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フリジオ王国編

唯一王 甘い口づけをする

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 上半身が丸見えで、うつぶせに寝転んでいる。あまりの刺激的な姿にフリーズをしてしまう。

「フライさん、まだ何か足りないのですか?」

「あ、あああ大丈夫だよ。今からやるから!」

 慌ててフリーゼの背中に触れ、マッサージを開始。もしまた勘違いをして、上半身が見えてしまったら今度こそ終わりだ。間違いが始まってしまう。


 背中の真ん中あたりにそっと指を添え、ゆっくりと力を入れ始める。

「ん……、ああ──、そのあたり、気持ちいいです」


 瑞々しく、張りのある真っ白な肌。

 鍛え抜かれた、しかし女の子特有の肌の柔らかさが両立している柔らかさだ。
 そして上半身、恐らくフリーゼの豊かな胸が押しつぶされているのだろう。
 それを考えるだけで理性が解けてしまいそうになる。

「あ……、あん──そのあたり、とっても気持ちいです。しかし、もう少し強くしてくださいますか?」

 俺は軽く体重をかけて彼女の肉をほぐしていく。

「あとは、この辺りがこっています」

 俺はフリーゼの話を聞く。
 さらにこっていると言っていた肩をはじ背中や腰の部分、二の腕の場所などをゆっくりと、丁寧にほぐしていく。

「フライさん、あ……、あっ──、うん。とても気持ちいです。すごい、疲れが取れているのを感じます」

「あ、ありがとう。この調子でいいんだね……」

 丁度良いくらいの力を込めて、フリーゼの体をほぐしていく。そのたびに欲情してしまいそうな本能を無理やり押さえつける。

 彼女のためなんだ、ここで本能のままになってはいけない。
 ある意味、どんな戦いよりもつらい。
 そんな我慢の時間が、ようやく終わりを告げた。

「これでいいかな、フリーゼ」

「ありがとう。ございました。これは、私の気持ちです」

 フリーゼば蕩けた表情でそう言葉を返すと、何と俺に向かって抱きついてきたのだ。

 しかし、フリーゼの腕から力が抜けない。
 自身の想いを伝えるかのごとく、強く、しかし痛みが伴わないよう優しく抱きしめてくる。
 柔らかくて大きな胸が俺の胸板でつぶれ、その感覚に間違いを犯しそうになってしまう。

 永遠ともいえる抱擁が終わり、フリーゼが体を離す。すると、じっと俺の顔を見て微笑を浮かべた。

「今日は、ありがとうございます。おかげで、少しだけ、荷が下りた気がします」

「そうか、それはよかったよ」

「これからも、時々でいいので、甘えたいです。心を寄せたいです」

 つよくて真面目、だけど自分の感情を表現するのが苦手な少女。
 そんな彼女が、酒に酔っていたとはいえ俺に甘えてくれたこと、心を許してくれたことは本当に嬉しかった。

 責任感が強くて、甘えることができなかった彼女が、初めて他人に心を許してくれたのだから。

「俺でよければ、ぜひ頼ってくれ。これからも、よろしくね」

「こちらこそ。こんな不器用な私ですが、よろしくお願いいたします」

 ほんのりと顔を赤らめたフリーゼの表情。その瞳にきらきらと明るい光が浮かぶ。
 次の瞬間、俺の方に完全に体を寄せ、身体の力を抜いてきた。俺に体を預けるような形で──。

