35 / 203
フリジオ王国編
レディナが、一人でいる理由
しおりを挟む
「私はフリーゼ、隣がハリーセル。よろしくお願いいたします」
「よろしくフィッシュ」
ハリーセルが元気よく手を上げる。
「んで、俺がフライ。よろしくね」
「私たち二人はおそらくあなたたちと同じように、遺跡の中に封印されてきました。しかし、フライさんのスキルによって解放され、共に行動をしています」
そしてレディナが視線を俺の方に向けた。
「フライ。あなたが二人を解放したのね。二人にいかがわしいこととかしていないでしょうね。自分のスキルを出しに悪いことやいやらしいことを押し付けようとか」
「し、してないよ」
ジト目でにらんでくるレディナに俺はおどおどしながら言葉を返した。
「本当ね。とりあえず信じておくわ」
……何とか信用してくれたか。俺は心の中で胸をなでおろす。
取りあえず、こっちも聞きたいことを聞こう。
まず質問したのは、レディナを解放した人のことだ。
「そういえば、レディナを解放してくれた人はどこにいるフィッシュ」
「確かにそうです。私達がフライさんに解放されたように、レディナも開放のスキルを持つ人間がいるはずですよね。その人物に会わせてくれないかしら?」
レディナはその言葉に少し表情を暗くして言葉を返して来た。
「その人は、今ここにいないわ。少し前までは一緒に行動していたけれど、今は一人で行動しているの」
「一人で行動しても、大丈夫なのですか。フライさんの場合ですと、私達は彼から離れることができないのですが」
「そうよ。私は、距離を取っても問題なかったわ」
恐らく俺の術式と少し違うのだろう。俺のスキルだと、フリーゼたちを近くに居させなければならない。
しかし、レディナの周囲に冒険者はいない。
レディナの場合は一度開放すれば一人にさせても大丈夫なのだろう。
次に質問したのはフリーゼだ。
「レディナさん。気になることがあります。ではどうして自分を解放してくれた人と別れて一人で行動しているのですか? 一人になれるとはいえ、自分を解放してくれた人と別れたのには理由があるはずです」
その言葉にレディナははっとした後、どこかシュンとなり落ち込んでしまう。
やはり何かあったみたいだ。そして声が若干暗くなり、答えを話す。
「なんかもう、『お前は私の所持品だ』みたいな言葉遣いで私を支配しようとしていたの。おまけに仲間達でもちょっとケンカしたりミスをしたりすると暴力を振ったり、首にしていたりしていたわ」
レディナの表情が暗くなる。きっとパーティーにいた時のことを想いだしたのだろう。
「だから、交渉したの。私を解放してくれたあなたには感謝してる。けれど、一緒に戦ってるみんなが傷ついている姿なんで見たくない。これ以上こんな雰囲気を変えないなら、私はこのパーティーから出ていくって」
「それで、お前のとこのリーダーは首を縦に降らなかったってことか──」
「そうよ。だって、周りや、罪のない人たちが傷つくのを見るのは見ていて嫌だもの」
──それは、運が悪かったとしか言いようがない。冒険者は、いいやつばかりではない。中には魔物と手を組んだり、目的のためならばどんな悪事を行ったり、仲間や一般人に危害を加えるようなやつだっている。
レディナは不運にも、そういった冒険者に出くわして、開放されてしまったのだ。
そして彼女は、それに対して「いやだ」といった結果、一人で行動することになってしまったのだ。
でも、これでレディナが悪いやつではないというのはわかった。
それは、安心できる。
それからも俺たちはいろいろなことを話した。
この街のこととか、生活のこと。互いの魔法のことなどだ。
いろいろ話していると、レディナが立ち上がって、街の方向をじっと見た。そしてそのまま話してくる。
「とりあえず、街を歩いたりしない? ここで話すより、気分が晴れそうだし」
「──それもいいかもね」
ちょっと暗い気持ちになったから、気分転換だ。
俺たちは階段を下りて、街へ。
俺たちは街をゆっくりと歩き始める。
この街の中心を流れる小さな川沿いの道。
おしゃれで、綺麗な街並み。見ているだけで、楽しめる街。
少しだけ気分が晴れやかになった。
まじまじと川沿いから街並みを見ながら歩いていると、レディナが道の先に視線を送る。何かに気付いたようだ。
「あれ、泣いているんじゃない」
確かにそうだ。川のそばで目をこすりながら泣いている子供がいる。
茶色いシャツを着た、髪の長い男の子だ。
「とりあえず、行ってみよう」
「そうね」
取りあえず俺たちは速足でその子のところに近寄る。
泣いている男の子にフリーゼが話しかけた。
「君、どうしたのですか?」
「あ、あれ。落としちゃった……」
男の子は川の方向に指をさす。
俺が川の方向に視線を向けると、川の底に銀色の首飾りがあった。ただ川自体が結構推進がありそうで、明らかに俺が飛び込んでも行けるかわからない。
何とか拾って上げたい。どうしたものか──。
そんなふうに俺が考えていると、背後からハリーセルの声が聞こえた。
「大丈夫フィッシュ、私に任せるフィッシュ」
威勢のいい声。
そしてハリーセルが突然手すりを乗り越えて川の中に飛び込んだのだ。
バッシャーーン!
