~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

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ブラウナ編

唯一王 レシアの気持ちを理解する

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 ノダルはそう告げて少女に背を向ける。それから軽く手を振って女性と一緒にドア──、つまり俺たちがいる方へと歩いてくる。

「ハリーセル、あなたわかりやすいわね」

 ハリーセルは顔を膨らませぶー垂れていた。
 怒りが頂点に達しているのがわかる。

「ちょっと、どういうことだフィ──」

 あわてて俺は彼女の口をふさぐ。

「う~~、う~~」

 ハリーセルが感情を抑えられず何か言っている。
 その瞬間、扉が開き、二人が部屋から出て来る。

 女性はちらりと俺たちの方向を見る。同時にノダルとレディナの目が合う。ノダルはふうんといった余裕たっぷりの笑みを見せ、レディナはジト目で彼をにらみつけた。

 そして言葉を交わすこともなく、彼らはこの場を去っていく。

 ハリーセルは、最後まで何か言いたげだった。
 恐らく、レシアへの不満なのだろう。

 俺だって今のやり取りで彼女の心が傷ついたことくらい理解できる。
 部外者とはいえ、一言言ってやりたい。


 二人の姿が見えなくなると俺は、ようやくハリーセルを解放した。

「フライ、いきなり何するフィッシュ。一言言ってやりたいフィッシュ」

「その正義感は素晴らしいものがあります。しかし無謀が過ぎます。言い返したところで無碍に扱われるのがオチです」

「それだけじゃないわ。あの子がもっと惨めになるだけよ」


 確かにそうかもしれない。今は、彼女に寄り添ていよう。

 フリーゼがコップに水を注ぎレシアにそっと手渡す。

「よろしかったら、飲んで下さい」

「フリーゼさんありがとう」

 レシアはゆっくりと水を口に入れる。
 ほっと溜息をついた。どうやら少しは落ち着いたようだ。


 そして誰も話さない、物静かな気まずい時間が続く。

 レシアは今仲間から見捨てられた存在。だからどう話していいかわからず悩んでしまう。
 しかし考えていても始まらない。

 ここは俺たちの考えを正直に話そう。俺はレシアの隣に座り込む。そして彼女の弱弱しい瞳をじっと見る。

 それで、俺が考えていることをそのまま話した。俺はそのままレシアをじっと見る。
 決して彼女を裏切ったりしないという優しい目つき。

「レシア、良かったら俺たちと組まないか。約束するよ、俺達はレシアを裏切ったりしない。共に戦い戦友として、一緒に旅をしよう」


 フリーゼたちも、同時に彼女に視線を集中させる。三人とも、その眼にどこか優しさを感じさせている。

 レシアの警戒心が、少しでも解けるようにと、しかし──。

「どうせあなたたちも私の力を利用していい想いをしたいだけなんでしょ! だから出てって!」

 聞く耳も持たないという感じだ。それもそうだ、ついさっきまで自分の力を利用された挙句に、役に立たないとわかった瞬間ポイと首にしたのだから。

 レシアは涙をぽろぽろと流しながらそう言うと、近くにあったベッドの掛布団を頭にかぶる。

 軽く人間不信になっているのだろう。

「ね、ねぇ……」

 俺はそれでも会話を続けようとしたが、その瞬間俺の肩にレディナの手が置かれた。


「ここは、いったん引きましょう」

「──そうだな」

 今、彼女の感情を考えればわかる。これ以上、何を言ってもレシアの心に届くことはないだろう。

 そして一回俺たちはこの部屋を出る。

 あまりの運の悪さに思わずため息が出る。

「なんていうか、最悪のタイミングだったわね」

 レディナの言う通りだ。よりにもよって自分を見出したパーティー仲間に役立たずの烙印を押されて首になったところだもんな。

 これじゃあ俺たちまで自分を利用するだけ利用して役に立たなかったら見捨てるかのような奴らだと思い込まれてしまうだろう。

 こんなことは初めてだ。どうやってレシアの信頼を得ればいいのか。

 腕を組んでそう考えていると、フリーゼがゆっくりと手を上げる。

「すいません、フライさん。私、皆さんのやり取りを見ていて思ったことがあるんです」

「何、どんなこと?」

「私、 そんな人間に信用しろといっても無理だと思います。まずは彼女の安心を保証することが良いと思いました。大丈夫大丈夫と口で言うのではなく、最初から信じてもらえなくてもいい。何かあったらいつでも逃げていい、だから試しに一緒に行動いてみないかと


 だから、レシアの気持ちがわかるんだろうな──。
 絶対にうまくいくかはわからないけれど、他に方法はない、だったらこれで行こう。

「ありがとうフリーゼ、とっても参考になったよ。そのやり方で、もう一度レシアを誘ってみることにするよ」

 するとフリーゼは嬉しそうにフッと微笑を浮かべた。

「そ、そうですか──、私こそ自分の言葉がお役に立ててとても光栄です」

「じゃあ、もう一度、レシアのところへ行こう!」

「はい!」

 そして俺はドアをノックしてから再び中へ。

 ドアを開けてすぐに、レシアと視線が合う。
 さっきよりも、警戒を強めた目つき。

「な、何よ。さっきの言葉、ウソじゃないから、仲間になる気なんてないし、あなた達の事信用していないから」

 くすんだ瞳でのその言葉。やはり一筋縄s\ではいかない。けれど、このまま一人でいても彼女のためにはならない。

 孤独のまま、誰も信用することができず生きていくことになるだろう。
 ここはレシアのために、今は衝突するかもしれないけど、ちゃんと自分たちの気持ちを伝えよう。

「いきなり仲間になってくれだなんていわない。少しの間だけ一緒に行動しよう。いつ逃げても誰も責めないしとがめたりしない。自分が利用されていると思ったら、その時点で逃げ出していい。だから、ひとまず俺たちと行動してみない?」

 その言葉にレシアはほんの少しだが、表情を柔らかくさせる。
 少しだけだが、警戒が解けたように感じた。
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