~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

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ブラウナ編

唯一王 レシアと摸擬戦

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「ど、どうして、そこまで僕にこだわるの? やっぱり僕が精霊で、価値があるから?」

「なんていうか、シンパシーを感じたんだよね。昔の俺見たいっていうかさ」

「俺も、そうだったんだ。今のスキルが開花するまでは、外れスキルで使えない冒険者って言われて、レシアみたいにひどい扱いを受けていた。それだけじゃない、後ろのみんなも、孤独を過ごしてきたり、仲間に利用されたりして傷を持っている。それでも、それを乗り越えて一緒になって戦っている。幸せかどうかはわからないけれど、いままでよりはずっと良い状態だ。だから、レシアも一緒にいれば、何か変わるんじゃないかなって


 その言葉にレシアは涙を流しているのをやめ、涙をぬぐっていた掛布団から俺たちに視線を向ける。

 その瞬間、フリーゼが優しく手を差し伸べた。


「レシア 後悔はさせません。私が保証します」

 そしてレシアはゆっくりとフリーゼの差し出した手を握る。

「信じていいの?」

「大丈夫よ。彼は利用するだけ利用して、使えなくなったらポイ捨て。そんな人じゃないから」

 レディナも優しい表情になり、スッとレシアに手を差し伸べる。

「だから、ダメもとでもいいから私達と一緒に行動してみない? そうすれば、何か見つかるかもしれないわ」

「私からも勧めます。人間不信になって、孤独でいるよりもずっといいと思います」

「そうフィッシュ。レシアと一緒に行動したいフィッシュ」

 三人の勧めにレシアはしばし考えこんだ。そして──。

「じゃあ、信じているよ。私を、もう失望させないで、お願い!」

 レシアはようやく首を縦に振ってくれた。
 弱気で、どこか迷いを感じる声。おそらく完全には信じ切っていないのだろう。それでも、人間不信を乗り越えて俺を信じているといってくれたことはとても大きい。

 そして、そんな彼女への返答は、すでに決まっていた。

「当然だ。レシアを、そんな目にあわせたりはしない その手を差し出した勇気、絶対無駄にはさせないから」

 俺は優しい口調でそう言ってレシアに手を差し伸べる。レシアは、最初は体を震わせてただ俺を見ていたが──。

「わ、わかった。フライ、信じてるよ──」

 レシアはゆっくりと俺に向かって手を差し伸べた。
 俺はその手をぎゅっとつかみ、握る。今の俺の決意を伝えるかのように──。



「とりあえず、今の僕の現状を見てほしんだ。だから、一回摸擬戦とかやってほしい……」


 確かに、俺はレシアのことについてよく知らない。もちろん彼女の魔法のことも──。
 それなら口頭で話すより、実際に見てみた方が早い。


 レシアがどんな戦い方をするのか、そしてどんな問題点を抱えているのか。

「わかった、じゃあ行ってみよう」


 俺達は病院を抜け出し、街を歩く。人通りが多い通りを抜けて、郊外の街へと足を進む。
 そして広い公園のところのような場所が視界に入る。人がほとんどいない物静かな場所だ。

「ここなんかどう、レシア」

 レシアは周囲に視線を置く。
 そして右にあるそこそこの大きさの池を見て──。

「そうだね、ここなら大丈夫そう。じゃあ、お手合わせ願い──」


「わかった。よろしくね」

 そして俺とレシアは公園の中心に向かい合う。フリーゼたちは遠目から俺たちを見守る。

「フライさん。あまり本気を出さないでくださいね」

「そうよ、フリーゼの言う通りよ。レシアは精神的に弱っているんだから手加減してね」

「わかってるよ、これはレシアの力を見るための物だって」

 レシアの戦い。ちょっと楽しみだ、どんな力があるのだろうか。とりあえず、行ってみよう。


「じゃあ、いつでも来なよレシア」

「──わかった。じゃあ、行かせてもらうよ」

 レシアのどこか遠慮したような物言い。そして深呼吸をすると彼女からあふれんばかりの魔力がみなぎってきているのがわかる。

 そしてレシアは白く光る銀のナックルを召喚。意外と接近戦が得意なのかな?



 レシアはナックルを左手に装備しながら俺に向かって突っ込んでくる。
 俺も、意識を集中し剣を召喚。向かってきたレシアの攻撃を真正面から対応。

 レシアの攻撃を受ける。
 かなり強いパワーだ。しかし圧倒的なパワーだけならフリーゼと戦った時に経験済みだ。 俺はレシアの攻撃を受け流し、対応。

 攻撃はからめ手があるわけでもなく単調。精霊特有の強力な魔力で攻めて来るものの、決して対応できないわけではない。

「フライ、レシアの攻撃についていけていますね」

「ええフリーゼ。レシアは単純なパワーだけならあなたより下。特別な技術はないことはないけど、この場では使ってこないと思うわ」

「じゃあ、どんな力があるフィッシュか?」

「それは、もうじきわかると思うわ。そして、それがレシアが悩んでいる原因でもあるのよ」


 さて、レシアの力量は大体わかった。じゃあ、そろそろ反撃に出ようか。
 そう思った矢先、レシアが思いっきり踏み込んでナックルを打ち込んでくる。ちょうどいい、これを利用しよう。

 ──と考え、打ち込んできたナックルに対して剣で対応。双方の攻撃がぶつかり合う。

 そしてこれが俺の狙いだったのだ。
 俺はナックルと剣がぶつかり合った瞬間くるりと剣を回転させる。

 奇襲によって生じた不測の事態。普通ならすぐに反応して引くなり、反撃するなりしなければいけない。──が、レシアは予想もしなかったようで、一瞬だけ固まってしまった。

 多分、彼女は真剣勝負というものをあまりしてこなかったのだろう。だから思わぬ事態に瞬時に対応するどころか、あっけに取られてしまったのだ。

 そのチャンス、逃しはしない。俺は一気にレシアに距離を詰める。

 そして彼女の前で剣を一振りして魔力を伴った光線をお見舞いする。

 ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
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