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唯一王 ダンジョンの終点へ

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「では、皆さんを今から返します。今までありがとうございました。お疲れ様です。もしギルドから報酬をいただけたら、分け前は必ずお渡しいたしますので。それでは──」

 そしてフリーゼが深呼吸して目をつぶる。両手を胸に置き、瞑想のような状態になる。彼女の体が青白く光り輝いたと同時に、転送する冒険者の体が光始める。その体から強い魔力を感じ始める。

 返す対象の冒険者たちの体が淡い水色に光始める。そして──。

「では皆さん。お疲れ様です。また会いましょう」

 フリーゼの別れの言葉を最後に、彼らの姿がこの場から消えていった。
 そしてそれが終わると、フリーゼはアドナたちに視線を向ける。

「申し訳ありません。これで転送は完了です。では先へ行きましょう」


「ったくよぉ。あんなカスどものためによぉ、俺たちが貴重な時間を浪費するなんておかしいじゃねぇかよ。早く案内しろよ早く」

「そうよ。待ちくたびれちゃったわ」


 キルコとウェルキのでかい態度。もう慣れたとはいえ、流石にイラっと来た。
 どれだけ尊大な奴らなんだこいつらは。

 そして俺たちは先へと進み始めた。今度は水が入ってくるなんてこともない。薄暗く広い道をウェルキとアドナ、トランが先頭になって進む。

 不思議なことに魔物たちと出くわすこともない。時折出て来る宝箱、無警戒にアドナたちが開けても特にトラップなどはない。

 宝石箱の中にはエメラルドや水色の宝石。ミュアとキルコは特にうれしそうでポケットに入れたり、嬉しそうな眼差しをしていた。

「すっげぇ、綺麗な宝石だぜ。これ、高く売れるかもしれないぞ」

「かわいい。ネックレスにしてつけてみたい」

「そうね。私も持っておきたいわ」

 それからそんな宝箱を見つけて、同じようなやり取りをすること数回。
 またもや宝箱を見つけたアドナたち。しかも今回は今までより数が多い。10個くらいはある。

 その数に彼らから歓喜の声が上がり始める。

 しかし、その宝箱は今までの宝箱とは違っているのがわかった。何かを感じる。
 フリーゼもそれは理解しているようで、小走りでアドナたちに向かい、叫ぶ。

「待ってください。あれは罠かもしれません。そこに行くのはやめてください」


 しかし、さっきまで簡単に宝を手に入れているアドナたちに警戒の様子はない。

「おい、自分たちだけ宝を手に入れられないからとひがんでいるのか。みっともないぞ嫉妬というのは」

「そうよ。恥ずかしくないの。雑魚のくせに」

 聞く耳を持たない彼らに、それでも何とか伝えようとフリーゼが説得する。

「そうではないですアドナさん。妙な力を感じるんです」

 するとニヤリと笑みを浮かべたウェルキがこっちに近づいてきた。

「ああん? もうダンジョンの主は倒したんだろ。だったもう大丈夫なはずだろ。フライ、どうせお前は俺たちが宝を手に入れて豊かになるのが憎いんだろう。醜いぜ、他人が豊かになるのを嫉妬するってのはよおぉ」

 やはりというかこいつは聞く耳を持たない。

 そしてミュアが嬉しそうな表情で宝箱に手を触れた瞬間、事件は起きた。

 パァァァァァァン!

 強烈な光がこの場所一帯を包む。俺はその光につい一瞬だけ目をつぶってしまう。
 しかし、本当に罠だったとは、何が出て来るんだ? 

 そして俺が再び目を開けると──。

「アドナたちが、いない……」

 そう、彼らの姿がここからいなくなっていた。
 俺はフリーゼの方に視線を向け、聞いてみる。

 フリーゼは目をきょろきょろして戸惑っているそぶりを見せながら答えた。


「おそらく、あれが最大のトラップなのでしょう。あそこまで、魚のえさの様に宝箱を配置して、宝箱に問題はないと思い込ませていたのでしょう。そしてポルセドラを倒させて浮かれていたところにトラップを用意していたのだと思います」

 なるほどな。用意周到にこの罠に引っかかるように準備されていたという事か──。
 確かに、何度も宝箱を見つけて、あんな巨大な魔物を倒した後だから気が抜けていても無理はない。

 とりあえず、こいつらを助けなきゃいけないんだろうけど……。

「しかし、どうすればいい。俺はこのダンジョンに来たのは初めて、どうすればあいつらに会えるか、アイツらがどこへ行ったのかわからないぞ」

「とりあえず、ダンジョンを最後まで進みましょう。申し訳ありませんが私はここの主ではないので、彼らがどこへ行くか、このダンジョンがどんな構造をしているのかわかりません」

「このダンジョンの支配者である精霊のところへ行った方がいいという事か」

 フリーゼはそっぽを向いてどこか考えながら言葉を発する。様子から察するに、彼女もどうすればいいか考えながらしゃべっているのだろう。

「はい。このダンジョンのマスターなら、彼らがどこへ転送されたかわかっているかもしれません。おそらくですが、それが一番可能性が高いと思われます」

 そうか、それなら早く行った方がいい

「わかった。じゃあ道を進もう」

 そして俺たちはダンジョンをひたすら進んでいく。
 アドナたち、もう仲間じゃないとはいえ、こんな形で終わるのはいい気分じゃない。
 生きているといいが──。



 俺たちが薄暗いダンジョンを進んでいくこと数時間。
 何度も地下の奥へと下っていき、終点の場所へ。

 その場所は、海が広がる砂浜の手前ような場所。それも夜になったように星空が見えていて外の世界にいるようだ。

「これ、どういうことだ。俺たちは外に戻ったのか?」
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