 俺に、自分のすべてをゆだねているような様子だ。
 切ないような、何かを欲しているようなそんな表情。

 俺は彼女の寄せてくる身体に押されるように、ベッドに倒れこむ。
 流石にこれ以上は間違いを起こしてしまいそうでまずい。俺だって理性が限界だ。

「フライさん。あなたのこと、私大好きです。あなたがいるから、私はここにいることができるのですから」

 そう言うとフリーゼは俺を物欲しそうな目でじっと見た後、その柔らかくて赤い唇を俺の方にそっと近づけてきた。

 彼女の瞳が、声が切なそうに揺れている。

 その姿、声色に胸がいっぱいになり、そこからはためらいの気持ちはなかった。

「あなたのことを、愛しています」

 そう告げて、俺に優しく口づけをしてきた。
 彼女の唇が俺の唇に触れると、その場所に甘くとろけるような感触が響き渡る。

 ほんの数秒だったはずの時間が、永遠に感じられた。そんな時間を共有した後、フリーゼが再び唇を重ね合わせてきた。

 優しく、しかし強い気持ちで俺の唇に彼女の唇を重ね、さらに深い交わりを交わす。

「フリーゼ……」

 そうささやいて、互いに舌を絡み合わせる。
 互いの唾液が絡み合い、甘い媚薬の様に理性を溶かす。今まで感じたことがない多幸感が俺の全身を包む。

「フライさん。もっとキス、してください。もう、気持ちが抑えられないです──」

 いろんな意味で寄っていたフリーゼが、積極的に迫ってくる。
 何度も舌を、唇を重ね合わせる。

 そして俺たちは唇を重ね合わせ、抱き合ったまま眠りにつき、朝を迎えた。




 朝。
 チュンチュン──。

 小鳥のさえずりと共に、まぶしい朝日が部屋に差し込んでくる。
 誰かが俺に熱い視線を飛ばしてきていることに気付き、瞼を開けた。

「もう、そろそろ起きなさい」

 そこには顔を赤くして、腰に手を当て顔を膨らませているレディナの姿があった。帰ってきて、起きたようだ。ハリーセルもすでにいた。

 起きようとしたが、身体が重い。誰かが俺に乗っている──。
 そう感じて視線を体の方に向けると、絡みつくように俺の体の上に抱き付き、寝息を立てながら寝ているフリーゼの姿があった。


 熟睡しているようで、ちょっとやそっとじゃ起きそうもない。

 ってそれどころじゃない。こんな姿で寝ていたら確実に誤解される。

「全く、私達がいないのをいいことにどんなことをしていたのかしら──」

「まさか、大人の階段を登ってしまったでフィッシュか?」


 ハリーセルは体を震わせながら話しかけてくる。まずい、流石にそこまではしていない。
 釈明しないと。

「き、気にするな。そんな間違いを犯してはない」

「──本当に?」

 ジト目でレディナが俺をにらんでくる。確実に無実の疑いをかけられてしまっていた。

「ほ、本当だよ。やましいことなんて何一つしていない。信じてくれよ」

「そう言われても、抱き合ったままベッドなんかに居たら、疑うフィッシュよ」

「ハリーセルの言う通りよ男女が抱き合ったまま寝ているって言ったら疑うに決まっているじゃない!」

 ──二人の言う通りだ。無実を信じろという方が酷かもしれない。どうすればいいんだ──。

 そんなふうに考えこんでいると──。

「う、うう……」

 何とこの騒ぎで、流石に彼女は起きたみたいだ。

 ちょうど良かった。フリーゼに誤解を解いてもらおう。

「フリーゼ、俺達特にやましいことはしていないよな!」

 俺はフリーゼに話しかけた。まだ寝ぼけているようで、トロンと目が半開きになっている。
 そんなかわいらしい目つきで俺を見つめながら、彼女は微笑し話しかけてきた。

「昨日は、ありがとうございました。フライさんの唇の味、私一生忘れません。また、甘えさせてください」

 まるで天使のような、優しくて暖かい笑み。思わず見入ってしまうくらい美しいけど、そんなことをしている場合じゃない。

 その言葉に二人は顔を赤面させ、猛烈に突っ込んでくる。


「何? あんたたちそんないかがわしいことしてたの! この不潔」

「勝手に大人の階段を登ったフィッシュね。このすけこましフィッシュ」

 一瞬で修羅場になってしまったこの場。フリーゼはまだ寝ぼけているようで、キョトンとしている。

 あわただしくなってしまったこの場。俺は何とか説得をしてこの場を切り抜ける。今度埋め合わせは絶対にするという約束をして──。

 フリーゼとの時間。大変なこともあったけれど、彼女の本心がすこしだけわかった気がした。
 いつもは冷静で、感情を感じないような様子だけど、どこかで甘えたがっている。頼りたがっている。

 俺は、彼女の気持ちにこたえられるようになりたい。
 だから、もっと彼女が安心することができるように、尽くしていこう。
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