほどたつと、ユニコーンたちが一斉にアドナたちに襲い掛かる。アドナ達もそれに応戦して各自対応。


 アドナたちとユニコーンたちの戦いが始まる。
 アドナたちは連携などまるでないので、個人個人で対応していく。が──。

「やっぱりつぇぇでこいつら」

 たちまちユニコーン相手に押されてしまう。一対一では有利に戦えても、ユニコーンたちの連携をとった攻撃になすすべなく押されてしまうのだ。

 当然といえば当然だ。
 彼らは先までのデュラハンとの戦いで大きく消耗してしまっている。おまけに準備など何もしていないので、いきなり陣形も策もなく行き当たりばったりで戦っているのだ。

 全く連携が取れていない。各自バラバラ。

 こんな状況でまともにユニコーンと戦えるわけがない。ユニコーンの集団での戦術に翻弄され、圧倒されるばかり。

 当然大苦戦。そして一人づつなぎ倒されていく。

「ぐほっ!!」

「なんだこいつら、全然勝てないで」

 アドナも、何とか対応しているものの、集団での攻撃にまともに攻撃を当てることすらできない。

「こいつらもだ。雑魚のくせにちょこまかとしやがってぇぇぇ」

 剣を大ぶりに、力むくらいの力でユニコーンたちに攻撃を仕掛けていく。

 当然、そんな戦術もない感情に任せた攻撃。当たるはずもない。
 完全に追い詰められてしまう。


 おまけに他の冒険者がやられた分、アドナにユニコーンが集中してしまい、ドンドン状況が悪化。

「使えないやつらめ。やはりあいつらは使えない。雑魚野郎だ!」

 アドナは後ずさりしながら、状況を何とか打破しようとする。

(さすがにまずいぞ。こいつら、まともに攻撃が当たらん。ふざけるな、この最強の俺様がやられるだと? ありえないありえないありえないありえない)

 あり得る。現実だ。

 そして苦戦を続け、彼の脳裏に敗北の二文字が浮かぼうとしたとき、一つの作戦が思い浮かぶ。

(そうだ、あの術式ならこの状況を打開できる──)

 しかしそれは、この場を打開できるかもしれないと同時に大きなリスクを伴う諸刃の剣でもあった。

 おまけに、倒れた仲間たちが、取り返せなくなるかもしれないというリスクもある。
 流石にそうなれば、村でどういわれるかわからない。

 簡単に発動することも出来ず、考え込んでしまう。

(クソが──。こいつらのせいでこうなったんだぞ。どうしてくれる!!)

 必死に今の境遇を周囲のせいにするアドナ。確かに他の冒険者も実力不足だったかもしれない。
 しかし、他の冒険者は戦っているときもアドナはユニコーンに致命傷を与えられなかった。

 だから、今の彼ではユニコーンには勝てないのだ。
 俺やミュアがいない今の彼では、ユニコーンに勝つ実力はない。


 しかしそれを認めるということは、自分の弱さを認めてしまうということ。だからアドナは意地でも自分の弱さを認めようとしないのだ。

(そうだ。こいつらはクズなんだ。雑魚を気遣う理由なんてない。見捨てて最後に俺が勝つ。これで行こう。すまなかったな、)

 そしてアドナは決意。
 自らの勝利のため、他の冒険者を見捨てることを──。

 深呼吸して自らの体に魔力をありったけため込む。

 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 途方もない大きな大爆発。ユニコーンたちも予想外の事態だったため、攻撃をまともに受けてしまう。

 そう、アドナが解き放った攻撃。それは自身の魔力をすべて爆発エネルギーに変え、大爆発を起こす術式。


 強力な威力を持つ一方、リスクも高く。自分も大ダメージを受ける、周囲にある味方も巻き込んでしまうという欠点もあった。

 なのでこの術式は正攻法では絶対に勝てない相手や、どうしてもここで倒さなければけない相手にしか使用しない。

 アドナにとって、そのタイミングが今だということだ。
 ユニコーン達は爆発に巻き込まれ、次から次へと吹き飛ばされる。

 ユニコーンだけではなく、村の冒険者たちも──。


 そして爆発後──。
 粉塵が立ち込める中、アドナは石英があった方へと足を運ぶ。

「フフフ……、俺様をコケにした報いだ。これで、貴様たちは戦えまい」


 アドナも、術式の代償として大ダメージを受け、ほとんど魔力を持っていない。
 体力も限界に来ていて足元がフラフラ。

 それでも、目的の物がそこにあるということがアドナを石英の方へと足を向かわせる。

 そして、石英がある大きな元へとたどり着くと、そこにある光景に驚愕した。

「何故だ、なぜここにあるはずだった石英がない──」

 アドナは表情を固まらせ、囁く。その言葉通り、戦う前までは木陰に大量に置かれていた石英。それが、まるで神隠しかなにかにあったようになくなってしまっているのだ。
 目の前にある現実に言葉を失い、身体を震わせる。

 すると、他の冒険者たちも、動けるようになってきたのか、この場にやってきた。

「ああっ、ここにあったはずの石英がなくなってるべ」

「多分だが、ユニコーンが持っていったんだと思うべ」

 冒険者の一人がそうささやく。その言葉にアドナの顔が真っ青になる。
 ジュゴルさんは、ユニコーンに一定の知識がるらしく、何かを思い出す。

「だな。あいつらは身を滅ぼしてまで戦うことはまれだ。こういう大きな攻撃があると、大事なものを持って逃げ出すだ」


 そう、ユニコーンにとってこの戦いは命を懸けてまで戦うようなものではない。

 なので、一部の個体が障壁を張って、撤退を開始したのだ。
 そして脱出する寸前、そのユニコーン達は石英を持ち去ってしまった。おかげでアドナたちは石英を手に入れられなくなることが確定した。


「くぅぅぅぅ……この俺様が、このクズどものせいでクズどものせいで。どうしてくれる、どうしてくれる!!」

 アドナは拳を震わせながら冒険者たちに言い放つ。
 冒険者達は全部自分たちが悪いかのような言葉に怒りを爆発させる。怒鳴り散らすような物言いで言葉を返し始めた。

「なんだべさ。全部俺たちのせいだってのかよ!!」

「そうだ。お前達のせいだ」

「何が元Sランクだこの詐欺師野郎。クソザコじゃねぇか、俺達をダマしやがって!!」

「そうだそうだ。態度だけでかくてろくに戦えなでねぇか。馬鹿野郎!!」

「ああ? それはお前たちがクソザコだからだろうが」


 冒険者達の言葉に怒り狂うアドナ。
 目的の物が手に入らなかったという事実。そして勝てると思い込んでいたユニコーンに大苦戦し、もてあそばれていたということに怒りが止まらない。

 そして彼らは取っ組み合いのけんかにまで発展してしまった。


「上等だべ。ぶっ飛ばしてやるかんな。このニセAランク野郎」

 互いに罵詈雑言を飛ばしあい、殴り合う。
 感情をむき出しに──。
 しばらく彼らは本能そのままに怒りをぶつけあい、大きく言い争いになる。

 その後、アドナは彼らから背を向けて、元来た道へと歩きだし、叫ぶ。

「ふざけるな!! 貴様たちの面など、二度と見たくはない。俺は帰らせてもらう。貴様たちのことなど知ったことか!!」

「それはこっちのセリフだ!! もう顔も見とうないわ」


 ジュゴルも、負けずに怒鳴り返すが、アドナは振り返らない。
 アドナはそのまま村へと帰っていった。ボロボロになった村人たちを置き去りにして。

 そしてその判断が、アドナの運命を大きく決めてしまう。彼がそのことに気付くのは、この少し後なのであった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

処理中です...