「よろしくフィッシュ」
ハリーセルが元気よく手を上げる。
「んで、俺がフライ。よろしくね」
「私たち二人はおそらくあなたたちと同じように、遺跡の中に封印されてきました。しかし、フライさんのスキルによって解放され、共に行動をしています」
そしてレディナが視線を俺の方に向けた。
「フライ。あなたが二人を解放したのね。二人にいかがわしいこととかしていないでしょうね。自分のスキルを出しに悪いことやいやらしいことを押し付けようとか」
「し、してないよ」
ジト目でにらんでくるレディナに俺はおどおどしながら言葉を返した。
「本当ね。とりあえず信じておくわ」
……何とか信用してくれたか。俺は心の中で胸をなでおろす。
取りあえず、こっちも聞きたいことを聞こう。
まず質問したのは、レディナを解放した人のことだ。
「そういえば、レディナを解放してくれた人はどこにいるフィッシュ」
「確かにそうです。私達がフライさんに解放されたように、レディナも開放のスキルを持つ人間がいるはずですよね。その人物に会わせてくれないかしら?」
レディナはその言葉に少し表情を暗くして言葉を返して来た。
「その人は、今ここにいないわ。少し前までは一緒に行動していたけれど、今は一人で行動しているの」
「一人で行動しても、大丈夫なのですか。フライさんの場合ですと、私達は彼から離れることができないのですが」
「そうよ。私は、距離を取っても問題なかったわ」
恐らく俺の術式と少し違うのだろう。俺のスキルだと、フリーゼたちを近くに居させなければならない。
しかし、レディナの周囲に冒険者はいない。
レディナの場合は一度開放すれば一人にさせても大丈夫なのだろう。
次に質問したのはフリーゼだ。
「レディナさん。気になることがあります。ではどうして自分を解放してくれた人と別れて一人で行動しているのですか? 一人になれるとはいえ、自分を解放してくれた人と別れたのには理由があるはずです」
その言葉にレディナははっとした後、どこかシュンとなり落ち込んでしまう。
やはり何かあったみたいだ。そして声が若干暗くなり、答えを話す。
「なんかもう、『お前は私の所持品だ』みたいな言葉遣いで私を支配しようとしていたの。おまけに仲間達でもちょっとケンカしたりミスをしたりすると暴力を振ったり、首にしていたりしていたわ」
レディナの表情が暗くなる。きっとパーティーにいた時のことを想いだしたのだろう。
「だから、交渉したの。私を解放してくれたあなたには感謝してる。けれど、一緒に戦ってるみんなが傷ついている姿なんで見たくない。これ以上こんな雰囲気を変えないなら、私はこのパーティーから出ていくって」
「それで、お前のとこのリーダーは首を縦に降らなかったってことか──」
「そうよ。だって、周りや、罪のない人たちが傷つくのを見るのは見ていて嫌だもの」
──それは、運が悪かったとしか言いようがない。冒険者は、いいやつばかりではない。中には魔物と手を組んだり、目的のためならばどんな悪事を行ったり、仲間や一般人に危害を加えるようなやつだっている。
レディナは不運にも、そういった冒険者に出くわして、開放されてしまったのだ。
そして彼女は、それに対して「いやだ」といった結果、一人で行動することになってしまったのだ。
でも、これでレディナが悪いやつではないというのはわかった。
それは、安心できる。
それからも俺たちはいろいろなことを話した。
この街のこととか、生活のこと。互いの魔法のことなどだ。
いろいろ話していると、レディナが立ち上がって、街の方向をじっと見た。そしてそのまま話してくる。
「とりあえず、街を歩いたりしない? ここで話すより、気分が晴れそうだし」
「──それもいいかもね」
ちょっと暗い気持ちになったから、気分転換だ。
俺たちは階段を下りて、街へ。
俺たちは街をゆっくりと歩き始める。
この街の中心を流れる小さな川沿いの道。
おしゃれで、綺麗な街並み。見ているだけで、楽しめる街。
少しだけ気分が晴れやかになった。
まじまじと川沿いから街並みを見ながら歩いていると、レディナが道の先に視線を送る。何かに気付いたようだ。
「あれ、泣いているんじゃない」
確かにそうだ。川のそばで目をこすりながら泣いている子供がいる。
茶色いシャツを着た、髪の長い男の子だ。
「とりあえず、行ってみよう」
「そうね」
取りあえず俺たちは速足でその子のところに近寄る。
泣いている男の子にフリーゼが話しかけた。
「君、どうしたのですか?」
「あ、あれ。落としちゃった……」
男の子は川の方向に指をさす。
俺が川の方向に視線を向けると、川の底に銀色の首飾りがあった。ただ川自体が結構推進がありそうで、明らかに俺が飛び込んでも行けるかわからない。
何とか拾って上げたい。どうしたものか──。
そんなふうに俺が考えていると、背後からハリーセルの声が聞こえた。
「大丈夫フィッシュ、私に任せるフィッシュ」
威勢のいい声。
そしてハリーセルが突然手すりを乗り越えて川の中に飛び込んだのだ。
バッシャーーン!
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる