~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

文字の大きさ
上 下
30 / 203

処罰

しおりを挟む
 そしてリルナさんの視線はトランへと移る。


「トラン様。それはあなたも同じとなっております。それなりの処罰は覚悟しておいてください」

 しかし、それに対してトランは激しく言い返す。

「ったく。なんで雑魚を見捨てちゃいけねぇんだよ。別にいいじゃねぇかよ!」


 反省もせず罪悪感など全くない口調。

「ダメです。そういった規則です」

 その言葉にトランは舌打ちをした後、納得が行かないというような表情になる。
 それから早足でキルコとミュアのところに足を運び──。
 なんとトランは剣を取り出しミュアの首に突き付けたのだ。


「ふざけんじゃねぇ。俺はSランクの実力者だ。こんなザコどもとは大違いなんだ。俺最強なんだ」

 傲慢極まりないトランにリルナさんはひるまずに毅然として対応。

「確かにあなたは個人の実力だけならSランクに近いものがあります。しかしあなた、素行が悪いうえに、チームとしての行動ができないと聞いております。
 いくら剣術が優れていても後方から術式を撃ってくれる人がいなければ、強大な敵に勝つことはできません。あなたがいくら強くても一人で何でもできると思ったら大間違いです」

「それはほかの奴が雑魚だからだろ! 弱いから群れなきゃいけないんだろ。だからパーティー制なんてクソみたいなシステムができて、俺みたいな強くて才能のあるやつが弱いやつらのシステムに合わせなきゃいけなくなってんだろ。なんで俺が弱いやつらにい合わせなきゃいけねぇんだよ」

 リルナさんはため息をついた後、冷静ながらもとげのあるような物言いで言葉を返し始める。

「──了解しました。あなたの意見、ある意味ではごもっともかもしれません。しかし、このギルドはその数多くの冒険者たちが安全に、正しくクエストをこなしていくように規則やルールを作り、力になることを目的としています。
 それが気に入らないのであればあなたがこのギルドから去ってもらうことになります。もともと他の冒険者にダンジョンで危害を加えるという重大な規約違反を犯しています。なのでギルドからの追放は十分にあり得ます。自分から出ていくというのであれば、私達は引き留めはしませんが──」

 リルナさんが真顔でトランをにらみつける。いつも優しいリルナさんがこんな表情をするのは初めてみた。
 トランもその様子に思わず一歩引いてしまう。そしてごねるのは無意味だと理解してようで……。

「上等だぁ! 俺の実力を評価しないギルドなんてくそくらえだ! 俺はこのギルドを出ていく。後で吠え顔かいて頭下げてきても戻ってやらねぇからな!」

「──承知いたしました。本日をもってトランさんのギルド登録を除名させていただきます。今まで冒険者としての活動ありがとうございました。トランさんのご武運をお祈り申し上げます」

 トランはリルナさんがしゃべるのをやめないまま後ろを向き、ギルドを出ていく。
 そして最後に壁を思いっきり蹴っ飛ばしてこの場を去っていった。

「ひどいやつだフィッシュ。元仲間にこんなことをするなんてフィッシュ……」

 リルナさんはやり切れないような表情を一瞬した後、強気な表情に戻り、アドナたちの方へ視線を向けた。

「アドナさん。後でお話があります。ミュアさんのダンジョンでの置き去りに関する出来事。先ほども言いましたがこれはギルドの規則違反となります。命がかかっていたということで酌量の余地こそありますもののSランクの称号のはく奪すらありえます。処分が決まり次第あなたたちに内容は通告しますが、それは覚悟してくださいね」

「──わかりました」


 リルナさんのきつい言葉に、アドナが歯ぎしりをしながら首を縦に振る。
 ウェルキとキルコも、苦い表情で同じそぶりをした。相当精神的にこたえているのがわかる。

 置いてきぼりを食らった当の本人ミュアは。ただうつむいていた。

 そして気まずい雰囲気となる。沈黙の時間がしばし過ぎた後、フリーゼがリルナさんにそっと話しかけた。

「──申し訳ありませんリルナさん。こんな雰囲気の中恐縮ですが、頼みたいことがあるのですがよろしいでしょうか」

「なんでしょうか」

「ここにいるハリーセルの冒険者登録をお願いしたいのですが、お願いいたします」

 すると、リルナさんはフッといつもの表情を取り戻し、ハリーセルに顔を向けた。

「承知しました。今準備をいたしますので少々お待ちください」


「わかったフィッシュ」

 そしてリルナさんは事務室の奥へ行って、登録の準備を始めた。こういうことがあってもすぐに気持ちを切り替えて、仕事に戻れることはとてもプロらしいと思う。

 そしてその後、ハリーセルのギルド登録が完了。

「やったーフィッシュ。嬉しいフィッシュ」

「ハリーセルさんはまだEランクの冒険者ですが、早く活躍してランクを上げられるよう祈っておりますので、ぜひとも頑張ってください」

「そうですか。私たち全員、早く高いランクに上がれるよう頑張ります」

「頑張ってくださいフリーゼさん。今回の件の活躍により、二人のランクがDに上がると思われます。これからも結果を残せるようになることをご期待しております」

 その後、俺たちがハリーセルにギルドの仕組みや決まりなどのことを話す。
 どれもハリーセルにとっては初めてのこと。興味津々そうに耳を傾けていた。

「そういえば、フライさんにお伝えしたいことがあるんでした」

「──何があったんですか?」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

俺の畑は魔境じゃありませんので~Fランクスキル「手加減」を使ったら最強二人が押しかけてきた~

うみ
ファンタジー
「俺は畑を耕したいだけなんだ!」  冒険者稼業でお金をためて、いざ憧れの一軒家で畑を耕そうとしたらとんでもないことになった。  あれやこれやあって、最強の二人が俺の家に住み着くことになってしまったんだよ。  見た目こそ愛らしい少女と凛とした女の子なんだけど……人って強けりゃいいってもんじゃないんだ。    雑草を抜くのを手伝うといった魔族の少女は、 「いくよー。開け地獄の門。アルティメット・フレア」  と土地ごと灼熱の大地に変えようとしやがる。  一方で、女騎士も似たようなもんだ。 「オーバードライブマジック。全ての闇よ滅せ。ホーリースラッシュ」  こっちはこっちで何もかもを消滅させ更地に変えようとするし!    使えないと思っていたFランクスキル「手加減」で彼女達の力を相殺できるからいいものの……一歩間違えれば俺の農地(予定)は人外魔境になってしまう。  もう一度言う、俺は最強やら名誉なんかには一切興味がない。    ただ、畑を耕し、収穫したいだけなんだ!

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

処理中です...