~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

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ブラウナ編

彼女の正体

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「これで、邪魔者はいなくなったわ」

 その姿を見たノダル。顔から血の気が少しずつ引いているのがわかる。

「バ、バカな──。この俺様が予測を間違えただとォォ? これはさすがに手加減しすぎたようだな」

 そしてノダルは再びレディナに向かって攻撃を放つ。数にして十個ほど。今の二倍ほどの光弾だ。




 思わぬ失敗をしたとばかりに苦笑いをするノダル。しかし額には汗が浮かび、表情もどこかこわばっていて動揺しているのがわかる。


「──ハハハ。ちょっとばっかし油断しちまった。が勝つのはこの俺だ。次こそ、仕留めてやる」

「──できるものなら、やってみなさい」




 それだけも光弾。それもよけても追ってくる攻撃。それでもレディナの表情に焦りはない。
 無心になったまま、さっきまでと同じように攻撃をかわし、撃ち落とす。

「同じよ。あんたの攻撃は、私には届かない」

 ノダルは、その姿に愕然とする。明らかに焦りが出ているのがわかる。

 ノダルの追跡攻撃は、恐らくだがレディナの後を追うだけの物だろう。
 しかし、今のレディナにそのような攻撃は通じない。

 そこに、レディナの意志は存在しない。心を研ぎ澄まし、目の前の力に対し、その瞬間その瞬間に最適な道筋を彼女の体自身がたどっているのだから。

 その時のレディナは攻撃をすべて撃ち落とすための剣の一部となっていた。
 それに対応するには、ノダル側もただレディナを追うだけではなく、光弾自体に意志を持たせなければならないが、そんなことができるのはこの世界では聞いた事がない。

 ノダルの表情がだんだん青ざめていく。

「な、何故だ何故だ何故だ。ありえない! こ、こんなことは……。クソッ、クソッ。いったになんでだ。なんで攻撃が当たらねぇんだよぉォォォォォォ!!」

 そしてムキになったのかノダルは今までにないくらいの数のを連射する。
 ほとんど破れかぶれといた感じだ。

 その攻撃は全てレディナへと向かっていく。
 明らかに心を乱した攻撃。それなら大丈夫だ。俺も冒険者として何度も激戦を繰り広げてきたからわかる。心を乱した攻撃というのは単調で読みやすい。

 レディナなら難なく突破できるだろう。

 事実レディナは特に焦る様子もなく平然とノダルの光弾を叩き落としていく。

「クソっ、もう球が出せない──」

 そして玉切れ。恐怖に任せて魔力のペース配分を考えずに無駄打ちしてきたのだから当然といえば当然だ。

「くぅ──。ありえない。今度こそ、お前をぶっ飛ばしてやるよ!」

「こっちこそ、私と、レシアの想い、全部あなたにぶつけてやるわ!」

 両者とも、自身の剣を握り一気に接近していく。この一撃で、勝負を決めるつもりなのだろう。

 まずはノダルが魔力を込めてレディナに向かって剣を振り上げる。
 レディナに攻撃が通らなかった焦りからか、剣太刀が明らかに乱れているのがわかる。


 そんな攻撃では、レディナに通るはずもなく──。

「甘いわ!」

 レディナの振り下ろした一撃によって、ノダルの剣が弾き飛ばされる。

 無防備になったノダル。ようやくできたチャンス、レディナは一気に距離を縮める。
 そしてレディナの本気の力が、ノダルに直撃。

「さあ、私の本気の力、受けて見なさい!」

 レディナの全力の一撃。その魔力は、今まで見たことがないくらいの威力だった。ノダルには、絶対勝ちたかったのがわかる。

 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!

 当然その攻撃はノダルに直撃。彼の肉体が、大きく吹き飛ぶ。


「ぐあああああああああああああああああ!」


 ノダルは攻撃をもろに受け、その体が大きく吹き飛ぶ。そして数メートル程転がった後、そのまま倒れこんだまま動かない。
 彼から魔力は感じない、これで勝負ありだ。


 立っているのはミュランただ一人。
 彼女のことはよくわからないが、身のこなしが良く、攻撃の回避こそ上手だったものの、そこまで戦闘が強いわけではない。

 彼女一人なら、俺達でどうにかなりそうだ。
 勝てる。

 するとフリーゼが前に一歩出て、ミュランさんに話しかけた。

「ミュランさん。まだ戦うつもりですか? もう、あなた一人なのですが──」

「フフフ、どうしましょうかしら。別にボロボロになってまで戦う理由があるわけではないですし……」

 そう言いながら、微笑を浮かべフリーゼに視線を向ける。
 するとフリーゼは体をピクリとさせた。どうやら、ミュランさんから何かを感じたらしい。

 そしてやや険しい顔つきになり、彼女に視線を向けた。


「エンレィさん。そろそろ正体を現した方がいいんじゃないですか?」

「正体、何かあったかしら」

 エンレィ? それが彼女の本名なのか?
 その質問に平然と答えるミュラン。しかしフリーゼは彼女をにらんだまま問い詰め続ける。

「ずいぶんと鈍いのですわね。私は理解しているのですよ。あなたが熾天使(してんし)だということを──」


 エンレィは認めるような様子もなくやれやれといったポーズをとっている。

「何よいきなり──。証拠もなしにそんな濡れ衣を着せて。私に何か恨みでもあるのかしら?」



「ごまかそうとしても無駄です。私はわかるんです。あなたからは、人間ではないにおいがします。ミュラン──ではなく熾天使エンレィ」
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