上 下
17 / 203

唯一王 遺跡の中へ

しおりを挟む
 仕方がない。こいつらは、痛い目にあって気付くしかないんだ。

「もういいフリーゼ。こいつらの好きにさせてやれ──」

「そ、それでは……」

 戸惑っているフリーゼ。優しいから戸惑っているのだろう。その気持ちは嬉しい。しかし、その優しさはこいつらには通用しない。痛い目に合わなければ、理解しない奴らなんだ。

「了解しました。しかしここには強力な魔物が潜んでいます。それを肝に銘じて行動してください」

「ったくよぉ。最初からそうすればいいんだ。このクソ精霊が。俺達Sランクがそんなモンスターごときに負けるわけがねぇっつの」

 ニヤリと笑ったウェルキに続き、他の三人も後に続いて前へ。
 それから、トランのパーティーもその後ろについた。

 トラン以外はキョロキョロ視線を泳がせ、戸惑っているように見える。話し合ったりせずに彼が決めたのだろうか。

 なんにせよ、彼らや力のないC,Dランクのパーティーにもしものことがないか注意しながら進む必要がある。

 それなら大丈夫。俺は今までアドナたちといたときは常にトラップを警戒し、魔物の気配を探っていた。

 だから今回もそれらに気を付けて進むだけだ。

「じゃあ遠慮なくいかせてもらうぜ」


 そしてアドナ達は意気揚々と道の先へと進んでいく。

「では、私達も行きましょう」

 フリーゼの言葉に反応し、俺たちも移動を始める。
 身体の力を抜き、泳ぐようにして前へと進む俺達。




 進み始めて五分ほど。



「おおっ、あれ宝箱じゃねぇか」

「いいじゃない。ついているわ私たち」

 ウェルキとキルコの嬉しそうな声。そして前方には道の中央に宝箱。
 確かに嬉しいけど。ど真ん中に宝箱なんてあからさますぎる。罠の可能性だってある。

「待て、迂闊に飛び込むのは危険だ。俺たちも行く。だからちょっと待て」

 忠告。いつものことでわかっていてはいたが、聞く耳などもっていない。

「残念だったな。負け惜しみしたってお前に分け前はねぇよ」

 警戒の素振りなど微塵もない。
 Sランクという称号があるせいで、自分を無敵だと勘違いしてしまっている。

 そしてウェルキが宝箱に手を伸ばしたその時。


「グォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 突然宝箱が強く光始め、俺たちは一瞬瞼を閉じてしまう。
 そしてすぐに目を開ける。すると──。

「た、助けてくれ──」

 ウェルキの悲鳴の声と同時に三メートルほどある巨大なサメが出現していた。
 確か名前はダイダル、何かに擬態しては奇襲して冒険者を襲うことがあるサメ。
 そう、俺の予想通りあの宝箱はトラップだったのだ。

 そしてダイダルはそばにいたキルコとウェルキに襲い掛かっている。
 奇襲に近い形だったせいか、二人は満足に対応が取れず、何度かかみつかれていた。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ、いててててててててて!」

 二人とも、腕から出血している。とりあえず応戦しないと。
 俺とフリーゼはアイコンタクトを取り、応戦に向かう。

 するとミュアが杖を取り出し、回復術式を発動させた。

「聖水の加護よ、私達に、生きる力を──、ヒーリング・ウォーター・ハート」

 俺が加護をしていた時より効き目は薄いものの、噛まれた程度の傷なら彼女でも直せる。
 現に見る見るうちに二人の傷口がふさがってきている。

 そして傷ついた二人をかばうようにアドナがダイダルに立ちふさがり、剣を突き立てている。

 俺とフリーゼは左右に分かれてダイダルに襲い掛かる。ダイダルは俺に反応し襲い掛かるがその背後を二人がついてその肉体を貫いた。

 一人はフリーゼ、もう一人は──。

「貴様、そこそこ実力があるな。やるじゃん」

「そちらこそ。トランさん。強いお力ですね」

 トランだ。二人にくし刺しにされたことによりダイダルは血を噴き出してその場に倒れこんだ。


「何とか、倒しましたね。フライさん」

「そうだなフリーゼ。しかしいきなりこれかよ。これは気を引き締めないとな」


 しょっぱなから宝箱に偽装したトラップ。つまり俺たちを歓迎していないということだ。
 これから先、さらに強い魔物と出会うことが予想されている。

 こいつら単純バカの介護をしながらの探検。でも絶対成功させなきゃ。
 そして気を引き締めた俺は怪我をしたウェルキとキルコの状態を見て、進むことを決める。

 時折魚の形状をした魔物と戦う。そこまで強い相手ではなかったので、俺の加護を使うまでもなかったが。


 その途中で、時たま宝箱を見つけるアドナたち。

「おおっ、宝だ」

「まて、また罠かもしれないだろ」

「わかってるよ。注意するって」
 
 アドナがウェルキの肩を掴んで止める。
 流石に無警戒ということはないが、それでも宝箱に向かっていく。

「すっげー、宝石じゃん。全部俺たちの物だぜ~~」

 薬草や、見たこともない宝石がそこにあった。まあ、俺たちはそれが目的ではないからいいか。

 それから、魔物と戦い、宝箱を開けたりしながら道をしばらく進んでいく。





 そして泳ぎ続けてしばらくたったころ。俺たちは広い部屋へとたどり着いた。

 見たこともない古代文字が文章の様になっていて、明らかに何かありそうな雰囲気を醸し出している。
 そんな雰囲気から俺は警戒モードに。

「ちょっと待て、ここから先は何かがおかしい」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

処理中です...